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俳句の季語に使われる「淡雪」の読み方と言葉の意味

2024.07.10

俳句好きな人の中には「淡雪(あわゆき)」という表現を目にした機会があるものの、正確な意味が分からない人も多いはずです。そこで今回は「淡雪」の意味について解説していきます。また「淡雪」以外の雪に関する春や冬の季語表現についても紹介します。

淡雪とは?

俳句の季語として使われることのある「淡雪」とは具体的にどのようなニュアンスを持つ言葉なのでしょうか。淡雪の意味や俳句とそれ以外の用法について、詳しく掘り下げて解説していきます。

春先に降り、すぐ消える雪

「淡雪」は春先に大きい雪片で降り、地面に落ちたあとすぐに消えてしまう軽い雪を指す言葉です。似たような言葉に「沫雪(あわゆき)」「泡雪(あわゆき)」「春雪(しゅんせつ)」があり、いずれも泡のように溶けやすい雪を意味します。

俳句では春の季語として用いられる

俳句では「淡雪」を春の季語として扱います。降ったあとは積もらずに消えてしまうところから、はかなさの象徴として使用されるケースが少なくありません。

例えばあの有名な正岡子規も、淡雪を使っていくつかの俳句を詠んでいます。

「淡雪のうしろ明るき月夜かな」
「淡雪や覚束(おぼつか)なくも雲はなれ」
「湯婆(ゆたんぽ)踏で淡雪かむや今土用」

また俳句では同じく春の季語として、春に降る雪を意味する「春雪」という言葉が使われる場合もあります。淡雪に比べると、はかなさよりも春という季節が強調された言葉といえるかもしれません。

和菓子の名称にも用いられる

淡雪は俳句の季語としてだけでなく、和菓子の名称としても用いられている言葉です。

「淡雪羹(あわゆきかん)」または単に「淡雪」と呼ばれる和菓子は、寒天でメレンゲを固めて作ります。真っ白な見た目に加えて、口に含むと舌の上でたちまち溶けてなくなってしまう点が淡雪に似ているところから命名されました。

そのまま食べるだけでなく、かんきつ系の味つけをしたり、和菓子の飾り付けや仕上げに利用したりする場合もあります。優しいふわふわとした食感から、老若男女を問わず人気のお菓子です。

他にもある春先に降る雪の表現

(出典) photo-ac.com

春先に降る雪の表現は「淡雪」や「春雪」だけに限りません。春の雪を表す言葉として、ほかのバリエーションとそれぞれの言葉が持つ微妙なニュアンスの違いを解説していきます。言葉の正しい使い方を理解して表現に活かしましょう。

その年の最後に降る雪「雪の果(ゆきのはて)」

「雪の果」は春先に降る雪の中でも「その春の最後に降る雪」「雪の降り納め」という意味で使われる表現です。時期としては旧暦2月15日の涅槃会(ねはんえ)のころが多いと言われており、「涅槃雪(ねはんゆき)」とも言われます。実際には3月末ごろに降るケースもあります。

こちらは嘯山(しょうざん)が詠んだ「雪の果」の俳句です。

「見よとてや生まれ来し身の雪の果」

ほかに似たようなニュアンスの言葉としては「雪の終」「雪の別れ」「別れ雪」「忘れ雪」「名残の雪」などが挙げられるでしょう。いずれも移ろう時間に対しての名残惜しさが含まれている表現です。

まばらに積もった春の雪「斑雪(はだれゆき)」

「斑雪」は春先に降り出す雪というよりは、春になり地面に降り積もった雪が溶け残って、まだらになった状態を表す言葉です。また地面にうっすらと降り積もった春の雪や、積もるほどには降らない少量の雪を指す場合もあります。

長谷川櫂(かい)も「はだれ雪」を使って俳句を詠みました。

「ともしびの庭木にとどくはだれ雪」

似たようなニュアンスで「はだれ野」「はだら雪」「まだら雪」といった表現もあり、いずれも春の季語として扱われます。

雪に関する冬の季語をチェック

(出典) photo-ac.com

ここまで春の季語として扱われる雪に関する表現をいくつか紹介してきました。

しかし、そもそも「雪」という言葉自体は本来は冬の季語であり、雪関連の言葉にも冬の季語として扱う表現が数多く存在します。そこでここからは雪に関する「冬の季語」についてチェックしていきます。

晴れた日にちらつく雪「風花(かざはな)」

「風花」は晴れた日に空から舞い落ちてくる少量の雪を指す言葉で、俳句での扱いは冬の季語です。「かざはな」のほか「かざばな」と呼ぶ場合もあります。また上州地方では「吹越」と呼ばれています。俳句でははかなさや美しさの象徴として使われる表現です。

静岡県や群馬県など風下の山麓地方では、日本海側に雪を降らせる雪雲が流れ込んでくるときに見られる現象です。本格的に降りだすかと思いきや、いつの間にか止んでしまっているというケースも少なくありません。

晴れた日に地面に積もった雪が風に吹かれて宙を舞う状態を、風花と呼ぶ場合もあります。

こちらは長谷川櫂が俳句で使った事例です。

「風花や一生かけて守る人」

雪が降り続いたあとの晴天「雪晴(ゆきばれ)」

同じく冬の季語である「雪晴」は、何日も続けて雪が降り続いたあとに、雲ひとつない青空が広がる状態を表現する言葉です。とくに雪が降った翌日の朝を指す場合が少なくありません。「深雪晴(みゆきばれ)」「雪後の天(せつごのてん)」とも言います。

雪晴の日には太陽光が地面に積もった雪に反射して周囲を照らすため風景が明るくなります。まばゆい光に包まれながら屋根に積もった雪をおろす家族や、雪遊びに興じる子どもたちの姿はまさに冬の風物詩といえるでしょう。

「雪晴」を使った俳句としては五百木瓢亭(いおきひょうてい)の例があります。

「雪晴の日ざしまともに机かな」

構成/編集部

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