ブラックコーヒー好きは遺伝子に組み込まれている
ブラックコーヒーやダークチョコレートを好む傾向は、遺伝子に組み込まれているようだとする研究結果が報告された。
このような傾向を持つ人は、実際にその味自体が好きなわけではなく、カフェインを素早く代謝できる遺伝子を持っており、苦味とカフェインにより得られる刺激を関連付けているのだという。
米ノースウェスタン大学フェインバーグ医学部准教授のMarilyn Cornelis氏と米ジョージワシントン大学のRob van Dam氏らによるこの研究結果は、「Scientific Reports」に12月13日掲載された。
Cornelis氏らによると、コーヒーの摂取に関するゲノムワイド関連解析(GWAS)では、カフェインの代謝経路に関与するが味覚には関与しない遺伝子変異が特定されている。
ただし、コーヒーの味は、ミルクや甘味料を加えることで変わるが、こうしたGWAS研究ではその点が考慮されていないという。
そこで同氏らは今回、味覚に関連する遺伝子変異は、ミルクや甘味料を加えたコーヒーの摂取よりもブラックコーヒーの摂取との関連の方が強く、また、カフェインの代謝経路に関連する遺伝子変異は、ブラックコーヒーかミルクや砂糖入りのコーヒーかなどの飲み方(カフェインの含有量に関わりなく)と特異的には関連しないとの仮説を立てた。
そして、UKバイオバンクと米国の2つのコホート(Nurses’ Health Study;NHS、Health Professionals Follow-up study;HPFS)の遺伝子、食事と食物の好みに関するデータを用いて、この仮説を検証した。
その結果、Cornelis氏らの仮説に反して、カフェインの代謝がより速くなる遺伝子変異を有する人では、コーヒーの味と香りに対する嗜好が強く、ブラックコーヒーを好む傾向があることが明らかになった。
また、ミルクチョコレートよりも、より苦味の強いダークチョコレートを好む人でも、同じ遺伝子変異を有することも判明した。
Cornelis氏は、「ブラックコーヒーを好む人で確認された遺伝子変異は、味ではなくカフェインの代謝の速さに関連しているという点が興味深い。
カフェインが急速に代謝されるため、その刺激作用もすぐに消失してしまい、コーヒーをもっと飲みたくなるのだろう」と説明している。
さらにCornelis氏は、「われわれの解釈によれば、こういう人はカフェインの自然の苦味を、精神刺激作用と同一視している。
苦味を、カフェインやそれによる高揚感に関連付けるようになっているのだ。それゆえ、カフェインのことを考えると苦い味が連想されるため、ブラックコーヒーやダークチョコレートを好むのだろう」と説明している。
ただ、ダークチョコレートには少量のカフェインも含まれているが、苦みをもたらす成分は、主にカフェインに似た精神刺激物質であるテオブロミンである。
コーヒーの健康への効果に関する過去の研究は疫学調査に依存したものであり、因果関係は明らかにされていなかった。
研究グループは、「今回の研究は、コーヒーとその健康面へのベネフィットとの関連を、遺伝子変異の解析を基にすれば、より正確に調べることができることを示すものだ」と述べている。
これまでは、コーヒーを飲む人をひとまとめにして遺伝子マーカーを用いた検討がなされていたが、今回の研究では、ブラックコーヒーを好む人のマーカーとなり得る遺伝子変異が確認された。
同氏らは、この結果は、コーヒーの摂取と健康との関連を遺伝的に検討した研究結果の解釈に影響を及ぼすはずだとの見方を示している。
Cornelis氏は、「ブラックコーヒーを飲むのと、ミルクや砂糖入りのコーヒーを飲むのとでは、健康に与える影響は異なる。今回の知見に基づけば、ブラックコーヒーを好む人は、ほかにもダークチョコレートなどの苦い食品を好む傾向がある。われわれは目下、こうした苦味の強い飲み物や食品の実際の健康効果をより正確に評価する方法を探っているところだ」と話している。(HealthDay News 2021年12月30日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://www.nature.com/articles/s41598-021-03153-7
Press Release
https://news.northwestern.edu/stories/2021/12/why-you-drink-black-coffee-genes/
構成/DIME編集部