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今年10月から拡大する社会保険の適用範囲、パートを中心に対象者が増加

2022.01.14

社会保険(厚生年金保険・健康保険)は、国民年金や国民健康保険に比べると、年金支給額や保障内容が手厚いメリットがあります。

また、保険料の半分が事業者負担となる点も、労働者の方にとっては大きなポイントです。

2022年10月1日から、厚生年金保険法・健康保険法の改正法が施行され、社会保険の適用範囲が拡大されます。

パートなどの短時間労働者の方は、新たに社会保険へ加入できる可能性がありますので、改正後の適用要件をチェックしておきましょう。

今回は、2022年10月より、社会保険の適用要件がどのように変わるのかをまとめました。

1. 厚生年金保険・健康保険の適用要件を確認

2022年10月施行予定の改正法による変更点を理解する前提として、まずは現行の厚生年金保険・健康保険の適用要件を確認しておきましょう。

1-1. 「強制適用事業所」または「任意適用事業所」に勤めていること

厚生年金保険・健康保険の被保険者になれるのは、「強制適用事業所」または「任意適用事業所」に使用される方です。

①強制適用事業所

・すべての法人の事業所
・個人の事業所であって、従業員が常時5人以上いるもの(農林漁業、サービス業などを除く)

②任意適用事業所

強制適用事業所以外の事業所で、従業員の半数以上が適用事業所となることに同意し、事業主が申請して厚生労働大臣の認可を受けたもの

なお、法律上の「雇用」でなくとも、労務の対償として事業主から賃金を受けるという関係にあれば、厚生年金保険・健康保険の適用対象になり得ます。
(例)法人の役員など

1-2. 労働時間等の要件

厚生年金保険・健康保険の被保険者となるには、労働時間等に関する要件も満たす必要があります。

①フルタイムで働く方

厚生年金保険・健康保険の被保険者となります。

②短時間労働者(パートタイマー)の方

以下のいずれかに該当する場合に限り、厚生年金保険・健康保険の被保険者となります。

(i)以下の両方を満たす場合

・1週間の所定労働時間が、フルタイム労働者の4分の3以上
・1か月の所定労働日数が、フルタイム労働者の4分の3以上

(ii)(i)を満たさないものの、以下の5つをすべて満たす場合

・1週間の所定労働時間が20時間以上であること
・雇用期間が1年以上見込まれること
・賃金の月額が8.8万円以上であること
・学生でないこと
・特定適用事業所または任意特定適用事業所に勤めていること(後述)

1-3. 被保険者とされない人

以下のいずれかに該当する方は、厚生年金保険・健康保険の被保険者にはなりません。

・日々雇い入れられる人(1か月を超えて引き続き使用される場合を除く)
・2か月以内の期間を定めて使用される人
・所在地が一定しない事業所に使用される人
・季節的業務(4か月以内)に使用される人
・臨時的事業の事業所(6か月以内)に使用される人
・船員保険の被保険者の人
・国民健康保険組合の事業所に使用される人
・後期高齢者医療制度の被保険者の人(健康保険のみ)
・70歳以上の人(厚生年金保険のみ)

2. 2022年10月からの変更ポイント

2022年10月1日に施行される改正厚生年金保険法・健康保険法では、「特定適用事業所」の範囲が拡大されます。

2-1. 「特定適用事業所」の範囲が拡大

前述のとおり、労働時間が比較的短い短時間労働者の方が、厚生年金保険・健康保険の被保険者となるには、「特定適用事業所」または「任意特定適用事業所」に勤めている必要があります。

①特定適用事業所

被保険者(短時間労働者を除く)の総数が、常時500人を超える事業所

②任意特定適用事業所

特定適用事業所以外の事業所で、労使合意に基づき、短時間労働者を厚生年金保険・健康保険の適用対象とする申し出をしたもの

2022年10月1日より施行される新制度では、「常時500人を超える」という特定適用事業所の要件が、「常時100人を超える」と変更されます。

つまり、被保険者(短時間労働者を除く)の総数が常時101人~500人の事業所に勤める短時間労働者の方は、新たに社会保険が適用される可能性があります。

なお2024年10月からは、特定適用事業所の要件が、さらに「常時50人を超える」と引き下げられることが予定されています。

2-2. 継続雇用期間の短縮

現行の制度では、労働時間が比較的短い短時間労働者の方については、「雇用期間が1年以上見込まれること」が厚生年金保険・健康保険の適用要件となっています。

これに対して、2022年10月1日より施行される新制度では、「雇用期間が2か月超見込まれること」と大幅に要件が短縮されます。

したがって、見込まれる継続雇用期間が2か月超1年未満の短時間労働者の方は、新たに社会保険が適用される可能性があります。

2-3. 新たに社会保険が適用されるのはどんな人?

上記をまとめると、「特定適用事業所」の範囲拡大により、以下の要件をすべて満たす短時間労働者(パートタイマー)の方が、新たに厚生年金保険・健康保険の被保険者となります。

・1週間の所定労働時間が、フルタイム労働者の4分の3未満かつ、1か月の所定労働日数が、フルタイム労働者の4分の3未満
・1週間の所定労働時間が20時間以上であること
・雇用期間が1年以上見込まれること
・賃金の月額が8.8万円以上であること
・学生でないこと

上記に加えて、以下のいずれかを満たすこと

・被保険者(短時間労働者を除く)が常時101人~500人の事業所に勤めていること
・見込まれる継続雇用期間が2か月超1年未満であること

ご自身が社会保険の適用対象になるかどうかを確認したい場合は、勤務先の人事担当者や社会保険労務士などにご相談ください。

取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
https://abeyura.com/
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