iDeCo(イデコ)を始める大きなメリットは資産形成と税制優遇です。老後資金の準備として年金だけでは不充分と感じている人や、税金が高いため控除額を増やしたいと感じている人にとっては、非常に魅力のある制度です。
しかし、その一方で「本当にiDeCoに加入した方がいいのか」と迷っている人も多いのではないでしょうか。
確かに、iDeCoにはメリットだけでなく、いくつかのデメリットも存在します。
上手に活用できれば大きなメリットになるはずのiDeCoですが「やらない方がよかった…」と後悔しないために、ここではiDeCoに向いていない人、失敗しやすい人の例を見ていきましょう。
iDeCoに失敗しやすい人の例
iDeCoに向いていない人や、失敗しやすい人の例としては、おもに以下の5つが挙げられます。
・iDeCoの仕組みを理解していない人
・専業主婦など、課税所得が少ない人
・生活費のやりくりがうまくいっていない人
・60歳までの間に大きな出費が予定される人
・将来、長期にわたる収入の減少が見込まれる人
以下、詳しく解説していきます。
1.iDeCoの仕組みを理解していない人
難しいことまで理解する必要はありませんが、最低限iDeCoの基本的な仕組みについては理解しておきましょう。
iDeCoとは、「確定拠出年金」の愛称で、自分が拠出した掛金を自分で運用し、資産を形成する私的年金制度です。掛け金を60歳になるまで拠出し、60歳以降に老齢給付金として受け取ることができます。ただし、原則60歳まで引き出せず、受け取れる運用益も成績によって変動します。
iDeCoを始めるにあたり確認したいのは、各金融機関の手数料や取り扱っている金融商品の種類です。
事務手数料や、資産管理手数料など、どの金融機関でiDeCoを始めても同じ金額の手数料もあれば、運営管理手数料など金融機関により異なる手数料もあります。
また、金融機関により取り扱っている商品の数にも差がありますし、商品ごとに信託報酬なども異なります。
はじめの金融機関や運用商品選びはじっくり行いたいものですが、この金融機関や運用商品選びをおろそかにしてしまいがちな人は、iDeCoで手数料負けをしやすいので注意しましょう。
2.専業主婦など、課税所得が少ない人
iDeCoを始める大きなメリットのひとつは、なんといっても税制優遇です。
積み立て時の掛け金が全額所得控除となるのですが、そもそも所得税や住民税を払っていない人は、所得控除のメリットを受けられません。
課税所得が少ない人も、税制優遇の効果が少ないので、手数料負けをしやすい傾向があります。
運用益が非課税であるメリットは受けられますが、課税所得が多い人と比べると、同じ掛け金で得られるメリットが少なくなってしまいます。
仮に、毎月の掛け金が5000円、手数料が毎月171円(事務手数料105円/月、資産管理手数料66円/月、運営管理手数料0円/月)とした場合、掛け金に対する手数料の割合は3.42%。節税のメリットがない分、運用益や掛け金の額によっては、マイナスになってしまう可能性もあります。
3.生活費のやりくりがうまくいっていない人
iDeCoは、原則60歳まで引き出しができません。そのため、基本的には一度始めると一定の掛け金を60歳まで拠出し続けることになります。掛け金の変更や停止などもできますが、節税のメリットが少なくなるだけでなく、手数料がかかり続けることで、最終的にマイナスになる可能性もあります。
iDeCoの掛け金の拠出により生活費の赤字が拡大し、金利の高いローンなどを組むことになるようでは本末転倒です。
月5000円、年間6万円の掛け金を仮に20年継続すると120万円が必要になります。掛け金の準備に不安があるのであれば、最低でも6万円×加入年数分の預貯金をあらかじめ確保しておくなどの工夫も考えられます。
4.60歳までの間に大きな出費が予定される人
住宅資金や教育費など、60歳までに大きな出費が予定される人も、60歳まで掛け金の拠出を継続することが難しい可能性があります。
また、まとまった資金を引き出したいと思っても、iDeCoは原則60歳まで引き出すことができません。
いつでも好きな時に資金を確保したいという人には、iDeCoではなく別の投資方法や金融商品などの方が向いています。
一方で、60歳まで簡単に引き出せないことで自動的に貯蓄ができる点に魅力を感じる人には、iDeCoが向いています。
5.将来、長期にわたる収入の減少が見込まれる人
iDeCoは20歳以上60歳未満の人が加入できる制度です。
20代、30代の若い人が始めれば、60歳まで長期間投資を行うことができ、その分税制優遇を長く受けられますし、リターンやリスクも安定させることができます。
しかし、結婚や出産などを機に専業主婦になる予定があるなど、課税所得が大幅にかつ長期的に減少する見込みがある場合は、税制優遇のメリットが少なくなってしまいます。
将来の収入の見込みが不確定な人は、若いうちからiDeCoを始めるよりも、ある程度生活の基盤が安定してから始めた方が安心です。
iDeCoで失敗しないために
上手に活用できればメリットの多いiDeCoですが、上記の通りiDeCoに向いていない人もいます。
iDeCoに加入したことを後悔しないようにするためには、iDeCoのメリット・デメリットを考慮した上で、最大限活用できる方法を考えましょう。
文/家計簿・家計管理アドバイザー あき
著書に「1日1行書くだけでお金が貯まる! 「ズボラ家計簿」練習帖(講談社の実用BOOK)」「スマホでできる あきの新ズボラ家計簿(秀和システム)」他