コロナ太りの救世主(?)として、断食(ファスティング)が流行している。
「流行」といっても、一定日数食べないというハードルはなかなか高い。多くの人はちょっとだけやってみて、それっきりというのが実情のようだ。
でも、もし「気が向いた時にやってOK」「途中でもやめたくなったらやめてOK」という、かなりゆるいルールの断食だったら…?
「それなら、チャレンジしてみたい!」と考えるのでは?
そんな断食法、その名も「気まぐれ断食」メソッドを提唱するのは、パーソナル栄養士の石川威弘さん。公式ブログで断食に関する情報を発信するほか、著書『気まぐれ断食』(SBクリエイティブ)でも、このメソッドを詳解している。
石川さんの解説を読むと、ストイックの代名詞みたいな断食への固定観念がなくなり、明日からでも気軽にできると思えてしまうから不思議。そのやり方を、かいつまんで紹介しよう。
たった16時間の断食でも効果あり
「気まぐれ断食」の期間は、16時間、1日間、2日間、3日間のどれかを選んで実行する。
最初のうちは16時間でスタートし、徐々に日数を増やすステップアッププログラム…というものでもないので、断食経験があるならば3日間を選んでもいい。
そして、「気軽に中断してもいい」というのが、「気まぐれ断食」の特徴。
断食道場にこもって、貫徹を強いられる厳しさは、そこにはない。
ただ、「どうせ途中でやめるだろう」と思いながら3日間にトライするより、まずは16時間をやってみるのが、よさそうに思う。
というわけで、ここでは16時間の超短期断食についてざっくりと。
16時間断食は、1日のうち16時間は水分のみ摂取。残る8時間は、普通に食事をしていいという方法。
上のグラフを見てのとおり、夕食を早くに済ませ、朝食を遅めにすることで、16時間断食は達成できてしまう。
忍耐が要求されるとすれば、夕食から就寝前までと起床から朝食までの間だけ。それでも「自分にはムリ」と思うなら、12時間でもいいそうだ。
まずはお試しで1回だけやってみよう。
「続けられそう」と前向きな気持ちで終えられたら、1~2週間ほど毎日16時間の断食を目標にする(もちろん、合間に何日か中断してもかまわない)。
ただ、このゆるい断食でも、継続すれば効果を体感することができる。その効果とは、次のようなものだ。
・食べ過ぎた胃腸を休め、体のコンディションを整えていく
・摂取カロリーを抑え減量効果をもたらす
・少食にすることで代謝がアップし太りにくい体を作れる
石川さんによれば、16時間断食に向いているタイプは、日頃「食べないと無理」と思っている人。そして、お酒のつきあいがあまりないとか、食事時間を多少コントロールできる人、健康診断の数値や体調に不安がある人だ。
なお、妊娠授乳期の人や、過去に心筋梗塞や脳卒中を起こしたことがある人などは、どの日数であれ断食は控える。「あくまでも健康な人がより健康になるための健康法」なので、それでも実行したい場合、専門家・主治医への相談が必となる。
1か月に1回の1日断食のすすめ
16時間断食よりも減量・デトックス効果を体感しやすいのが1日断食だ。
これは、24時間、水と酵素ドリンクのみで過ごすというもの(頭痛がしたら塩をなめてもいい)。
また、準備食と回復食が伴うので、ハードルはちょっと高くなった感は出てくる。準備食とは、実行の前日に摂る軽めの食事。食材は、いわゆる「まごはやさしいわ」に限定する。「ま」は豆類、「ご」は「ごま」、「は」は発酵食品、「や」は野菜…など、要するに胃にやさしい栄養素をバランスよく摂る。揚げた肉やお菓子などは、せっかくの断食の効果を下げてしまうのでNG。断食明けの日の回復食も同様で、おかゆなど流動食を主体に。
ところで、断食中に摂る水分として「酵素ドリンク」なるものが出てきた。これは「さまざまな野菜や果物、野草を発酵熟成させた飲み物」とのことで、数多くの商品が市販されている。これを飲む目的は、最低限のカロリーと栄養素を補給し、代謝機能を促進するため。これにより脂肪燃焼やデトックスが促される。従来の水オンリーの修行的な断食と比べ、挫折しにくいというメリットもある。さらに石川さんは、次のように説明を加える。
「酵素ドリンクは断食にとって重要なものです。多少金額がかかっても、良質な酵素ドリンクを選ぶことが大切です。断食で得られる成果はこの酵素ドリンクで大きく左右されてしまいます。しっかりと選びましょう」
水については、1日1.5~2リットルが目安。こまめにチビチビと飲むのがよいとのこと。
この1日断食、実行の頻度は1か月に1回でいいそうだ。
人づきあいなどで中断しても問題なし
2~3日間の本格的な断食はもちろん、1日断食でも完遂できない事態はままあるだろう。例えば、同僚や家族とのつきあいで急遽外食することになったとか、今日もらったおみやげの銘菓が気になってしょうがないとか…
それに対して石川さんのアドバイスは、「“気まぐれ”だから中断していい」だ。
「そんな時はあっさりと断食を中断しましょう。断食中は絶対に食事を摂らない、絶対に最後までやりきる、というかたい覚悟を持つことは大切です。しかし、それが原因で大切な人とのコミュニケーションが壊れ、かえってストレスになるくらいなら、その覚悟は次のチャンスに生かしましょう」
ちなみに、空腹でイライラしてしょうがないという、一見しょうもない理由は、中断を考えるべき重要度で「高」ランクになっている。臆せず中断しよう。これで、自己嫌悪になったり、落ち込んだりする必要はさらさらない。
自分で自分をほめて成功につなげる
先に述べたように、「中断上等!」なのが「気まぐれ断食」のコンセプト。
…だが、どうせやるなら最後までやり遂げたい。そのための秘訣も、石川さんは提示する。
その第一歩が「ほめる」。どういうことかというと、自分で自分をほめる、ほめグセをつけることだという。
「断食を成功させるコツの1つ目は、ほかでもないあなた自身ができたことを認め、ほめてあげることです。“できなかったこと”ではなく、“できたこと”に目を向けるのです。たとえ、途中で断食をやめたとしても、“〇時間は耐えられた”と、ものの見方をポジティブに転換しましょう」
次に「初心」。つまり、断食をする目標を最初に定めておくことの重要性が挙げられている。目標は、「10年前のワンピースを着たい」「今年の夏は水着を着て海に行く」といったものでいい。それを紙に書いて、目につくところに貼っておくだけも、だいぶ違ってくる。
ほかにも、「断食することを家族や友人、会社の人に宣言」など、いくつかの方法が出されている。やれそうなことから気張らず取り組むのがよさそうだ。
年末年始の無礼講で、ちょっと太ってしまったという方。来週あたりから「気まぐれ断食」を始めてみてはいかがだろうか。そのプチ努力は、決して裏切らないはずだ。
石川威弘さん プロフィール
パーソナル栄養士。一般社団法人分子整合医学美容食育協会ファスティングマイスター学院調布支部長。専属栄養士として、お客様の体の悩みを聞き、ファスティングと食事指導で悩みの解決をするサポートをしている。お客様一人一人と寄り添いながら、その人にあった食生活を提案。ファスティング(断食)の指導をはじめ、ダイエットのサポートをするオンラインサロンを運営。『気まぐれ断食』は初の著書。
文/鈴木拓也(フリーライター)