バターよりマーガリンの方が健康的になった?
マーガリンは長年、健康に悪いと言われ続けてきた食品だが、2018年以降の米国では、バターよりも健康的な食品になっている可能性を報告する論文が、「Public Health Nutrition」に11月2日掲載された。
筆頭著者である米ミネソタ大学のCecily Weber氏は、「マーガリンは心臓の健康にとってバターよりも優れた選択肢だ。特に、硬いスティック状のタイプではなく、タブやチューブなどの容器に入っている柔らかいタイプが最良の選択肢と言える」と述べている。
この変化には、米食品医薬品局(FDA)が2018年に、食品への水素添加油脂の使用を禁止したことも関係している。
水素添加は液体の油脂を固形化する際に用いられる加工技術だが、この加工に伴いトランス脂肪酸が生成されやすい。
トランス脂肪酸は、LDL(悪玉)-コレステロールを増やし、HDL(善玉)-コレステロールを減らす。トランス脂肪酸の摂取量が、心臓病や脳卒中、2型糖尿病のリスクと関連することも示されている。
Weber氏らは、2020年に米国内で入手可能な83種類のマーガリンおよびバターブレンドマーガリンの脂肪酸含有量を計測し、バターと比較した。
なお、この研究はマーガリンメーカーからの資金提供を受けずに実施された。
解析の結果、マーガリンやバターブレンドマーガリンには、トランス脂肪酸が、ほぼ全く含まれていなかった。
さらに、飽和脂肪酸含有量もバターに比較して少なかった。例えば、大さじ1杯のマーガリンまたはバターブレンドマーガリンに含まれる飽和脂肪酸は、タブやチューブ入りタイプでは、1日の摂取量として推奨される上限に対し平均11%であり、スティックタイプでも18%程度だった。
対照的に、バターの飽和脂肪酸含有量は、大さじ1杯で推奨上限の36%に達した。また、マーガリンやバターブレンドマーガリンはコレステロール含有量も、バターより大幅に少なかった。
Weber氏は、「この変化は公衆衛生対策のサクセスストーリーと言える。今や米国の消費者は、トランス脂肪酸の悪影響を気にして製品ラベルをチェックすることなく、商品を選択することができるようになった。
さらに、現在流通しているマーガリンやバターブレンドマーガリンは、通常のバターよりも飽和脂肪酸が少なく、不飽和脂肪酸が多いことも分かった」と語っている。
なお、固形に近いスティックタイプよりも柔らかいタブ入りやチューブ入りの方が飽和脂肪酸がより少ないため、Weber氏はどちらかというと後者を選択することを勧めている。「スティックタイプのマーガリンが常温でも固形に保たれているのは、飽和脂肪酸の含有量が多いことが関係している。心臓の健康のために、飽和脂肪酸の摂取量を減らすことが推奨される」。
米国内で流通しているマーガリンは、確かに以前よりも健康的なものに変化した。
しかし、それでも食べ過ぎは避けた方が良いとWeber氏は注意を加える。「マーガリンは心臓の健康にとってバターよりも優れた選択肢となったが、それでも飽和脂肪酸を含んでおり、またエネルギー密度が高い、つまりカロリーの多い食品だ」と同氏は述べている。
この点に関しては、米ニューヨーク大学(NYU)ランゴン・ヘルスの栄養士であるSamantha Heller氏も、「マーガリンやバターの代わりに、植物油を使用する方法が、本当に健康的な選択肢だ」と語る。
同氏によると、「マーガリンやバターの製造工程にかかわらず、健康への影響は飽和脂肪酸の含有量によって生じる。われわれが摂取を控えるべきは飽和脂肪酸だ。飽和脂肪酸を多く含む油脂は、バターやラード、ベーコン、鶏脂など、常温で固形であり、それら以外にも、植物性のパーム油やココナッツオイルが該当する」とのことだ。
それらの油脂類は、炎症、心血管疾患、その他の慢性疾患のリスクを高めるという。
Heller氏は代替として、「オリーブ、アボカド、クルミ、ゴマ、ヒマワリなどから作られている、常温で液体の油脂類を使うと良い。それらはパンに塗るだけでなく、ソースなどとしても使える。料理にもっと活用してほしい」と提案。
また、「もし加熱のために固形の油脂が必要な場合は、種子から作られているシードバターを使うと良い」とアドバイスしている。(HealthDay News 2021年12月15日)
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構成/DIME編集部