好きになってほしい相手には、こちらから好意を示すのが効果的と言われる。これを心理学用語で「好意の返報性」というが、言葉を知らなくても経験則として理解している人は多いのではないだろうか。
好意的な態度は良好な人間関係を築く上で欠かせない。しかし、相手の好意を期待することは、一歩間違えば「自分の利益のために他人を利用する」という身勝手さも孕んでいる。また、場合によっては好意の返報性が効かず、むしろ逆効果になることもあるだろう。本記事では「好意の返報性」の詳しい内容と実際の例、注意したいポイントを解説する。
「好意の返報性」とは?
好意の返報性の読み方は「こういのへんぽうせい」。相手から好意を示されることで自分も相手に好ましい感情を抱くことを言う。
好意も敵意もお返ししたくなる「返報性の原理」
好意の返報性は「相手からなにかを受け取った場合に同程度のものでお返しをしたくなる」という人間の性質を表している。心理学では「返報性の原理」と呼ばれ、好意の返報性もそのうちの一つだ。
なお、お返しをしたくなるのは好意に限らない。怒りや妬みなど悪い感情を見せる相手に対して、こちらも同じように悪感情を抱くことを「敵意の返報性」と呼ぶ。また、相手が譲る姿勢を見せた場合に同じように態度を軟化させることを「譲歩の返報性」、相手が自分の本心やプライベートな情報を口にしたときにこちらも同じように内面を打ち明けることを「自己開示の返報性」と呼ぶ。
恋愛における好意の返報性
好意の返報性は人間関係全般に作用するため、恋愛シーンにおいても有効だ。返報性の原理をうまく引き出すために、まずは自分の「好意」を効果的に相手に伝えよう。
男性に好意を伝える方法
男性に好意を伝える方法は「長所を褒める」「してくれたことに対して感謝する」の二つがおすすめ。例えば、相手の得意分野について教えてもらうなどして称賛と感謝を伝えると良いだろう。また、心理学の実験では、男性は軽く目を見開いた女性に対して魅力を感じる傾向があることがわかっている。見開いた目は相手に興味があることを示すサインとなるため、頻繁にアイコンタクトを取るのも一つの方法だ。
女性に好意を伝える方法
女性に好意を伝える方法も「褒める」「感謝する」の二つは効果的と言える。ただし、褒める内容は容姿やスタイルといった誰が見ても分かる部分ではなく、相手を注意深く観察しなければ気づかない細かな箇所に着目すると良いだろう。例えば「デスク周りがいつも整理されている」「小物のセンスが良い」「ネイルがきれい」「仕事が早くて丁寧」など、相手が努力しているポイントがどこかを見極めた上で褒めてみよう。
これはNG!恋愛で好意の返報性が効かないケース
せっかく好意を伝えても、あからさまな下心(好きになってほしい、付き合いたいなど)が出ていると好意の返報性は効果を発揮しにくくなる。小さな好意を一つ一つ積み重ねていくつもりで、焦らず相手との親密性を高めよう。また、好意を伝える手段としてプレゼントをしたり食事をおごったりする場合もあるが、高価すぎる贈り物はかえって相手を困惑させ、好意を好意として受け取られにくくするため注意したい。
ビジネスでも使われる好意の返報性
好意の返報性はビジネスシーンでも効果を発揮する。上司や部下・同僚との対人関係はもちろん、営業職や販売職、カスタマーサポートといった顧客と接する部署にいる人も知っていると役に立つはずだ。
なお、マーケティングの一環として好意の返報性が利用されるケースもある。よく広告や勧誘につられて欲しくない物まで買ってしまうという人は覚えておくと良いかもしれない。
ビジネスで見られる好意の返報性の例
・メールやチャットの返信が早い人は相手の仕事や人格への評価が高まる
・仕事を手伝ってもらうと相手への好感度が上がる
・店員に服選びや試着をサポートしてもらうと服を購入したくなる
・試食サービスで食べ物や飲み物をもらうと商品を購入したくなる
・全額返金保証や返品無料の商品は、企業側がリスクを負う分、購入ハードルが低くなる
これはNG!ビジネスで好意の返報性が効かないケース
恋愛シーンと同様ビジネスシーンにおいても、見返りを求める(または見返りを求めていることが相手に伝わる)と好意の返報性は効果を発揮しない。例えば、アパレルの接客であれば、コーディネートの相談に乗ったから服を購入して当然という雰囲気を感じさせてしまうと、消費者はその店舗から足が遠のくだろう。
そのため、多くの企業はマーケティングやガバナンスに好意の返報性を利用しても顧客満足度や従業員満足度を向上させることに目標を置く。顧客満足度と従業員満足度の高い企業は結果的に売上を伸ばすことができるため、「お客様のことを第一に考える」「社員を大切にする」という企業の方針そのものが好意の返報性のシステムであると言えるだろう。
文/oki