英語由来のビジネス用語には、英語本来の意味とは異なるニュアンスで使われる言葉も多い。「レガシー」もその代表例だ。もとは「遺産」を意味する言葉で、ブランド名や商品名・作品タイトル等によく使われる。ただし、悪い意味になる場合もあるため、使い方を間違えないようにしたい。本記事では「レガシー」の言葉の意味と正しい使い方について解説する。
レガシーの意味とは?
レガシー(legacy)は英語で「遺産」「形見」を意味する名詞。日本語で「レガシー」と表記する場合は「過去から引き継いだもの」「未来へと引き継いでゆくもの」の意味で使われる。また、「時代遅れの」といったマイナスの意味になる場合もある。
五輪開催で注目された「オリンピック・レガシー」
政治家の発言や行政文書に登場する「レガシー」は、オリンピック・レガシーの流れを組んでいることが多い。オリンピック・レガシーとは、五輪を開催した国に長期的に残る良い影響を指す。道路や鉄道、競技施設などのハード面に加えて、経済効果や国際協力関係といったソフト面も含まれる。
オリンピックを招致する国は、五輪開催によって自国が得ると想定されるレガシーを国際オリンピック委員会(IOC)に提出し、レガシー創出に努める必要がある。ここで使われるレガシーは、英語のlegacyと同じく「遺産」の意味になり、どちらかと言えばポジティブな言葉だ。
IT業界でレガシーと言えば「レガシーシステム」
コンピュータや情報システム分野での「レガシー」は、「過去の遺物」「時代遅れ」といったネガティブなニュアンスで使われる。代表例は「レガシーシステム」。古くなったコンピュータのシステムや技術を指し、機械本体は「レガシーデバイス」、オペレーティングシステムは「レガシーOS」と呼ばれることもある。レガシーシステムを新しい技術やシステムに移行することを「レガシーマイグレーション」と呼ぶ。技術革新が著しく、新しいことが重要な価値を持つ業界ならではの語彙と言えるだろう。
なお、レガシーであるにも関わらず、最新技術との互換性のために搭載しなければならないデバイスやインターフェイスと、その実装にかかる手間を指して「レガシーコスト」と言う。レガシーコストには「過去のしがらみから生じる負の遺産」という意味もあり、IT以外の分野でも、退職者に支払う企業年金などを指して言う場合があるので覚えておこう。
レガシーの使い方は?
このように、レガシーは使う場面や人によって二通りの意味に分かれる。会話や文章でレガシーが出てきた場合は、前後に続く言葉からどちらの意味かを判断しよう。ビジネスでは悪い意味で使われるケースも多いため、自分で使う場合は注意が必要だ。
レガシーを使った例文
「オリンピックを機に後世に残るレガシーを創出したい」
「MS-DOSはWindows登場前に使われていたレガシーシステムだ」
「昭和の価値観を引きずるレガシーな人の発言は炎上しやすい」
その他の「レガシー」もチェック
英語のlegacyにもともと悪い意味はなく、さまざまな作品タイトルやブランド名にも使われている。
レガシーに関連するアルバムや映画、商品
レガシーは、特にアルバムや作品のタイトルによく使われる。代表的なものでは、アメリカのロックバンド、シャドウ・ギャラリーの『レガシー~先人たちの証~(原題:Legacy)』、同じくロックバンド、マッドボールの『Legacy』、ポコの『Legacy』、テスタメントの『レガシー(原題:The Legacy)』など。また、1978年に上映されたホラー映画『レガシー』、イギリスの音楽グループ、アート・オブ・ノイズの楽曲「Legacy」なども有名だ。
その他にも、スポーツメーカー・ミズノの野球用バット「ビヨンドマックスレガシー」や、競走馬の冠名「レガシーワールド」などレガシーの名がつくものは多い。これらも「遺産」という本来の意味の通り、連綿と受け継がれていくものを想起させる良い意味の言葉だ。
スバルが開発する乗用車「レガシィ」
車好きであれば、レガシーと聞いてこちらを連想する人も多いだろう。自動車メーカーのスバル(SUBARU)が開発・生産している乗用車で、セダンタイプの「レガシィ(LEGACY)」と、クロスオーバーSUVタイプの「レガシィ アウトバック(LEGACY OUTBACK)」がある。セダン車のレガシィは2020年に日本国内での販売が終了。現在はクロスオーバーSUV(シティ走行に適した高車高タイプの乗用車)であるレガシィ アウトバックが主力となっている。レガシィの名前の由来も英語のlegacyにちなんでおり、「遺産」を意味する。
文/oki