新型コロナの影響で在宅勤務が増えたとはいえ、東京都心部への通勤を念頭に置いて住まい選びを考えている人は多いはず。通勤時間や混雑状況、駅までの距離に加え、子育て世代なら教育・自然などの環境も気になることでしょう。
両立しにくいふたつの条件をクリアするのは難しいものの、通勤手段をバスにすることで大きく注目されているのが、千葉県袖ケ浦市です。
なぜバスなのか?
東京都市圏の通勤といえば鉄道利用が一般的ですから、袖ケ浦市にも袖ケ浦や長浦などのJR駅があります。しかし、都心に行くルートは東京湾に沿ってぐるっと周ることになり、東京駅までだと約67㎞、時間にして60分少々。そして、この距離を座って行ける保証はありません。
一方のバスは、東京湾アクアラインを利用することで、袖ケ浦バスターミナルから東京駅までなら約43㎞、60分前後です。時間的には同じに感じますが、バスは高速道路を走る関係上、乗れば必ず座ることができます。この差はとても大きいです。
距離的に近い羽田空港なら約20分、品川駅約40分、新宿駅や渋谷駅なら約50分など、路線の充実度も二重丸。通勤・通学時間帯は5~10分ほど待てば次の東京方面行きバスが来ます。*いずれも朝の通勤時間帯の上り線時刻表より。
バスターミナルの長所
袖ケ浦バスターミナルはJR駅から少し離れた場所にあるものの、アクアラインと国道16号の結節点に隣接し、市営駐車場が併設されています。周囲に民間の駐車場(3000~5500円/月額)も複数あることから、パークアンドライドを想定した造りになっています。
つまり、利用者は自宅からマイカーでバスターミナルまでやってきて、バスに乗り換えることができるわけで、たとえ駅前に住んでいてもマイカーが必須と言われる地域ではとてもありがたいことです。
ちなみに、住むのならお隣の木更津市でもいいのでは? と思う方もいるでしょう。確かに大規模商業施設という点ではそちらの方が充実しているかもしれませんが、次のような理由で袖ケ浦市を選ぶ人が多いようです。
公共サービスが充実
たとえば、約6万5000人の人口に対し図書館が3館、公民館図書室が2室あり、その蔵書数は県内2位。
基礎学力向上支援教員、特別支援教員、学校司書、スクールカウンセラーなど、教育面での手厚さも、子育て世代には嬉しいのではないでしょうか。
東京湾に面した憩いの場、袖ケ浦井海浜公園。サクラや花菖蒲が楽しめる袖ケ浦公園。陸上競技場や5000席以上の収容力を持つ野球場、庭球場を有する総合運動場など、余暇の楽しみ方も豊富。
JR袖ケ浦駅と長浦駅は2014年に建て替えられ、いずれも南北自由通路とバリアフリー化で、使いやすい駅になっています。
市役所も現在整備事業が進められており、2棟の新築、既存棟の耐震補強及び大規模改修を行い、2024年には竣工の予定です。
他の自治体から見ると羨ましい限りの充実度です。その背景にあるのは、千葉県でも有数の財政力があるからと言えるでしょう。
子どもたちがたくましく育つ
JR袖ケ浦駅前は、区画整理事業が進み、新しいマンションや一戸建てが整然と建ち、マイホームに手が届きやすいため、市外から転入してくるのは子育て世代が多いというデータもあります。
*直近5年の人口は増え続けています。
人気の駅前地区は区画整理事業で2016年に街開きしたところ順調に人口が増え、2021年11月末現在で約3200人。当初の最終計画人口を3700人に迫っています。マンションは完売、一戸建てが少し残っている程度との情報がありました。
おかげで駅前の様子もだいぶ変わりました。下の写真はJR袖ケ浦駅を市役所から撮ったものですが、2019年2月と2021年12月で大きく駅前の様子が変わっています。
子どもの野生を刺激する
便利さだけでなく、内陸部に少し足を延ばせば、内房の豊かな自然が広がっているのも魅力です。とくに市が主催する、子どもたちに大いなる冒険をさせようという試み、「わんぱくクエスト」は大人気。毎年希望者が多く抽選になるほど。
これは毎年7月、5泊6日で房総の山などを歩き、野宿しながら袖ケ浦に戻ってくるもの。経験者がサポートしつつも、子どもたちの自主性を尊重するイベント(事業)です。
*現在、新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止中。再開は未定。
2つの空港が使える
前述のように羽田空港までは、20分強で行くことができるほか、実は成田空港も高速道路で繋がっています。今は東関東自動車道経由となるものの、2024年には圏央道(首都圏中央連絡自動車道)でも直結する予定です。
取材協力:袖ケ浦市
取材・文/西内義雄