名古屋圏をはじめ、東海中部地方に広大なネットワークを持つJR東海に新型通勤型車両「315系」が登場! 営業開始予定は2022年3月5日で、まずは中央本線名古屋~中津川間に投入される予定となっている。JR東海の在来線通勤型車両としては実に23年ぶりの新型車両デビューとなり、これは注目したい新車両だ!
万全のセキュリティをはじめ、最新快適設備が満載の「315系」
JR東海のコーポレートカラーであるオレンジをまとい、車椅子スペースの位置や号車番号などもわかりやすいマークを採用
セキュリティが大幅向上!
さて、そんな315系はどこがスゴイのか。利用者目線で解説していきたい。まず、最初に紹介したいのは「セキュリティ面」の進化だ。
昨今、国内の列車内で少し不安になるような事件が度々起こっており、今まで以上に安心して利用できる車両が求められている。そこで315系では車内5か所に防犯カメラと3か所に非常通話装置が取り付けらた。
防犯カメラの映像は運転室でリアルタイムに確認できるほか、列車の運行を管理する指令室でも遠隔確認できるので、万が一の際に車両内外から速やかに事態へ対応できるように工夫されている。
ドア上部には「カラーユニバーサルデザイン」に対応したフルカラー液晶ディスプレイを搭載。その横には車内を見守る防犯カメラを備える
非常通話装置はドア横に設置。315系には左右それぞれ3つのドアがあるが、左右どちらかにこの非常通話装置が取り付けられている。
東海道新幹線などでは車端部に取り付けられていることが多いこの装置だが、315系ではドア部に分散して取り付けることによって、車内どの場所にいてもすぐに使えるようになっている。
ドア横にある非常通話装置。カバーをずらしてボタンを押すと乗務員室から応答が返ってくる仕組み
この「非常通話装置」は、ボタンを押してもすぐに列車が停まるわけではなく、あくまでも乗務員さんと通話する装置だ。
「緊急時はすぐに列車を停めないの??」と思うかもしれないが、緊急停止が必要なケースでも、その後の避難などを考慮してトンネル内や橋りょう上を避けて停車させる必要があるため、実際に列車が停止するまでは若干時間を有することも少なくない。
非常事態が発生した場合は、まずはこの非常通話装置を使って「なにが発生しているのか」を冷静に乗務員さんに伝えよう。
気になる車内はどうなっているの?
8両編成の315系の車内は明るいロングシートになっている。冷房装置の機能も、従来車の211系に比べて約3割もUP! さらにAIによる学習機能を搭載し、より快適な車内空調を実現している。このシステムは鉄道車両としては日本初のシステムだ!
315系は8両編成すべてがロングシート。開放的な車内でここちよい
車いすやベビーカーを利用している際に便利な「車椅子スペース」も各車両に1か所備えられており、どの号車に乗ってもこうしたスペースが使えるのは、日常的に利用する通勤型車両としてはうれしいポイント。
バリアフリー対応の車椅子対応トイレは編成中に1か所備えられている。
8両全てに設置された車椅子スペース。名称に「車椅子」とついているが、もちろんベビーカーなどでも使用OK
おむつ替えベッドもある車椅子スペース対応トイレは編成中1か所ある
細かいポイントとしては315系は車両床面高さを低くし、さらに乗降ドア部分の床面をホーム側に若干傾斜させることにより、従来車211系に比べてホームと車両の段差を約5センチ減らしている。わずかな差だが、この差が車椅子やベビーカー利用時に大きな違いとなってくるのだ。
窓は手前に引き込むタイプを採用。この構造は車体側面の強度向上にもメリットがある
315系(左)と従来車の211系(右)。211系は315系のデビューによって引退する
いつからどこで乗れるの??
そんな最新鋭の315系は現在、試運転の真っ最中でデビューは2022年3月5日を予定している。
また、この315系が登場することで、従来車の211系を中心に置き換えが進行され、特にJR東海が国鉄から継承していた一部の211系がまず引退することが決まった。
これにより、新幹線を含み、JR東海で活躍する車両は全てJR発足後の車両となり、JRグループでは唯一、国鉄時代から運行してきた車両が完全になくなることとなった。
デビュー時にはビジネスエリアと住宅エリアを結ぶ中央本線名古屋~中津川間を走行し、2023年度中には同区間はすべてがこの315系で統一される。
編成の長さも今では列車ごとに異なるが、全て315系8両編成に統一されるので、車椅子スペースなどを利用したい場合でも迷うことがなくなる。
より安全で快適な車両に進化した315系。3月のデビューが今から待ち遠しい!
取材・文/村上悠太