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【開発秘話】発売開始から65日で900万個売れたローソン「生ガトーショコラ」

2021.12.28

■連載/ヒット商品開発秘話

『プレミアムロールケーキ』『バスチー』と大ヒットスイーツを世に送り出してきたローソンから、新たな大ヒットスイーツが誕生しようとしている。2021年9月に発売された『生ガトーショコラ』のことである。

『生ガトーショコラ』はショコラ生地に北海道産生クリームをブレンドしたクリームと、パリパリのチョコレートソースを載せたもの。ショコラ生地とクリームを一体化したことで、スプーンを使わず食べることができるのが特徴だ。

 発売開始から4日で販売数100万個を突破。これはローソンのスイーツブランド『ウチカフェ』史上『バスチー』に次ぐ2番目のスピードで(『バスチー』は発売から3日)、『プレミアムロールケーキ』よりも早いほどだ(『プレミアムロールケーキ』は発売から5日)。その後も売れ行きは衰えず、発売開始から65日(11月30日)で900万個を超えた。

店頭に並び続けるチョコレートスイーツをつくる

 商品が構想されたのは2020年秋のこと。背景には、ローソンには年中店頭に並び続けたチョコレートを使ったチルドスイーツがごく僅かしかないことがあった。構想時点では、チョコレートを使ったチルドスイーツは店頭に1つも並んでいなかった。

「これまでチョコレートを使ったチルドスイーツがなかなか定着しなかったので、継続して展開し続けることができるものの開発にチャレンジしてみることにしました」

 こう話すのは、商品本部商品コンセプト開発部 シニアマーチャンダイザーの吉田祐子さん。チョコレートを使ったチルドスイーツの企画はこれまでに数多く挙がってきたが、実現しても終売になってしまったり最初からスポット販売の予定だったりと、なかなか定着しなかった。

ローソン
商品本部商品コンセプト開発部
シニアマーチャンダイザー
吉田祐子さん

 リサーチのためSNSにアップされているチョコレートを使ったスイーツの画像などをチェックしていた吉田さんは、あることに気づく。それは、お店で食べるテリーヌショコラやガトーショコラ、チョコレートケーキ、フォンダンショコラといったものにはクリームが添えられていることが多いことと、買ってきたものにもクリームを添えて食べるケースが目立ってきていること。そこで、吉田さんが手がけ2020年12月に発売された『雪溶けショコラテリーヌ』の楽しみ方を調べると、クリームを添えて食べている人が多かったことがわかった。

 これらのことをヒントに、クリームを添えたガトーショコラを発想。2021年に入ってから開発に着手した。吉田さんは次のように話す。

「コンビニのスイーツは、そのまま食べたりどこでも食べたりできることを基本に考える人が多いと思っていますが、思っていた以上にひと手間かけて楽しんでいる人がいます。そういう食べ方をどこでも気ままにできるようにする提案をしてみようと考えました」

独自につくったチョコレートを使用

 ほろほろ、しっとりした食感とチョコレートが味わえる生地にまろやかなクリーム、そしてパリパリとした食感のチョコレートソース。1つに異なる味わい、食感を融合したが、味わいの変化が楽しめる点はこだわったところだった。同時に、チョコレートがしっかり感じられることにもこだわった。

 そのために、チョコレートは独自につくった。カカオ分62%のクーベルチュールチョコレートを開発したが、チョコレートを独自につくった理由を、吉田さんは次のように話す。

「日常的に購入してもらえるようにするために、どういうチョコレートを使うのがいいかをゼロベースで検討した結果、しっくりくるものを独自につくるという結論に至りました」

 チョコレートに求めたのは、チョコレート感があるのはもちろんのこと、香りがあり、最後にキレも感じられるもの。様々なチョコレートを試したが、クリームも使うことからチョコレート感、香り、キレが緩やかに感じられるように仕上げるには、このために独自につくったものを使うのが最善という結論に至る。コストはかかるが、自分がつくりたいガトーショコラに必要なチョコレートはどういうものかを上司と共有することに努めていたことから、独自につくることができた。

 ショコラ生地のほろほろ、しっとり感を生むために、焼き方も湯煎焼きを採用した。「普通に焼いてつくると、焼き方によってはパサパサした食感になってしまうことがあります。逆に滑らかにし過ぎるとクリームとチョコレートが一体化し、どちらの味わいかわからなくなります。ほろほろ、しっとりしたショコラ生地の実現と、チョコレートとクリームの味わいがはっきりわかるようにするため、湯煎焼きを採用しました」と吉田さんは話す。

 原材料の配合や混ぜ加減、ショコラ生地の焼き加減などで出来が変わってくることから、試作は数え切れないほどつくった。吉田さんが検証に関わったものだけでも70〜80品。チョコレートも20回以上、試作検証を行なっている。

 吉田さんは開発をこう振り返る。

「途中から、どこがゴールかわからなくなるほどやり続けてしまいました。生地に窪みがあるガトーショコラは初めてなのですが、食べた感じが1口目と2口目で違っていたらやり直したほどです。それに、手に持って食べたときとスプーンを使って食べたときではチョコレートの感じ方が変わるので、ショコラ生地を楽しんでいただきながらクリームも楽しんでもらうことができるようにバランスを取ることは難しかったです」

お試しクーポンを社員に配布

 発売から2か月ほどで900万個を超えたことに吉田さんは「想像以上」と驚きを隠さない。一時期は品薄だったこともあったが、すでに半年分の売上を超えているという。

 息長く売れるものにするには広く知ってもらうことが大切なことから、販促にも注力した。テレビCMの放映をはじめ、お笑い芸人『ぼる塾』が味をジャッジする動画をYouTubeで公開した。

テレビCMのワンシーン

 TwitterやInstagramなどSNSを使った情報発信も積極的に行なった。例えばTwitterでは、売れ行きの報告のほか、毎月10日に「ローソンありがとう」と題したキャンペーンを実施するなどしている。

ローソン公式Twitterでは毎月10日を「ローソンありがとう」とし、『生ガトーショコラ』に関するツイートを行なっている

 また、「ローソンありがとう」に関連し、発売直後に社員を対象に『生ガトーショコラ』のお試しクーポンを配布。クーポンは複数回使えるもので、「ありがとう」の気持ちを伝えたい人へのプレゼントや行きつけの店への手土産などに使うことができる。

 社員向けのお試しクーポンを配布した理由を、吉田さんは次のように話す。

「商品のことを知ってもらうことに加え、コロナ禍がいつまで続くかわからないこともあって社内が元気になれることとして発案したのが、社員へのお試しクーポン配布でした。商品のお試しはお客様向けに実施したことはありますが、これを社内で実施した形です。感謝の気持ちを伝えるアイテムになってほしいという想いもあったのですが、いろんな使い方がされたようで、会社が元気になるアイテムになった感があります」

取材からわかった『生ガトーショコラ』のヒット要因3

1.新しい提案が受け入れられた

 クリームが別に添えられているのが一般的だが、ショコラ生地にクリームを乗せワンハンドで食べることもできることを提案。この提案が新鮮に映り、受け入れられた。

2.マメな情報発信

 SNSを使って積極的に情報を発信。継続的に商品のことを伝えるようにしたことで認知が進み、購入に結びついた。

3.こだわりが伝わり支持された

 チョコレート感が感じられること、ショコラ生地がほろほろ、しっとりしていることなど、こだわった点が多々あり、試作検証を繰り返し現在のものにたどり着いた。現在の売れ行きから見て、こだわりが支持されといってもいい。

 発売後に実施したアンケート調査では、食べた人の8割が「満足」と回答。「リピートしたい」など様々な声が挙がったが、目立ったのが「そのままでいい」だった。「もう少し生地のしっとり感が欲しい」といった要望点も聞かれたことから「まだ道半ば」と吉田さんは謙遜するが、理想とした味わいは多くの人たちに受け入れられたと言ってもいいだろう。

製品情報
https://www.lawson.co.jp/recommend/original/detail/1440501_1996.html

文/大沢裕司

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