近年、ニュースなどで耳にする機会の増えた「GWP」という言葉。しかし、「GWPとはそもそも何の略なのか」「何を表す言葉なのか」を理解している人は意外と少ないかもしれない。そこで本記事では、GWPの意味を解説する。ぜひ地球で起こっている環境問題に目を向けるきっかけにしてほしい。
GWPの意味とは?
GWPとは「Global Warming Potential」の頭文字をとった略語。まずはこの言葉の意味を詳しく見ていこう。
地球温暖化係数のこと
GWPとは「地球温暖化係数」のこと。地球温暖化係数(GWP)は、人間の活動よって排出されたガスの温室効果の程度を数値化したもので、地球温暖化への施策を考察する上で重要な値だ。この地球温暖化係数(GWP)は二酸化炭素を基準にして求められ、具体的には「二酸化炭素の何倍の温室効果があるのか」を表している。
代表的な温室効果ガスは、メタンや一酸化二窒素などが挙げられる。メタンは稲作や家畜の腸内発酵、廃棄物の埋め立てなどで発生するガスで、GWP値は25。一酸化二窒素は、燃料の燃焼や工場プロセスなどで発生し、GWP値は298だ。また、地球温暖化係数(GWP)が高い傾向にある代表的な冷媒ガスとして、フロン(CFCR-12、CFCR-114など)が挙げられ、CFCR-12は10,900、CFCR-114は10,000という高いGWP値になっている。フロンは冷蔵庫やエアコンの冷媒として使用されていたが、オゾン層を破壊する原因とわかり生産禁止となった。
温室効果ガス排出量の計算方法
地球温暖化対策の促進に関する法律では、温室効果ガスを一定以上排出する事業者に対して、温室効果ガス算定排出量を国に報告することが義務付けられている。令和3年3月には一部改正法案が閣議決定され、これまでの紙媒体による報告から、原則電子システムへ入力、オープンデータ化することが定められた。これまでは情報を閲覧するために申請が必要だったが、今回の改正により、誰もが排出量の情報を確認できるようになる。
温室効果ガス算定排出量は、温室効果ガスの排出量にGWPを乗じ、CO2換算して算出された排出量のこと。以下の計算式によって求められる。
【温室効果ガス排出量の求め方】
1.統計データによる活動量×環境省により公表されている排出係数=温室効果ガス排出量
2.温室効果ガス排出量×地球温暖化係数(GWP)=CO2換算排出量
IPCC 第5次評価報告書とは?
IPCCとは「Intergovernmental Panel on Climate Change」の頭文字をとった言葉で、国連気候変動に関する政府間パネルのことを指す。IPCCの目的は、地球温暖化防止政策に科学的な根拠を示すことだ。
そのIPCCが2013年に作成した報告書が「第5次評価報告書」。IPCCが公表する第5次評価報告書には、今世紀末までに世界平均地上気温が0.3~4.8度上がる見込みがあることや、海面が26cm~82cm上昇する可能性があることを示唆する内容が書かれている。加えて、CO2排出量と世界平均地上気温の変化はほぼ比例関係にあることも解説し、「適応策に力を入れることが重要である」と提言している。
なお、2021年8月には「第6次評価報告書」が発表され、その冒頭の政策決定者向け要約に「人間の活動の影響によって大気、海洋、陸地が温暖化していることは疑う余地がない」と記されていたことに注目が集まった。
GWPのその他の意味
ここまで解説してきたように、環境問題においてGWPは「地球温暖化係数」を意味する。しかし、略語として使われる「GWP」は異業種では他の意味を持っている。最後に2つのGWPの意味を紹介する。
小売業の GWPは購入特典のこと
小売業におけるGWPは「ギフト・ウィズ・パーチャス」の略で、購入特典のことを指す。「〇〇の製品を合計5,000円以上お買い上げの方にプレゼント」のように条件が示されることが多い。製品やサービスを購入した客に販促品やノベルティを贈るというこの方法は、マーケティングの意識を大きく変化させ、今では世界中で用いられている。GWPの典型的な事例としては、化粧品購入時に特典でついてくるポーチや化粧雑貨などが挙げられる。
保険業界のGWPは総収入保険料のこと
保険業界でGWPは「総収入保険料」を意味する。総収入保険料とは、元受保険契約と再保険契約によって一事業年度中に受け取った保険料の総額のこと。「gross written premium」の頭文字をとって「GWP」と呼ばれている。
文/oki