「バイアス」という言葉を、一度は耳にしたことがあるのではないだろうか。ビジネス用語の一つとしても浸透してきているこの言葉は、医療や心理学、統計学などの分野でも用いられており、使うシーンによってニュアンスが変化する。本記事では、バイアスの正しい意味を解説したい。この機会に、「それぞれの分野におけるバイアスとは何か」をチェックしてほしい。
バイアスの意味とは?
「バイアス」という言葉には、どのような意味があるのだろうか。まずは、「バイアス」の正しい意味を見ていこう。
バイアスの意味は「偏り」「斜め」
バイアスは、英語の「bias」を日本語に取り入れた言葉で、「偏り」「斜め」といった意味を持つ。一般的には、人の思考や行動において偏りが生じることやその要因を指すことが多い。
また、裁縫では布目に対して斜めに裁った生地やバイアステープの略称とされている。他にも、バイアスという言葉はさまざまな分野で使われており、使用されるシーンや前後の文脈によって意味合いが異なるため、各分野での正しい意味を理解し、適切に使えるよう覚えておきたい。
シーン別「バイアス」の使い方と例文一覧
ここからは、「バイアス」の使い方をシーン別に紹介する。的確にバイアスを使い分けられるように、具体的な例文も併せてチェックしてほしい。
ビジネスシーンにおける「バイアス」
ビジネスシーンでは、先入観や偏見の意味で用いられ「バイアスがかかる」と表現することが多い。先入観にとらわれた偏った見方や、色眼鏡で物事を見ている状態のことを示す。
【例文】
「部長からのバイアスがかかったため、彼は若くして昇進した」
「社長の娘というバイアスをかけられているせいで、人間関係が上手くいかない」
医療における「バイアス」
医療におけるバイアスは、診断や治療、治験などで起こるさまざまな偏りを意味する。例えば、良い結果を出しそうな患者を意識的に選択したり、仮説に適合する望ましいデータばかりを収集したりすることなどが挙げられる。
【例文】
「医療分野では、バイアスを避けなければならない」
「研究対象者を選択する際に、バイアスがかかったのかもしれない」
統計学における「バイアス」
統計学の分野でも、バイアスを偏りを表す用語として用いられる。調査方法や標本の抽出の仕方が偏っていたり、推測値と実際の値にズレがあったりする場合に使われる。
【例文】
「アンケート対象者の男女比率を合わせないと、バイアスが生じるかもしれない」
「データ解釈をする際は、バイアスが含まれている可能性も考慮しなくてはいけない」
心理学における「バイアス」
これまでの経験や自身の思い込みに基づく先入観によって、非合理的な判断をしてしまう心理現象のことを「認知バイアス」という。社会心理学や認知心理学の世界で取り上げられる認知バイアスには、正常性バイアスや後知恵バイアス、自己奉仕バイアスなど、さまざまな種類が存在する。以下はその一例。
・アンコンシャス・バイアス(無意識バイアス)
アイコンシャス・バイアス(無意識バイアス)とは、ものの見方や捉え方に対する歪みや偏りのこと。アンコンシャス(無意識的な)なもので、誰もが持っているとされており「無意識の思い込み」や「無意識の偏見」など言い換えられる。
・楽観バイアス
さまざまな物事を好都合に解釈してしまうことを楽観バイアスと呼ぶ。例えば「コロナが流行っているが、私は若いから大丈夫」「長年煙草を吸っていても長生きしている人もいるから、きっと私も健康でいられる」など、自分は大丈夫と楽観的に捉えることをいう。
・確証バイアス
確証バイアスとは、自分の考えや仮説を裏付けるような、都合のいい情報ばかりを無意識的に集めてしまうこと。確証バイアスの特徴は、反証する情報には注目しようとしない点だ。
【例文】
「血液型で性格を決めつけようとするのは、アイコンシャス・バイアスによる現象だろう」
「今までの経験や固定概念から生まれた認知バイアスを取り除くことは難しい」
「”若者は重症化しないから大丈夫”という楽観バイアスが働くと、日頃の感染対策が疎かになる」
裁縫の分野における「バイアス」
先述した通り、裁縫の分野では生地を布目に対して斜めに裁つことや、斜めに裁った生地のことを「バイアス」と呼ぶ。加えて、布目に対し斜め45度に裁断された細長い帯状の布のことを「バイアステープ」と言う。
【例文】
「バイアステープで縁取りをしたら、手作り感のある作品に仕上がった」
「バイアステープの使い方は、裁縫の本で勉強した」
文/oki