「未来のファッション」と聞いて、どんなスタイルを思い浮かべるだろうか? ZOZOグループの先端テクノロジー研究開発をおこなう株式会社ZOZO NEXTは、「衣料型ウェアラブル端末」とも言われる「スマートテキスタイル」に注目する。研究員の中丸啓さんに詳しく話を聞いた。
暖かさや通気性に優れ、着心地がよく動きやすいなど、服の基本的な機能に対しては、すでにたくさんの研究が積み重ねられている。今後も進化は続くが、現時点でも快適な服が安く手に入れられるようになっている。
ZOZO NEXTが構想する次世代のファッションは、「服(生地)のメディア化」だ。周囲の環境情報や任意のプログラムを服(生地)が取り込み、視覚や聴覚に訴える情報を出力する。同社は東京大学大学院情報学環筧康明研究室と、西陣織の老舗である細尾とともに、「スマートテキスタイル」の共同研究に取り組む。
「スマートテキスタイル」は、これまでになかった生地の機能や、ファッションの楽しさを現実にする技術だ。
例えば、リーバイスはGoogleが開発した導電性の繊維を袖に組み込んだジャケットを開発(リーバイス トラッカージャケット ウィズ ジャカード バイ グーグル)。袖に触れることで、音楽の再生や電話応答など、スマートフォンの機能をコントロールできる。
また、心拍の情報を読み取ることができるスマートウェアなども登場しており、ヘルスケア分野での活用も期待されている。
いっぽうZOZO NEXTは、西陣織の技術でチューブ状の糸や、 機能性素材・デバイスを織り込んだ織物を制作。環境情報によってデザインを変化させる新しい表現に挑戦している。
「Drifting Colors」はクロマトグラフィ(物質を分離・精製する技法)の技術で糸が染料を吸い上げ、温度などの周囲の環境によって、動的に色が変化し続けるという作品。
有機ELを織り込み、コンピューター制御で発光する生地「Woven Glow」もおもしろい。
いずれも服に実装されれば、ファッションの世界は大きく広がるだろう。
中丸さんは「気温や体温で服の模様が自然と変わる」「プログラムをダウンロードして毎日好きなデザインの服を着る」「ゲームと連動してスコアやアイテムが服に反映される、さまざまな可能性がある」など、スマートテキスタイルが実現するさまざまなファッションの未来を描く。
また、西陣織の細尾と共同開発しているように、既存の技術や文化が生かされるのもポイントだ。蓄積された文化を無視して奇抜なものをつくっても受け入れてもらえず、テクノロジー自体が広がらない可能性がある。
「過去の文脈を引き継ぐことが、ファッションの進化には重要」と中丸さん。スマートテキスタイルが実現する新しいファッションを楽しみに待ちたい。
●ZOZO NEXT
●共同研究開発成果展示 “Ambient Weaving ―― 環境と織物”
取材・文/ソルバ!
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