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持続可能な未来を創る新しい経済モデル「ドーナツ型経済」とは?

2021.12.23

近年、「SDGs」や「サステナビリティ」について議論される機会が増えている。「ドーナツ型経済」は、気候変動や大気汚染を引き起こす要因の一つとも言われる大量生産・大量消費型の社会からの脱却を目指し、持続可能な未来を創ることを目標とした、今までにない新しい経済モデルだ。

本記事ではSDGsへの社会的な関心の高まりとともに注目される「ドーナツ型経済」についてわかりやすく解説する。

ドーナツ型経済とは?

「ドーナツ型経済」は、2011年に提唱された新しい経済モデル。まずは、ドーナツ型経済とは何か、従来の経済学上の理論との違いについて注目しながら理解を深めていこう。

イギリスの経済学者、ケイト・ラワースが提唱

「ドーナツ型経済」はイギリス、オックスフォード大学の経済学者であるケイト・ラワースが2011年に提唱した新しい経済モデル。2018年に出版された彼女の著書『ドーナツ経済学が地球を救う』は、世界的ベストセラーとなった。2020年4月には、オランダ・アムステルダム市がドーナツ型経済を都市政策として採用することを宣言し、さらに注目を集めている。

GDP成長に固執しない、新しい経済モデル

ドーナツ型経済は、これまで当然とされてきたGDP成長に固執する考え方を脱し、地球上の限りある資源の範囲内ですべての人が心豊かに暮らせる社会を築いていくことを提案する、新しい経済モデルだ。

経済成長に依存した社会構造は、大気汚染や気候変動などの環境破壊、エネルギー問題、貧富の差の拡大といった大きな課題を生み出す要因となった。ドーナツ型経済の理論では、このような課題と立ち向かって持続可能な社会作りを実現するためには、GDPの指標以外の新しい目標設定と人々の発想の転換が必要であるとしている。

ドーナツ経済学の具体的な内容

ここからは、ドーナツ経済学の具体的な内容についてさらに掘り下げていこう。そもそもドーナツ型経済の「ドーナツ」とは何なのか、またドーナツ型経済を語る上で欠かせない7つの提言内容について理解を深めよう。

なぜ「ドーナツ」?

ラワースは、「ドーナツの図」と呼ばれる図表を用いながら、自身が提案する新しい経済活動のモデルを示した。以下の解説については、ぜひ大きな円の中に小さな円を重ねた、ドーナツ型の図形を思い浮かべながら読み進めてほしい。

ドーナツの外縁が表すのは、地球環境のバランスを崩さずに人間の活動ができる「環境的な上限」ライン。一方で、ドーナツの内側(中心に開いた穴の部分)の輪が表すのは、すべての人の生活の基本となる、食糧や住居、教育や所得などの「社会的な土台」だ。そして、このドーナツの外縁の「環境的な上限ライン」と内側の輪の「社会的な土台」の2つのラインの間(ドーナツでいえば可食部分)を「人類にとって安全で公正な範囲」であるとし、この範囲内での経済活動が環境負荷の軽減と人類の繁栄の両立に繋がるとしている。

つまりドーナツ型経済が目指すのは、経済成長だけを追求するのではなく、環境が許す範囲内ですべての人々のニーズを満たす、持続可能なバランス型の経済だ。

ドーナツ経済学における7つの提言とは

「ドーナツの図」が示す新しい経済モデルを実現するため、ラワースは以下の7つの提言を発表している。ここでは要約した内容を以下の通り紹介したい。

1.目標を変える:GDP成長への固執から脱却し、限りある資源の範囲内で人間的な生活を営む、持続可能性重視の目標へ
2.全体を見る:視野の狭い従来の市場の見方を脱し、自然や社会の中に組み込まれた新しい経済の全体像を描く
3.人間性を育む:従来の合理的経済人の形成から社会的適合人へ
4.システムに精通する:経済を体系的なものとして理解するのではなく、絶えず変化し続ける複雑なシステムとして捉える
5.分配を設計する:経済的な不平等は経済成長によって解消されるのではなく、分配の設計によってもたらされる。不平等が生じるのは設計の失敗によるもの
6.環境再生を創造する:現代の環境汚染は破壊的な産業設計の結果。21世紀は環境再生的な設計を生み出す思考が求められる
7.成長にこだわらない:経済的成長への依存から成長にこだわらない社会へ

持続可能な未来を創る、新しい経済モデル

最後に、世界共通の目標であるSDGsとドーナツ型経済の関連性、そしてドーナツ型経済と同様に持続可能性に着目した新しい経済モデルの一つ、「循環型経済」についても紹介したい。

SDGsとドーナツ型経済

SDGs(持続可能な開発目標)は、2015年の国連総会で採択された、この地球に暮らすすべての人々にとってより良い、持続可能な未来を築いていくための世界共通の目標だ。環境問題、貧困や不平等、平和など、グローバルな課題解決のために17の目標を設定した上で、2030年までの目標達成を目指し、日本を含む加盟国各国が議論や努力を重ねている。

ドーナツ型経済は、このSDGsの目標とも親和性が高い。先述したアムステルダム市の例のように、今後も持続可能な社会作りを実現するための手段として導入される例が増えていくことも見込まれる。

ドーナツ型経済とともに注目される循環型経済

「循環型経済(サーキュラー・エコノミー)」もまた、従来型経済モデルの持続可能性を疑問視する見方から生まれた、新しい経済モデルの一つ。循環型経済が推奨するのは、大量生産・大量消費・大量廃棄の直線型の経済(リニアエコノミー)からの脱却、そしてリサイクルやリユースといった資源の循環を促す経済活動への転換だ。

循環型経済もドーナツ型経済と同様、SDGsへの社会的関心の高まりとともに注目度が高まっている。特に、SDGsの17の目標のうちの目標12「つくる責任 つかう責任」との関連性が深く、この目標達成のために循環型経済への移行を目指す自治体・団体も増加している。

文/oki

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