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「外部不経済」とは何か?覚えておきたい言葉の意味と正しい使い方

2024.04.04

経済学用語の一つである、「外部不経済」。普段、ニュース番組や新聞をチェックしている方でも、あまり目にする機会は少ないかもしれない。しかし「外部不経済」は、我々が現在直面する新型コロナウイルスの感染拡大、そして地球温暖化や大気汚染といった環境問題とも関連性が高く、我々の生活とは切っても切り離せないテーマの一つだ。

そこで本記事では「外部不経済」とは何かについて、具体例を挙げながら詳しく解説していく。経済はもちろん、社会問題や環境保護に関心のある方もぜひチェックしてほしい。

外部不経済とは?

外部不経済の意味

「外部不経済」はイギリスを代表する経済学者、アルフレッド・マーシャルが用い始めた経済学用語。まずは「外部不経済」とはどのような意味かを詳しく見ていこう。

経済学用語の「外部性」から理解しよう

「外部不経済」について解説する前に、経済学用語として使われる「外部性」の意味を理解しておこう。経済学における「外部性」とは、個人や団体の経済活動が、まったく関係のない第三者に対して何らかの影響を及ぼすことを指す。経済学における「外部」は、取引が行われる市場の外側を意味している。

「外部不経済」は第三者に悪影響を及ぼす経済活動のこと

経済学上の外部性には「外部経済」と「外部不経済」の2種類が存在すると考えられている。「外部経済」とは、ある経済活動が市場を通さないところで第三者に良い影響を与えることを意味しており、「正の外部性」とも呼ばれる。

反対に「外部不経済」は、その経済活動が第三者に対して悪影響を及ぼす場合を指し、「負の経済性」ともいう。

企業における「外部不経済」とは

企業活動における「外部不経済」とは、その企業の活動が周囲の環境や社会に負の影響を及ぼすことを指す。

例えば、工場からの排出物が大気汚染や水質汚染を引き起こし、地域住民の健康や生活環境を害するケースがこれに該当する。これらの影響は企業の財務諸表には直接現れないため、経済活動のコストが社会全体に転嫁されてしまう。

企業は環境保護や社会的責任を重視し、持続可能な経営戦略を取り入れることで、外部不経済の問題に対処することが必要だ。

外部経済、外部不経済の具体例

外部経済と外部不経済の具体例

次に、外部経済と外部不経済について、それぞれの具体例を紹介する。これから紹介する事例を見れば、より外部性を身近に感じられるようになるはずだ。

外部経済の例

外部経済を深く理解するための好例としては、都市開発が挙げられる。企業が地域の都市開発に取り組むなかで、交通インフラの整備、ショッピングモールの開業、景観の改善などが行われれば、近隣住民は生活利便性の向上や、地価の上昇、雇用の増加などの恩恵を受けられる場合がある。これはまさに、経済活動が第三者に良い影響を及ぼす外部経済に当てはまる。

外部不経済の例

次に、本記事の主題として取り上げる外部不経済の例について見ていこう。経済活動を通じて第三者に与える悪影響として問題視されているものはいくつも存在するが、ここでは代表例を2つ紹介する。

・公害、環境問題

工場から発生する煙や廃棄物が近隣住民の暮らしへ悪影響を及ぼす公害は、外部不経済の代表例として挙げられる。高度経済成長期には水俣病、新潟水俣病、四日市ぜんそく、イタイイタイ病の四大公害病をはじめとする人々への健康被害が深刻な問題となった。

また、生産・消費活動によって発生する二酸化炭素などの大気汚染物質の排出量増加による大気汚染や地球温暖化は、日本だけではなく世界規模で取り組む必要のある重要な課題となっている。

・疫病の感染拡大

疫病の感染が拡大している状態も、外部不経済といえる。例えば、今も収束の兆しが見えない新型コロナウイルスの流行下では、大規模なイベント開催や外食、旅行などの対面型サービスがさらに感染を広げてしまう要因となり得る。感染が拡大すれば、重症患者や死者の増加、医療体制のひっ迫など、社会的な不利益をもたらすことにも繋がりかねない。

環境問題や疫病の感染拡大以外にも、外部不経済には大小さまざまな問題がある。人が何らかの経済行動を起こす際、外部経済と外部不経済の両方が発生する可能性がある点は覚えておきたい。

外部不経済を解決に導く「内部化」

内部化

外部不経済の状況に陥った場合、企業側には当然その状況を改善していくことが求められる。では、外部不経済を解決するには、どのような方法が考えられるのだろうか。最後に、「内部化」と呼ばれる解決策について紹介したい。

外部不経済の内部化とは

外部不経済の「内部化」とは、経済活動によって市場の外で発生した不利益や損失、それに伴い発生したコストを企業側に認識させることを意味する。外部不経済は企業側が意図しないところで発生するため、問題を可視化し、外部不経済の内部化をスムーズに進めるためには、第三者の介入が必要不可欠とされている。

内部化にはさまざまなアプローチがある

では、具体的に外部不経済を内部化していくためには、どのような方法が有効なのだろうか。

経済学では内部化に関していくつかの考え方が存在する。例えば、もっともシンプルな解決策としては、企業側と不利益を被った個人、または団体との間で交渉を行う方法が挙げられ、実際に公害被害に苦しむ人々と企業側で話し合いが行われたケースもある。

しかし、すべての外部不経済が当事者間の話し合いで解決できるものではなく、政府や自治体などが問題に介入する必要が生じる場合も多い。

内部化のための政府・自治体のアプローチとしては、社会に悪影響を及ぼすものに対して、一律で規制をして取り締まる方法や、問題を是正するために発生するコストを課税という形で企業に負担させる、いわゆる「ピグー税」という考え方が存在する。

最近ニュースで話題となることも多い、地球温暖化対策強化のための「炭素税」や「環境税」の導入も、ピグー税の考え方に基づいた外部不経済の内部化の一例だ。

文/oki

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