日本の宝くじでは億単位の当せん金が発生する種類があります。億単位のお金が当たるかもしれないというのは夢のある話ですが、一方で心配になるのが「宝くじの当せん金には税金がかかるのかどうか」です。贈与や相続など課税パターンも見ていきましょう。
「大前提」宝くじにかかる税金
『宝くじ』を購入する場合、当せん金には税金がかかるのでしょうか。まずは税金がかかるタイミングを知っておきましょう。高額当せんの際に気になる税金についても解説します。
当せん金は非課税所得となる
原則として日本で販売されている宝くじの当せん金は所得税は課せられない『非課税所得』に当たります。『当せん金付証票法』の第13条により「当せん金付証票の当せん金品については、所得税を課さない」と明記されています。
非課税所得のため、所得税の課税標準額を基準に算出される住民税も非課税となります。よって、1年間の所得に対する所得税を正しく計算するため確定申告も不要となります。
所得税や住民税が非課税のため、当せん金は全て自分のものになります。投資やギャンブルはもうけに対して原則税金がかかるため、所得税が非課税となるのが宝くじの利点といえるでしょう。
購入時点で納税している
宝くじの税金は、購入費用の中に含まれています。そのため、購入時点で既に支払い済みといえます。 発売元が自治体であることから、宝くじの売り上げはさまざまなことに使われています。
発売を許可されているのは前述の『当せん金付証票法』に定める47都道府県と20政令指定都市だけです。宝くじの税金は主に『当せん金』に使われますが、発売元である『自治体の収益』にもなっているのが特徴です。
納められたお金は公共事業など、一般的な税金として使われます。残りの売上金は、社会貢献広報や宝くじを販売するための経費です。宝くじの売り上げは、全て効率よく使われています。
当せん金に税金がかかるパターン
宝くじの当せん金は原則非課税ですが、一部のケースで税金がかかります。当せん者が亡くなってしまった場合や、当せん金をプレゼントした場合にかかる税金を見ていきましょう。
当せん者が亡くなった場合
宝くじは、購入者に当せん金を受け取る権利があります。受け取った当せん金は基本的に1万円以上であれば本人指定の口座に振り込まれるため、当せん者の資産です。
高額当せんで当せん金を使い切る前に本人が亡くなった場合、宝くじの当せん金も他の資産と同じように扱われます。
税金のルール上、相続税がかかるラインを超えていれば相続税の対象です。 当せん者が高齢であるケースや、ほとんど当せん金を使わないうちに亡くなってしまうと税金がかかる可能性があるでしょう。
また、ネット経由で購入した場合では、会員サイトの退会や未支払い分の受け取りをするために相続の手続きが必要となるケースがあります。
当せん金をプレゼントした場合
自分のお金を誰かにあげる場合、『贈与税』の対象となります。身内でも、他人でも同様です。 税金が発生するのは、贈与を受け取った側になります。
渡すお金が高額になるほど税率が上がり、最大で55%を税金として納めることになるため注意しましょう。数千万円を分配する場合、相当額のお金が税金として取られてしまいます。
せっかく当せん金を分配しようとしても、贈与を受けた側はもらった分から多くの税金を支払わなければなりません。少しずつで問題ないときは、少額をプレゼントすることから考えてみましょう。
贈与税を回避する方法はある?
実は、贈与税をかけずに、宝くじの当せん金をプレゼントする方法があります。簡単なのは金額の調整です。また、国が定める非課税制度を活用するのもおすすめです。
基礎控除の110万円枠で渡す
贈与税は、暦年課税のため、1月1日から12月31日までの間にもらった財産の合計が110万円以下なら贈与税はかかりません。『毎月9万円ずつもらう』『年に1回まとめて100万円をもらう』など、回数や1回に渡す金額にかかわらず、判断基準は年間トータルです。
毎年110万円以下で当せん金をプレゼントすれば、贈与税はかかりません。注意したいのは、贈与税は宝くじの当せん金以外にもかかってくる点です。相手が他にも贈与や援助を受けている場合は、全ての贈与を足した金額で考えましょう。
また、本人が亡くなった後に相続税が発生するほどの資産がある場合は、贈与であることを記録に残しておきましょう。
使い道が分からない高額な出金履歴があると、税務調査で指摘を受ける可能性があります。 銀行振込を活用し、適切な出入金記録を保管して調査に対して正しく説明できるようにしておきましょう。
教育資金贈与の非課税枠を活用
『教育資金贈与』は、2013~2023年3月31まで利用できる非課税制度です。
親や祖父母など、直系の親族が教育資金の贈与をする場合、年間1500万円までが非課税になります。 学校以外の施設に対する教育費用は、年間500万円までです。
贈与を受ける側が30歳未満かつ、前年度の所得が1000万円以下である場合に利用できます。非課税枠の利用には、金融機関での手続きが必要になります。
なお、一般的な範囲の生活費やお小遣いには税金がかかりません。毎月数万円程度の学費を負担してもらっているなど少額の援助であれば、申告が不要なケースもあります。
参考:祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし|国税庁
共同購入者として一緒に受け取る
宝くじは、『共同購入』が認められています。宝くじを購入するときに、複数人でお金を出し合って買うケースもあるでしょう。
何人かで宝くじを購入するときは、ネット購入を活用するのがおすすめです。『ジャンボ宝くじ』と『全国通常宝くじ』は、グループ購入に対応しています。
ネット購入では事前に取り決めた指定口座に当せん金が分配されるため、受け取りの際に特別な手続きは必要ありません。
紙の宝くじは共同購入者が全員で当せん金を受け取りに行くなど、共同購入であることを認めてもらうためのルールがあります。『当せん証明書』 の発行方法など、詳細なルールに関しては発売元に問い合わせておきましょう。
宝くじ当せん金に関するQ&A
宝くじの当せん金を受け取るには、どこに行けば良いのでしょうか?当せん金別の受け取り方法を解説します。また、高額当せんの際にもらう『当せん証明書』を保管する意味も知っておきましょう。
当せん金の受け取り方法は?
宝くじの当せん金は、当せん金額により受け取り方が異なります。1当せん金または1口当たり1万円以下の当せん金は、宝くじ売り場の窓口または『みずほ銀行本支店』で受け取りができます。
1万~50万円未満の場合は、みずほ銀行本支店で受け取りましょう。5万円以下なら5万円マークのある宝くじ売り場の窓口でも受け取り可能です。
50万円を超えると、受取場所がみずほ銀行本支店に限定されます。50万~100万円未満の場合は本人確認書類、100万円を超える場合は本人確認書類に加えて印鑑が必要です。
本人確認書類は顔写真付きのものを選択するのがスムーズですが、公共料金支払いの控えなど複数の補助書類でも対応できます。
なお、100万円を超える当せん金は、受け取りにも時間がかかります。手続きから1週間程度の余裕を見ておきましょう。
当せん証明書は必要?
宝くじの当せん金は非課税です。しかし、宝くじ本体は当せん金を受け取るときに提出してしまいます。何も書類がないと、税務調査の際に「宝くじの当せん金による収入だ」と証明するのは難しいでしょう。
証明ができない場合、課税対象となる可能性もあります。高額な収入が宝くじの当せん金であることを証明するために、『当せん証明書』を保存しておくと安心です。
以上を踏まえ、銀行で当せん金の受け取りの際にもらう書類は、きちんと残しておきましょう。
構成/編集部