コロナ禍を受け、リモートワークを中心とした暮らしがしやすい新たなコンセプトの街づくりが進んでいる。また、アクセスがよく、エンタメやショッピングが身近に楽しめるエリアも、ワークライフバランスかとれる住環境として引き続き注目されている。
今回は、埼玉県の南栗橋駅前と、東京都の中野駅前の、2つの開発中エリアが、今後働く人や子育て世帯にとってどんなエリアになるのか、探った。
開発が進む期待の駅前エリア2つ
1.【埼玉県】「南栗橋」駅前エリア
埼玉県にある、東武線の始発駅「南栗橋」駅前エリアの開発が始まった。
それは、久喜市、東武鉄道、トヨタホーム、イオンリテール、早稲田大学 小野田研究室の産官学連携による街づくりプロジェクト「BRIDGE LIFE Platform(ブリッジライフプラットフォーム)構想」だ。未来、安心、健康、東京、人、自然の6つのファクターをつなぐ「BRIDGE(ブリッジ)」をコンセプトとした「暮らしと豊かさを向上させる、新しいライフスタイルを実現するためのプラットフォーム」を目指す。
コロナ禍でワークスタイルが変化した都内で働くファミリー層に対し、家族との時間を増やせる街、子どもと暮らしやすい街として、新たなライフスタイルを創出する。
●南栗橋駅前エリアの特徴
南栗橋駅は、埼玉県久喜市に位置する東武鉄道日光線の駅で、都心方面へ東武鉄道を利用して約1時間でアクセスできる。
一方で栃木方面へもアクセスが良く、紅葉の日光散策や温泉巡り等も近場で楽しめる。つまり、都心と自然の両エリアの魅力を享受できる場所とされる。
その南栗橋駅前エリアが新しく変わる。
●プロジェクトの概要
南栗橋駅前エリアの街全体を、住宅、商業、生活利便施設、公園など一体的に開発するのがこのプロジェクトだ。
【「BRIDGE LIFE Platform 構想」の主なポイント】
南栗橋の立地を活かし、人と人、東京と自然など様々なファクターをつなぐ「BRIDGE(ブリッジ)」をコンセプトに、多くの施設・サービスがそろい、社会・自然・都市とのつながりを通じて健康で幸せに生きる基盤づくりを行い、持続可能な都市「サステナブルシティ」 を目指す。
総面積は約16.7ヘクタールで、次の4つの街区から構成される予定だ。
(1)戸建街区・クラブハウス
多世代が安心で充実した暮らしを送れるよう、先進設備を採用した 全172戸のスマートタウンの開発にトヨタホーム・東武鉄道が取り組む。
街のコミュニティ拠点として、クラブハウス、コワーキング、ワークショップ・趣味スペース、キャンプ道具等の貸し出しバーベキュースペース・焚火プレイスを設置。仕事やパーティ、イベントなど様々な用途に利用できる。
(2)商業街区
地域の人々の利便性を高めるとともに、コミュニティ形成の場の創出を目指し、 スーパーマーケットなどの商業施設の開設を予定している。商業街区はイオンリテールが取り組む。
(3)遊歩道&公園
気軽に集まり交流できる場所の創出や、 ピクニックもできる 大きな公園のリニューアルなどにより、郊外だからこそ実現できる、リラックスして過ごせる 空間を作り出す。遊歩道&公園は久喜市が取り組む。
(4)生活利便街区
様々なライフステージの人の活動を支援するために、保育所やシニア施設など、安心・安全に暮らせる機能を検討。生活利便街区は東武鉄道が取り組む。
・「5G」「自動宅配」
より快適な暮らしの実現を目指し「使用検討中の自動宅配ロボット」や最新のデジタル技術を盛り込んだ街づくりを計画している。さらに、どこでも仕事ができるよう街全体に5G回線がつながる予定だ。
早稲田大学 小野田研究室が取り組み、自動宅配の実証実験をはじめとした次世代モビリティシステムを導入し、環境配慮など社会課題の解決とともに、住民の利便性向上を目指すサービスを展開する。
●働く人や子育て世帯にとってどんなエリアになるか
昨今のコロナ禍で、リモートワークの推進によるワークスタイルの変化やデジタル化が一気に加速する中、郊外生活の需要が高まりつつある。都心で働くファミリー層からは、家族との時間を増やせる街、子どもと暮らしやすい街、遊びと仕事が両立できる街が求められており、このようなニーズを実現するため、本プロジェクトが始動した。
サステナブルシティの実現を目指し、先進設備を採用したスマートタウンの開発に取り組む。5GWi-Fi 敷設によるリモート環境も整備し『働く場所』と『住まう場所』 の機能を整備するとのこと。
また、歩車分離をはじめ、各所への防犯カメラ設置、無電柱化、地盤強化など、災害時だけでなく、普段の生活においても安心して暮らせる街を目指していくという。そのほか、クラブハウスを整備し、住民間でのイベントやワークショップなども実施予定だそうだ。
本プロジェクトはすでに始まっており、2022年5月に街びらきを行う予定。
2.【東京都】中野駅新北口駅前エリア
中野駅北口駅前には、中野サンプラザと中野区役所がある。現在、中野区はこの周辺エリアについて「中野駅新北口駅前エリア拠点施設整備事業」を進めており、代表事業者を野村不動産株式会社、共同事業者を東急不動産株式会社、住友商事株式会社、ヒューリック株式会社、東日本旅客鉄道株式会社として事業が進められている。
野村不動産によると、2022年度末に都市計画決定、2028年度内に竣工を目指して進めているという。
●中野駅北口駅前エリアの特徴
中野駅にはJR中央線、JR総武線、東京メトロ東西線が通っており、新宿駅や東京駅まで近く、アクセスに優れている。
アットホームが2021年4月に発表した「アットホーム人気の駅ランキング 東京23区編」においては、「不動産情報サイト アットホーム」でPV数が多かった人気の駅ランキングで、中野駅は「総合」4位となった。「ワンルーム~1DKのシングル向き物件」では、3位にランクインしている。
北口駅前には、中野サンプラザと中野区役所があり、さらに中野サンモール商店街が伸びており、その先には中野ブロードウェイがある。中野サンプラザは多数のアーティストがコンサートを開催してきたホールのほか、ホテル、レストラン、バンケット、スポーツクラブ、など様々な施設を持つ文化複合施設だ。
アクセスの良さはビジネスにも有効で、エンタメ、ショッピングが楽しめる場所が充実。同時に、区役所の手続きなど暮らしにも困らない利便性も備えるエリアだ。
●事業の概要
その中野駅北口エリアの2ヘクタールを超える大規模な敷地において行われるのが、この事業だ。ホール・オフィス・住宅・商業・ホテルなどにより構成される複合再開発事業となる。
これまで音楽、サブカルチャー、食など多様な文化を育んできた中野駅周辺の回遊性を高めることで、さらに賑わいと交流を創出し、立地特性を最大限に活かした拠点施設整備を行うことによって、グローバルな都市活動拠点の形成や地域経済の活性化に寄与していくことが期待されている。
(1)中野サンプラザの再開発
中野サンプラザが生まれ変わる。中野のシンボルとなる新たな文化・芸術などの発信拠点。最大7,000人収容の大ホールとライフスタイルホテル、エリアマネジメント施設などの整備を行う。中心となる施設は、現中野サンプラザの機能を継承しつつ新たな交流機能を加えるという。
(2)広場や歩行者空間の整備
中野駅西側南北通路・橋上駅舎(駅ビル)の整備や新区役所整備などの関連事業や周辺環境を踏まえて、広場や歩行者空間を整備することで、新たな交流と賑わいを創出する。
(3)地域とともに成長するエリアマネジメント
事業者が立ち上げるエリアマネジメント協議会を事務局とし、誰もが参加できる公開企画会議とオンラインコミュニティを同時に運営する予定だ。中野独自の多様な文化と地元の声を活かしながら、地域の活性化につながるさまざまな活動の展開・促進を図っていく。
●働く人や子育て世帯にとってどんなエリアになるか
中野駅前がリニューアルされることにより、その周辺で暮らす働く人や子育て世帯にとってどのようなエリアになるだろうか? 野村不動産の担当者は次のように述べる。
「中野駅を降りるとアンブレラフリーのデッキですぐにアクセスできます。ホールでは様々なイベントが日々開催され、刺激を受けられます。そしてデッキを渡れば、サンモール商店街や中野ブロードウェイなど多様な文化に触れられます。便利な商業施設や憩える広場もあれば、新区役所も近接しています。職住、そして文化近接のこのウォーカブルなエリアで、他のまちにはない独自性の高いライフ・ワークスタイルが創出されると予想されます」
コロナ禍で大きく暮らし方が変化した人も多い中、暮らす場所も再検討したい時期。今後、注目の駅前エリアとして、ぜひ押さえておこう。
【参考】
「BRIDGE LIFE Platform」
野村不動産ホールディングス「-中野サンプラザを再整備する大規模複合開発-『中野駅新北口駅前エリア拠点施設整備事業』に関する基本協定書を中野区と締結」
取材・文/石原亜香利