緊急事態宣言も解除され、秋も深まりつつある11月半ば、フォルクスワーゲンのコンパクトSUV「T-Cross」に乗って、ソロキャンプに出かけた。
このクルマを選んだ理由は、ちょうど「2021年上半期輸入車No.1SUV」と謳っているテレビCMを目にしたからだ。国内メーカーはもちろんのこと、海外メーカーからもSUVの新型車が次々に投入され、コンパクトサイズからミドルサイズ、大型SUVまで選択肢が増えているが、なぜ、このコンパクトSUV「T-Cross」が一番売れているのか、ずっと気になっていた。
ソロキャンプに出かけたいという気持ちと、その疑問を解消したいという気持ちが重なって、今回は「T-Cross」を借りて相模湖まで日帰りソロキャンプに出かけることにした。
本当にエンジンは1.0ℓなのか?目を疑うほど超効率的でパワフルなエンジン
都心から首都高速と中央自動車道を使って片道約64km、ちょうど1時間ぐらいのドライブだ。まず、高速道路に乗って驚いたのが、1.0ℓという小排気量を感じさせないパワフルな走りだ。もし、このクルマのスペックを知らずにこのクルマに乗った人が排気量を問われたら、おそらく1.4ℓ~2.0ℓぐらいだと答えるだろう。
それぐらい、ゆったり、機敏に、グイグイ走ってくれる。だから、重量のあるキャンプ道具をしっかり積んでいても、ストレスなく高速道路を走ることができた。もちろん、加速もスムーズだし、静粛性も十分だ。
ちなみに、85kW(116PS)の最高出力と200Nm(20.4kgm)の最大トルクを発生するこのTSIエンジンは、直噴技術とターボを組み合わせて力強いパフォーマンスを発揮するだけでなく燃費性能も高い。ちなみに、カタログ値では19.3km/L(JC08モード)となっており、SUVとして考えれば十分な数値だと言えるだろう。
7速のDSGトランスミッションは2つのクラッチを持っており、切れ目のない滑らかな加速をサポートするため、誰でもストレスなく運転することができるはずだ。
今回、乗った「TSI R-Line」は18インチアルミホイールを装着しており、力強い走りをサポートする。
キャンプ場が近づいて、細い道や路面が荒れている道に入る。じつはこのクルマ、FF(前輪駆動)で、4WDの設定はないのだが、それを感じさせないぐらい、スイスイと勾配のある道も駆け上っていくのがとても頼もしい。通常、このサイズならSUVであったとしても、どうしてもパワー不足を感じることが多いのだが、今回のドライブでは全くそれを感じさせるシーンはなかったと断言したい。
走行モードは、シーンに合わせてエコ、ノーマル、スポーツ、カスタムから選択できる。今回、キャンプ場までのちょっとした山道を走ったが、ノーマルやエコでも十分事足りるぐらい力強い走りを見せてくれた。
大き過ぎず、小さ過ぎず、それでいて室内空間はゆったりとした絶妙なパッケージ
SUVというと、車高が少し高めで、室内は広めで、走りはパワフルで、使いやすいクルマだというイメージを持っている人は多いだろう。だが、実際に乗ってみると、見た目だけで、意外と狭いとか、パワーがないとか、扱いづらいと感じたことがある人もいるのではないだろうか。「イメージと違った」なんていう人も意外と多いのも事実だ。
だが、このクルマは、そういったことを感じさせる要素が全くなく、むしろ、遊びゴコロのあるデザインに、十分な居住空間、実用的な機能をバランスよく備えているところが、購入者の満足度を高めている理由であることが乗ってみるとすぐにわかる。
180cm台後半の筆者が座っても、窮屈さを感じさせない運転席と足元も広く頭上スペースもしっかりと確保されている後席。ファブリックシートの素材を見ても価格以上のクオリティーを感じる。
荷室は後席使用時で455ℓの大容量。後席をすべて倒すと1281ℓまで拡大する。また分割可倒式シートによって、長い荷物もラクに収容できるので、キャンプ用品、スキー、スノーボードからショッピングまで十分使える。今回、実際にソロキャンプ用のテントやタープ、チェアなど一式を積んだが、それでも空きスペースが出るぐらい、かなり余裕があった。
スタイリッシュなLEDのヘッドライト。他の車両等が検知されるとハイビームとロービームを自動的に切り替えるハイビームアシスト機能も搭載。これは対向車への眩惑を軽減する便利な機能だ。
キャンプに出かけても、しっかり〝映える〟。やはり、デザインは重要だ。「T-Cross」はコンパクトSUVとは思えないほど存在感がある。ちなみに、ボディーカラーは8種類。バリエーションが豊富なので、クルマ選びで個性を重視する人にはおすすめ。
先進的なデジタルメーターと充実のインフォテイメントシステム
このクルマがユーザーの満足度を高めている要素のひとつが独自のインフォテイメントシステムだ。このサイズのSUVでも、9.2インチの大画面タッチスクリーンを採用しており、スマホのように画面を軽くタッチするだけで反応する。しかも、
手のひらを画面にかざして左右にスワイプするだけで画面操作を行えるジェスチャーコントロールも搭載しているのだ。
これには正直驚いた。しかも、通信モジュールを標準搭載しており、常時オンラインでつながっている状態なので、モバイルオンラインサービスの「We Connect」やハンズフリーフォンも利用することができる。これだけでもう、高級車を扱っているような気分にさせてくれるはずだ。
視認性の高い高解像度のフルデジタルメータークラスター。基本の速度計とタコメーターの表示だけでなく、ナビゲーションモードを選択すると、マップが大きく映し出されるのでとても便利。
「TSI R-Line」はセーフティパッケージが標準装備、先進装備が快適なドライブをサポートしてくれる!
ソロキャンプをたっぷり楽しんだ後、後片付けをして、帰路に向かう。ただ、ソロキャンプだと、すべてを1人でやらなければならないため、何から何まで忙しい。だから、あっという間に、時間も経ってしまう。多少の疲れが感じられたが「T-Cross」なら帰りの運転も安心できるという、心強さがある。というのも「TSI R-Line」にはセーフティパッケージが標準装備されており、安全機能も充実しているので、心理的にもラクな部分はあった。
特に、ラクだったのが、時速210kmまでの速度域であらかじめ設定した車速内で、前走車との一定の間隔および走行レーンの維持をサポートする同一車線内全車速運転支援システム「Travel Assist」だ。これを使えば、渋滞などの低速度域でも作動し、先行車が完全に停止するまでの範囲で制御してくれる。しかも、ステアリングホイールに静電容量式センサーを搭載しているため、軽く握っているだけでシステムが継続的に作動するので、長時間の高速道路などの運転にも便利だ。実際に、疲労をかなり軽減してくれた。
また、安全な車間距離を常にキープする「ACC」と車線逸脱しないようサポートする「Lane Assist」を同時に作動させることもできるなど、複合的に安全なドライブをサポートしてくれるのは本当に心強い。
そのほか、前方の車や歩行者を検知して衝突被害軽減をサポートする機能もある。時速5~65kmでの走行中に、歩行者検知機能が作動し、時速5~30kmの速度域においてはシティエマージェンシーブレーキ機能が作動する。エンブレムに内蔵されたレーダーセンサーが車両だけでなく歩行者も検知し、自動的にブレーキを作動させ危険を回避、あるいは追突の被害を軽減してくれるのだ。
さらに、縦列駐車・車庫入れの駐車時に、駐車可能スペースの検出とステアリング操作を自動で行い、駐車をサポートする駐車支援システム「Park Assist」も利用できる。縦列駐車からの発進の際も、同様に車両が自動でステアリング操作を行なうので、駐車が苦手な人にとってはうれしい機能であることに違いない。
このクオリティーと充実した装備が200万円台後半で手に入るのなら安すぎる!?
東京都心から相模湖までの往復約130km。日帰りソロキャンプの旅だったが、不思議なぐらい疲れがなく、充実した休日を過ごすことができた。「T-Cross」に乗って一番感じたのは、移動の足というより、相棒という感覚だ。気を遣うこともなく、こちらが思ったとおりに動いてくれて、しかもすべてがちょうどいい。最初から最後まで、これほどストレスを感じることがないドライブは久しぶりだった。
最近、国産車も輸入車も新車の価格が全体的に上がっている中で、この「T-Cross」の価格はかなりお得感があるのではないかと思う。等身大で、楽しくて、本当に使いやすいクルマを探している人には、間違いなくおすすめできるクルマであるということをお約束したい。
Specification
■全長×全幅×全高:4115×1760×1580mm
■ホイールベース:2550mm
■車両重量:1270kg
■排気量:999cc
■エンジン形式:直列3気筒DOHCターボ
■最高出力:116PS/5000~5500rpm
■最大トルク:200Nm/2000~3500rpm
■変速機:7速AT
■燃費:16.9km/L
■車両本体価格:350万3000円~
※TSI R-Line
◆関連情報
https://www.volkswagen.co.jp/ja/models/t-cross.html
文/DIME編集部 撮影/望月浩彦