DeFiサービスは日本からでも利用できるが、銀行の窓口のような物理的な相談先はおろか、管理者がいないため、何かトラブルがあっても補償は一切受けられない。また、ネット上でデータが分散管理されているため、そもそも〝国籍〟すら存在しない。ここでは、この茫洋としたサービスの全体像を解説していく。
実はレンディングやステーキングは国内の仮想通貨取引所でもできるが······
DeFi投資のうち「レンディング」と「ステーキング」は、実は国内の仮想通貨取引所で体験できる。国内取引所はいずれも管理者が存在するのに、なぜ? と思うかもしれないが、仮想通貨の金融機能はブロックチェーンに付随するので、DeFiでなくても提供が可能なのだ。例えばコインチェックでは、最大年利5%の利息がもらえるレンディング(貸し出し)を提供。またGMOコインでは「テゾス」のみではあるが、ステーキングがあり、2021年10月末現在では年利換算で5.5%の手数料収入が見込める。
●レンディング(貸し出し)
貸し出し可能な最大数量が決められていることがほとんど。利率は、貸出期間や仮想通貨に応じて異なっている。
●ステーキング
国内の仮想通貨取引所ではステーキングの取り扱いはほとんどないものの、比較的利率が高い傾向にある。
海外の仮想通貨取引所でもDeFiと似たような取引を提供している
国内の仮想通貨取引所では提供されていないDeFiサービス「流動性マイニング」は、海外の仮想通貨取引所で利用できる。国内の取引所のようにサポート体制が整っていないことが多いため、自己責任での取引はもちろん、英語サイトでの操作が必要になってくる。流動性マイニングはほかのDeFiサービスとは異なり、2種類の仮想通貨をペアで貸し出すことで〝両替所〟の役割を代行し、手数料を受け取る。一般的にほかのDeFiサービスに比べて利率が高い傾向にある。
●仮想通貨のペアを預けて手数料を稼ぐ
2通貨の両替所で片方の通貨が足りない時に貸して手数料を得る。
DeFiサービスの運営はいろんなパターンがあるが……
DeFiの運営の仕方は取引所により様々だ。運営の中心に立つ人ができるだけ秩序を保とうとする〝中央集権的な運営〟の取引所もあれば、運営者の関与すらできるだけ排除した完全な、〝非中央集権的な運営〟のところもある。ユーザー目線ではそれらの差異は実感しにくいだろう。いずれにせよ、DeFiサービスを利用する場合は、その取引所サイトにアクセスして、投資メニューから希望のものを選択すればよい。また、運営コミュニティーで行なわれている議論からも積極的に情報を取り、投資に役立てたい。
管理者がいないのにWebサイトがあるのはなぜ?
DeFiがいう「管理者」不在の管理者とは、銀行や証券ビジネスの中心に立つという意味。例えば銀行は、お金の貸出額管理や貸出先の与信管理を行なうのに対し、預金者からは手数料や利息をもらっている。DeFiではサービスに必要な画面、ブロックチェーンネットワークへの接続機能を開発する人たちがサイトを運営しているので、一見すると銀行と同じように見える。しかし、これらの人たちは貸出額管理などの業務を行なっているわけではない。自らも他の利用者と同じように、DeFiサービスへ資金を投じることで、手数料を稼いでいるのだ。
●複数のDeFi取引所を組み合わせて手数料を得る場合もある(PanCakeSwap + Revault)
流動性マイニングに必要な2つの通貨のペアである「LPトークン」という仮想通貨を作る。
LPトークンを使って流動性マイニングを行なう。作った所とは別取引所で行なってもよい。
●手数料は〝意思表示〟をしないともらえない
DeFiでは自分が稼いだ手数料や利息などはDeFiサービスに要求しないとウォレットに入らない。
〝ホンモノ〟のDeFiかどうか見分けるには、ウォレットの接続有無をチェックする
自分が利用している取引所が、中央管理者がいない真のDeFiなのかどうか……見分けるには、ウォレットの接続有無を調べるとよい。管理者が存在する仮想通貨取引所の場合には、その管理者がお金の管理をするために専用口座の開設が求められるのに対して、管理者が存在しない場合は、その口座も自前で用意する必要がある。例外はNFT取引の場合だ。NFT取引は、NFTの授受のためにウォレットへの接続が必須になるため、管理者が存在する取引所でもウォレット接続が求められる。
●DeFiではウォレットが銀行口座の代わり
パスワードが流出するだけで資産が全額盗まれてしまうことも。自己責任たるゆえんだ。
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