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赤字から脱却するのはいつ?楽天モバイルが注力する「Rakuten Communication Platform」とは

2021.12.15

■連載/法林岳之・石川 温・石野純也・房野麻子のスマホ会議

スマートフォン業界の最前線で取材する4人による、業界の裏側までわかる「スマホトーク」。今回は楽天モバイルのこれからについて話し合っていきます。

※新型コロナウイルス感染拡大対策を行っております

ローミング終了で回復できる?

房野氏:携帯電話各社の決算発表がありましたが、どう思われましたか?

房野氏

石野氏:赤字の数字的なインパクトがあったのは楽天ですね。

石野氏

石川氏:赤字は想定されているというか、しばらくはそうなる。

石川氏

法林氏:最初からわかっていた話だよね。

法林氏

石川氏:「KDDIへのローミング料金がなくなれば上向く」と言っているけれど、赤字額はまだ大きいので、ローミングがゼロになったとしても大変ですよね。ARPUを上げる、ユーザーを増やす方向性にならないといけない。ただし、ほか3キャリアの囲い込みも厳しいのと、KDDIがpovo 2.0を始めた影響も無視できない。楽天モバイルは頑張りどころですね。

povo 2.0

石野氏:ローミングを解消するというのはイコール、エリアが自前になるということなので、2022年春に人口カバー率を96%へ拡大するといっても、まだ他キャリアより3%以上低いですからね。

法林氏:その3%の差が、実はめちゃくちゃ大きい。

石川氏:半導体不足の影響で遅れている基地局1万局に半導体が付くと、4万4000局ぐらいで電波を吹くと言っている。ただし、ほかの3キャリアは20万局レベルなので、さらに努力が必要ですね。

石野氏:今の料金プラン(Rakuten UN-LIMIT VI)でARPUを上げるには、ユーザーに回線を使ってもらわないといけない。0円で終わらせない、何かが必要になってくる。

法林氏:昔、auが「ダブル定額」を導入した時に、2階建てになっているプランの上の段に上げるために、髙橋さん(現KDDI社長 髙橋 誠氏)が中心となってコンテンツビジネスを一生懸命考えた。それの答えの1つが「着うた」だった。結局、楽天モバイルも同じで、回線を維持するだけのものになってはダメ。

KDDI株式会社 代表取締役社長 髙橋 誠氏

法林氏:楽天モバイルは、対抗サービスで「楽天マガジン」とか「楽天TV」とか色々やり始めている。積極的にプロモーションしようとしている。でも、雑誌といえば「dマガジン」が強いし、映像コンテンツは「Netflix」をはじめ各社のサービスが存在する。あのディズニーですら内容を一新している。「Disney+(ディズニープラス)」って実は内容が変わっているんですよ。

楽天マガジン

石野氏:いきなり変わっててびっくりしました。

法林氏:アプリのアイコンは同じなんだけど、新バージョンと旧バージョンがある。ディズニー以外のコンテンツも買えるようになったりしていて、コンテンツ配信って結構変わっているんです。それと比較すると、楽天はもっとテコ入れしないとダメ。ただ、出血を止めるためにKDDIとのローミングをやめていくというのは、前にも言ったけれど、モバイルの会社としてはあるべき姿。それは評価できるけれど、これから本気で戦っていかないといけない。

 携帯電話会社としては、本来あるべき姿に進んだ。矢澤さん(楽天モバイル 代表取締役副社長 矢澤俊介氏)が発表会などに登壇するようになり、エリアの説明とかを真摯にしてくれるようになった。この意味を僕らは見守る必要があると思います。

楽天モバイル株式会社 代表取締役副社長 矢澤 俊介氏

房野氏:海外に売っている「Rakuten Communication Platform(以下RCP)」は期待できますか?

石川氏:「楽天シンフォニー」(RCPを含むクラウドネイティブなプロダクトやサービスなどを集約した通信プラットフォームの事業組織)のことですね。あれが本当に1000億円単位の収入になればいいと思います。

Rakuten Symphonyの5つの事業領域

石野氏:連動はしているんでしょうけど、楽天モバイルとは全然別の会社みたいな感じがする。海外の会社みたいな。

石川氏:楽天モバイルのCTOであるタレック・アミン氏が、楽天シンフォニーのCEOになってチームを率いる。

法林氏:基地局やネットワークの運用は難しいですよ。自らの実績を活かして、海外の事業者にRCPを売り込むのはアリだと思います。グローバルで見ると、既存の大手キャリアとは別に、新たに免許を受け、モバイルネットワークを構築する新興キャリアが各国で出てきていて、シェアを取りつつある。楽天モバイルもそういう新興キャリアのひとつとも言えるんですが、似たような立場にある海外の新興キャリアがRCPを採用する可能性は十二分にある。ただし、それらの会社が今後も継続していくかどうかは別の話。

石川氏:ゼロからネットワークを作るキャリアか、もしくは5Gだけ提供する会社とかであれば、たぶん大丈夫だと思うんですけど、既存システムと一緒に動かすとなると、かなり大変。

法林氏:エリクソンやノキアのネットワークが動いている中に、新しいシステムを入れ込んでいきましょうという話になってくるのか、本当にゼロから行くのか。今までは電話とインターネットだけだったけど、5Gの時代、スタンドアローンになれば、商売がもっと広がっていくのでビジネスチャンスはあると思う。

……続く!

次回は、通信キャリア各社の決算についてより深く会議する予定です。ご期待ください。

法林岳之(ほうりん・ たかゆき)
Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。

石川 温(いしかわ・つつむ)
日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、2003年に独立。国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップルなども取材。NHK Eテレ「趣味どきっ! はじめてのスマホ」で講師役で出演。メルマガ「スマホで業界新聞(月額540円)」を発行中。

石野純也(いしの・じゅんや)
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。

房野麻子(ふさの・あさこ)
出版社にて携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年からフリーランスライターとして独立。携帯業界で数少ない女性ライターとして、女性目線のモバイル端末紹介を中心に、雑誌やWeb媒体で執筆活動を行う。

構成/中馬幹弘
文/房野麻子

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