経営者が知らない、コロナ禍で進む企業の地方進出に対する従業員のホンネ
新型コロナウイルスの感染拡大により、テレワークやワーケーションの普及が加速した。また、有名企業が都心のオフィス街から地方に本社機能を移転するといった動きも散見される。
こうした企業の地方進出について、東京、大阪、愛知のいわゆる大都市に住む経営層や従業員はどのように思っているのだろうか?
高知県はこのほど、上記大都市の20~60代の経営層(会社経営者・役員)男女200名・従業員男女200名の合計400名を対象に、「企業の地方進出に関する調査」をインターネット調査にて実施した。詳細は以下の通り。
【地方勤務・地方移住意向】ポジティブな気持ちを持っているが、具体的に計画できていない!?
■① コロナ前において「テレワークはできない」と思っていた人は7割
「コロナ前※は仕事柄上、リモートワークはできないと思っていましたか」と尋ねたところ、「できないと思っていた」が70.0%、「できると思っていた」が30.0%と回答。
なお、現在のリモートワーク状況について尋ねたところ、「コロナ前もしていて、現在もしている(10.3%)」、「コロナ前はしていないが、現在はしている(34.0%)」という結果になり、現在、約半数(44.3%)の人がリモートワークを実施していたことがわかった。
■② リモートワーク実施者の3人に1人以上が地方勤務を希望!
前問で「コロナ前はしていないが、現在はしている(n=136)」と回答した人のうち、「働く環境を変えて”地方”で働きたいと思いますか」と尋ねたところ、「そう思う」と回答した人は38.2%となり、3人に1人以上が地方で働きたいと思っていることがわかった。
また、「そう思う(n=52)」と回答した人を対象に、『地方で働きたいと思う年齢を教えてください』と尋ねたところ、51.1歳(平均値で算出)となった。
■③ コロナ禍を経て、4割以上が地方移住・地方勤務に対してポジティブな気持ちに
「コロナ禍※を経て、地方に住むことや働くことに対してポジティブな気持ちになりましたか」と尋ねたところ、40.3%が「そう思う」と回答。中でも、20代は54.2%、30代は51.5%と若い世代の半数以上がポジティブな気持ちを抱いていることがわかった。
また、ポジティブな気持ちになった従業員は45.0%、経営層は35.5%という結果となり、従業員と経営層で差があることが判明した。
あわせて、「ポジティブな気持ちになった(n=161)」と回答した人に「コロナ禍を経て、地方に住むことや働くことに対してポジティブな気持ちになった理由」を聞いたところ、従業員・経営層ともに第1位は「自然に囲まれた土地で働き(住み)たいから(従業員:52.2%、経営層:38.0%)」となったが、従業員の第2位は「物価が安い場所でお金に余裕をもって働き(住み)たいから(50.0%)」、第3位は「食べ物がおいしい場所で働き(住み)たいから(45.6%)」となり、経営層は第2位が「地方に移住しても、今の会社でテレワークで勤務できるから(36.6%)」、第3位が「物価が安い場所でお金に余裕をもって働き(住み)たいから(35.2%)」という結果となり、ポジティブ気持ちになった理由でも違いが見られた。
■④ 地方移住をポジティブに考えていても、具体的に計画をしている人はたったの5%
コロナ禍を経て地方で働くことへポジティブな気持ちになったと回答した人(n=161)に対し、「現在、どの程度地方で働く計画を立てていますか」と尋ねたところ、「具体的に計画を立てている」と回答した人は、5.0%に留まる結果となった。
【企業の地方進出に対する経営層と従業員の意向】経営層と従業員で認識に大幅なギャップあり!
■⑤ 従業員の“約2人に1人”が地方勤務に対してポジティブに感じているが、経営層は“5人に1人”と想定
大都市の会社経営者・役員に「現場のスタッフが地方で働きたい気持ちがあると思いますか」と尋ねたところ、5人に1人(20.5%)が「そう思う」と回答した。一方、前問(③)にて地方で働くことに対してポジティブな気持ちを抱いている従業員は45.0%となっており、認識の差が浮き彫りになった。
■⑥ 地方勤務にポジティブに感じている人が、地方で働く際に希望する企業の進出形態 第1位は「常駐型(単独オフィス) 39.1%」
地方で働くことにポジティブな人に「あなたが望む、地方への進出形態」を尋ねたところ、第1位「常駐型(単独オフィス)(39.1%)」、第2位「循環型(シェアオフィス)(31.1%)」、第3位「ワーケーション(会員制コワーキング)(23.6%)」となった。
【経営層が地方進出後に期待すること】「営業販路拡大」と「コスト削減(550万円/年)」を期待!
■⑦ 経営層が地方進出でネックになっていることは?
経営層に「地方進出を検討する際にネックになっているもの」を尋ねたところ、第1位「費用対効果が読めない(48.5%)」、第2位「地方に進出しても、思ったほど経費を削減できない(22.5%)」、第3位「すぐに開設できる立地がない(18.0%)」となった。続いて、「人材が集まらなさそう(17.0%)」、「時間がかかりそう(15.0%)」「地方進出を検討するうえで十分な情報がない(13.0%)」という結果になった。
■⑧ 地方進出後に取り組みたいことは?
経営層に「新たに地方に進出した場合、取り組みたいことは何ですか」と尋ねたところ、第1位「営業販路の拡大(21.5%)」、第2位「地方にいる優秀な人材の採用(20.0%)」、第3位「拠点としての体制確立(18.5%)」となった。続いて、「進出先の地元企業との連携・協業(16.0%)」、「本社業務のサポート(12.0%)」、「新規事業の創設・推進(12.0%)」という結果になった。
■⑨ 地方進出における重要なポイントは「営業機会」と「コストメリット」!
経営層に『地方拠点(サテライトオフィス※)を作ることで、何を最も望みますか』と尋ねたところ、前問と同様に第1位は「営業販路の拡大(16.5%)」となった。第2位は「経営コストの削減(13.5%)」となった。なお、経営コストの削減を望むと回答した経営層に、『年間でどれくらいのコスト削減を望みますか』と尋ねたところ、年間で550万円(中央値で算出)の削減を期待していることがわかった。
また、『地方の移転先・進出先に求める選定条件』を尋ねたところ、第1位「コストメリット(32.0%)」、第2位「営業機会(23.0%)」、第3位「インフラが充実している(19.5%)」となり、地方進出のポイントとして「コスト面」だけでなく「営業機会」も重視していることが明らかになった。
なお、選定条件としては、「雇用メリットがある(18.5%)」、「社員の労働環境向上・生活環境改善(18.0%)」、「自然災害発生・被災リスクの低さ(16.0%)」といった回答もあった。
※サテライトオフィス:支店、営業所を含む
※高知県調べ
<調査概要>
・調査方法:インターネット調査
・調査時期:2021年9月
・調査対象:東京都在住の会社経営者・役員の20~60代男女100名
東京都在住の従業員の20~60代男女100名
大阪府在住の会社経営者・役員の20~60代男女50名
大阪府在住の従業員の20~60代男女50名
愛知県在住の会社経営者・役員の30~60代男女50名
愛知県在住の従業員の20~60代男女50名
※小数点第二位を四捨五入しているため、合計が100%にならない場合がある。
出典元:高知県
https://kochi-itc-ritti.jp/
構成/こじへい