10年で倍増したワイナリー。個性的なワインも続々
ここ10年で消費量が約1.5倍になったといわれる国内ワイン市場。背景は食生活の変化など様々だが、個人ワイナリーの成功による国内ワイナリー急増も理由のひとつだ。
「私が飲み始めた2015年頃と比べると、日本ワインのレベルは格段にアップしました。ワイナリーの数も増えて今は500軒に届く勢いです」(ひぐち君)。数が増えたことでワイナリーの個性が求められる時代にもなったという。
「ワインだけでなく、世界的に評価されるリキュールができたり、ナチュラルワインや今まで脇役だった品種が注目されるなど、どんどん新しいチャレンジが始まっています。これからも日本ワインのブームは続きそうですよ」
Navigator ひぐち君
「日本のワインを愛する会」副会長。2015年にワインエキスパートを取得した後、日本ワインのおいしさに目覚める。2020年には日本ソムリエ協会から名誉ソムリエの「ソムリエ・ドヌール」に任命される。日本を中心に見学したワイナリーは約80軒。
標高の高い冷涼な産地で醸す白ワインが魅力
信州たかやまワイナリー
【長野県】since 2015
ワイナリーの多い長野県でも有数の広い栽培面積を持ち、標高400〜800mと畑の高低差が大きいためバラエティーに富んだぶどうが栽培できる。特に年間平均気温21.5℃という冷涼な気候の高山村で育つぶどうを原料としたワインは、国内外のワインコンクールでも上位に入るなどハイレベル。シャルドネやピノノワールも評価が高い。
北アルプスを望む場所に立つワイナリーは厳しい自然環境をワインに生かしている。
『ソーヴィニヨンブラン 2020』3025円
容量:750ml/品種:ソーヴィニヨンブラン/アルコール度数:12.5%
冷涼な気候で造られるこのワインは果実味と酸味のバランスが抜群。注目されつつある日本のソーヴィニヨンブランを代表する1本だ。レモンのようなフルーティーな酸味とハーブ系の涼やかな香りがある。
〈ひぐち君’s Tasting〉
日本で造るソーヴィニヨンブランの中でも5本の指に入るとてもエレガントなワインです。ハーブの清涼感とレモンのような酸味で生牡蠣に合う。
南国宮崎でナチュラルなワイン造りに挑む
香月ワインズ
【宮崎県】since 2017
海外でワインの醸造を学んだ醸造家が営む少量生産の小さなワイナリー。化学肥料、殺虫剤、除草剤などを一切使わないぶどう栽培を選択し、気候が暑い宮崎県では難しいとされるぶどうの無農薬栽培に挑んでいる。野生酵母による発酵、酸化防止剤などの添加物不使用、無濾過などナチュラルにこだわったワインを造る。
ワイナリーは農薬などに頼らない自然生態系農薬を推進する宮崎県・綾町にある。
『綾ロランジュ 2020』1万1000円
容量:750ml/品種:ゲヴェルツ・トラミネール、ピノグリ、バッカスほか/アルコール度数:11%
日本でもこのところ造られるようになってきた、白ぶどうを赤ワインのよう仕込んだオレンジ色のワイン。香りの高いゲヴェルツ・トラミネールなどの品種を使っているため、後味はドライだが長い余韻が特徴。
〈ひぐち君’s Tasting〉
ライチの香りがして、華やかですね。白コショウのスパイス感、紅茶のなめらかな渋味など複雑で豊か。カニクリームコロッケに合いそうです。
日本品種にこだわり体に染み入る味わいに
98WINEs
【山梨県】since 2019
メルシャンをはじめ、国内でワイン醸造に長年携わってきたベテラン醸造家が独立して開いたワイナリー。自然にまかせ、野生酵母を使ったナチュラルなワイン造りに取り組んでいる。長年この土地で栽培されてきたぶどうを選びたいという理由から、日本固有のワイン用ぶどうである甲州とマスカットベーリーAだけに絞り込んでいる。
山梨県・福生里の標高650mに位置し、甲府盆地と遠くに富士山を望む絶景が広がる。
『霜ロゼ 2020』2420円
容量:750ml/品種:甲州、マスカットベーリーA/アルコール度数:11%
ロゼの製法には様々あるが、これは赤のマスカットベーリーAと白の甲州をブレンドしている。軽めのタンニンがあり、甲州が入ることでしっかりした骨格と酸も加わり、食事に合うワインに仕上がった。
〈ひぐち君’s Tasting〉
いちごなどを思わせるベリー感がチャーミングです。じんわりとやさしい旨味とアフターに甲州の苦味があります。チーズケーキに合わせたい。
取材・文/岡本ジュン
※本記事内に記載されている商品やサービスの価格は2021年10月31日時点のもので変更になる場合があります。ご了承ください。