自分の魅力を知る?話題のアプリ「MOTESSENSE」とは?
クリスマスソングが流れ、寒さが厳しくなっていくこの季節になると、仲間と街を歩く人々や、恋人たちがまぶしく見える人も多い。
「自分の魅力はどこにあるのだろうか」と思う心に響く言葉は、「己になりなさい。他人はすでに他人がなっているのだから」だ。これは19世紀末に活躍した英国人作家のオスカー・ワイルドの名言とされている。
では、自分の魅力は何なのか。そこで、『MOTESSENSE』というアプリに注目した。これは日本電信電話株式会社(以下・NTT)が、「多様性の時代に、それぞれの人が良好に社会とつながること」を大きな目的として開発。
2021年11月半ばにタレント・Youtuberにプレイしてもらう実証実験の様子を公開したところAI界ですぐに話題になった。
この『MOTESSENSE』でわかることは、ユーザー自身の魅力や個性だ。己になるには、己を知ることが大切だが、これが自分ではなかなかわからない。このアプリは自分の魅力を「モテ因子」と表現し、それを見つける手助けをしてくれる。
アプリのトップ画面。右のキャラクターがMOTEO、左がMOTEKOだ 。
では、モテ因子を見つけるために、何をするのか。アプリ上でユーザーは主に自己紹介を行う。様子(話し方、表情、仕草、言葉の内容など)を総合的にAIが診断・分析する。
実証実験には、人気YouTuberしらスタさん(チャンネル登録者数155万人)やおめがシスターズさん(同28.5万人)、など著名人も参加。
しらスタさんは「モテないと思っていましたが、モテる要素に気付いたかも」と感嘆し、おめがシスターズさんは「画面に向かって喋るだけで、いろんなことがわかるのがすごすぎる」と感想を述べている。
開発の背景をNTTコンピュータ&データサイエンス研究所 高島瑛彦さん にお話を伺った。
「これからの社会において、個人が社会や他者とよりよくつながるには、様々な要素が必要です。そのためには、自分自身の魅力、すなわち“個性”を自分自身で認識できるようにすることが重要です。個人の眠れる魅力をテクノロジーによって発見し、それを数値化すれば、多くの人がご自身のことに気付き、自分自身を受け入れられるようになるはずです。それと同時に、他人の個性も受け入れられるようになり、多様性を認め合う文化が醸成されると期待しているのです」
では、実際にどのようにテストをするのだろうか。
診断にはPCのカメラを使う。カメラに向かって話しかけたり、自己紹介したりする。
6つのテストのうち、1つを選ぶ。いずれも自己紹介や、自分の意見を述べ、それを診断する。
これは「あなたについて教えて」のテスト内での質問。自己紹介での声のトーン、表情などからAIがユーザーの魅力を分析する。
これがプレイヤーの様々な情報を計測している画面。『MOTESSENSE』ではAIによりプレイヤーの魅力を数値化している。
魅力を「モテ因子」として解説する。自分の魅力が明文化されると、扱い方のヒントも自ずとわかってくる。
魅力(モテ因子)を5方向から分析。モテるためにどのような個性を伸ばしていけばいいかがわかる。
モテ因子を偏差値化する。このベースは、次世代メディア処理のAI技術「MediaGnosis」(NTT)だ。
現段階において、この『MOTESSENSE』は試験段階だが、今後様々な技術に応用されるという。
「実証実験にて得られた知見は、次世代メディア処理AI「MediaGnosis」の研究開発にフィードバックする予定です。ここで目指しているのは、人間に近い理解を可能とするAIの実現。ここで、得られた知見は、「MOTESSENSE」の高度化だけでなく、面接やプレゼンテーションの練習や接客支援等のアプリケーションの開発にも還元。人を深く理解することで価値を生みだす一助になれるはず」(高島さん)
人間は己のことになると、見えなくなってしまうことが多い。これらの技術は最も未知な自分自身を知るよすがになるはずだ。
関連情報:https://www.rd.ntt/mediagnosis/motessense/
取材・文/前川亜紀