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乗ってわかったトヨタのコンパクトSUV「ライズ e-SMART」の買い得感

2021.12.09

国産コンパクトクロスオーバーSUVのジャンルで安定した人気を誇るトヨタ・ライズ、およびダイハツ・ロッキーに、待望のe-SMARTと呼ばれるハイブリッドモデルが加わった。これまでの1Lターボエンジン搭載モデルは4WDのみの展開となり、また新たにe-SMARTハイブリッドに発電専用として積まれる新開発1.2L NAエンジンモデルを追加(@DIMEにて同エンジン搭載の兄弟車、ダイハツ・ロッキーの試乗記があります)。今では3種類のパワーユニットが揃ったということだ。しかもライズはハイブリッドで216.3万円からという価格の買い得感も注目点である。

ここではトヨタ・ライズのe-SMARTハイブリッドモデル(2WDのみ)の試乗記をお届けする。グレードはハイブリッドモデルに2タイプあるうちの最上級グレードとなるZである。

まずはe-SMARTハイブリッドについて。トヨタ車ではTHSIIという2モーターかつ、エンジンとモーターを使い分けて走るシリーズ・パラレル式のストロングハイブリッドが定番だが、このe-SMARTハイブリッドは例えば日産のe-POWERと同じような、新開発された熱効率の高い1.2Lエンジンが発電のみを担い、駆動は100%モーターで行うという仕組みである。比較的コンパクトかつ重量増が最小限で済む廉価なハイブリッドシステムで、ライズのような車格のクルマにはぴったりのハイブリッドシステムと言える。

3気筒エンジンは82ps、10.7kg-m。実際の駆動力となるモーターは106ps、17.3kg-m。リチウムイオン電池が4.3Ahという、あくまで価格重視のスペックと考えていいだろう。WLTC総合モード燃費は、従来の1Lターボ+4WDの17.4km/L、新しい1.2L NA FFの20.7km/Lに対して、一気に28.0km/Lまで向上する。

また、アクアに初採用された快適ペダル、日産のワンペダルのようなスマートペダル(S-PDL)をライズとして新採用。アクセル操作だけで車速をコントロールできる機能で、加減速が繰り返される街中走行、渋滞時、下り坂、そして山道のカーブの手前減速などに効果があり、ドライバーの右足の負担を軽減してくれる回生機能である。好みに合わなければOFFにすることもでき、インパネ左端下にあるS-PDLスイッチで操作が可能だ。

ここでシリーズ式ハイブリッドのメリットとデメリットを釈迦に説法ながら説明すると、メリットは電動感ある走行感覚、純ガソリンエンジンに対する燃費向上、シリーズ・パラレル式ハイブリッドに対する価格の安さなどがある。ライズのe-SMARTハイブリッドではAC100V/1500Wコンセントがオプションで用意されている点も、アウトドアや災害時に威力を発揮してくれる安心便利な絶大なるメリットと言えるだろう。

一方、デメリットとしては、モーター駆動のためのバッテリー(ライズはリチウムイオン電池)やハイブリッドシステムの補器を積載するため、どこかの空間が犠牲になり、また車重増を引き起こすことや価格アップなどがある。が、ライズのe-SMARTハイブリッドは、主に街乗りを主体に考えられたハイブリッドシステムであり、バッテリーの大きさ、重量は最小限に抑えられ、車重増は90kgにとどまっている。価格に関しては1.2L NAの同FFモデルに対して28万9000円高、1Lターボ4WDモデル比では2万8800円高と、ハイブリッド車の価格アップとしては、燃費差と合わせ、まずまずリーズナブルな範囲に収まっていると言えそうだ。それがe-SMARTハイブリッドの強みでもある。

では、室内空間、ラゲッジスペースはどうかと言えば、さすがにハイブリッド化の犠牲がないはずもない。例えば、コンパクトなリチウムイオンバッテリーが置かれているのは後席の座面下で、その分、シートのクッションがガソリン車に対して2/3ぐらいの厚みになっている。もちろん、かけ心地には気が使われ、底づき感などないのだが、実際に着座してみて、ガソリン車とのクッションのじんわり沈むタッチの違いを確認している。体重が軽い人なら気にならない差だと思われる。

つぎに、ライズ自慢のラゲッジスペースだ。容量はクラストップレベルの369Lで、ガソリン車の2WDなら2段階の高さに調節できるデッキボード下にも80L~(デッキボード位置による。以下同)ものスペースがあった。が、e-SMARTハイブリッドはラゲッジルームの床下に補器バッテリーが積まれ、発泡スチロールの仕切りボックスが付いているため(ガソリン車の補器バッテリーはエンジンルームにあるが、そこがハイブリッドシステムで満杯になり、ラゲッジルーム床下に移動させられた・・・)、80L~からいきなり17L~に減少(1Lターボの4WDは38L~)しているのだ。もっとも、デッキボードを上段にすれば、81Lの容量が確保されると同時に、仕切り付きの床下収納になるため、これまでの大容量は望めないにしても、転がりやすいものや汚れものの収納にはかえって好都合かも知れない。

さて、232.8万円のプライスタグを付けるe-SMARTハイブリッドのZグレードを走らせれば、出足からモーターによる瞬時のトルクの立ち上がり、モーター駆動ならではのスムーズな加速感を味わうことができる。前後して試乗した1.2L NAエンジンはもちろん、従来からある1Lターボエンジンに対しても、力強く瞬発力のある動力性能である。e-SMARTハイブリッドモデルにS-PDLと呼ばれるワンペダルで回生による減速が可能なスマートペダル、電子パーキングブレーキとオートブレーキホールド機能が標準装備されたのも朗報である(つまり足踏み式ブレーキがなく運転席の足元すっきり)。

が、中低速域での3気筒感あるエンジンノイズのゴロゴロした音、振動は、同じエンジンのはずの1.2L NAモデルより盛大で、シリーズ式ハイブリッド車ならではのモーター感ある静かでスムーズであるはずの走行性能の有難みが薄れてしまっているのが残念だ。従来の1LターボのFF車ではトルク感とスムーズさが際立ち、3気筒感もほぼ気にならなかったのに、である。最初はモーター駆動時の静かさとエンジンによる発電ノイズの対比でうるさく感じると思ったのだが、そうではない。直前に試乗した同エンジンを積む1.2L NAモデルはそこまでうるさくはなかった事実があるからである。考えられる原因は新開発1.2L NAエンジン本体というより、エンジンのハイブリッド化によるエンジン周りの補器類の違い(排気系か?)によるものだと推測できる。ハイブリッド=静かなクルマと想像して乗ると、ちょっと戸惑うかも知れない。そのあたりの手当てはコストとの戦いではあるのだが・・・。

とはいえ、走行性能、とくに安定感では、ハイブリッド車のメリットが生かされている。つまり、リチウムイオンバッテリーや補器バッテリーなどの重量物が車体下側に置かれていることで、重心が下がり、カーブなどでの安定感が増していることだ。前後して1.2L NAエンジンモデルに乗り、首都高速道路の同じ急カーブを同じライン、速度で曲がった経験から、その差は歴然(タイヤサイズも17インチで同じ)。より地に足のついたコーナリングが可能で、山道走行まで視野に入れれば、その点は評価していいと思える。

低速域ではごく軽かったパワーステアリングがビシッと引き締まり、安心感をもたらしてくれる高速走行では、電子パーキングブレーキとオートブレーキホールド機能により可能になった全車速追従型のACCも試したのだが、加減速の制御は今一つで、とくに渋滞時などの微低速走行時に自動的にブレーキがかかる際、ギギッという、最新のACC装備車としては例外的な音と振動が伴うのが残念だった。

乗り心地に関しても、期待したほどではなかった。ライズのデビュー当時、FFに対して4WDは重量物がリヤ側に追加されているため、重量バランスもあってよりしっとりとした乗り味になっていたことを思い出し、ハイブリッドモデルは後席下にリチウムイオンバッテリー、ラゲッジルーム床下に補器バッテリーが積まれていることで、重量物が後ろ寄りにあるからFFでも乗り心地が改善されてるはず・・・と想像していたのだが、段差などでのショック、音、振動の吸収性不足によるガタピシ感は、前後して乗った軽快な走りを見せる1.2L NAのFFモデルと大きく違わなかったのである。

よって、e-SMARTハイブリッドモデルで何故か顕著になる3気筒エンジンの音や振動、そしてFFモデルの乗り心地面の改善は急務だろう。e-SMARTハイブリッドモデルは、電動車ならではの燃費性能の良さはもちろん、S-PDLと呼ばれるワンペダル機能、コネクテッド機能、オプションで用意されるAC100V/1500Wコンセント、SMART ASSISTと呼ばれる充実した最大19種類もの予防安全、先進運転支援機能といったクラスを超えた強み、魅力を持っているのだから、ことさらその2点については残念に思えてしまうのだ(ダイハツ・ロッキーのe-SMARTハイブリッドモデルでもエンジンノイズや乗り心地は同様のはず)。

トヨタ・ライズ
https://toyota.jp/raize/

写真・文/青山尚暉

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