
マクロ経済見通し(2021年12月)
アセットマネジメント企業・シュローダーがマクロ経済見通し(2021年12月)を公開した。
基本シナリオ
【米国】
景気刺激策の効果の剥落やこれまで控えてきた消費が出てくる現象の一巡感、およびより高いインフレ率を背景に、2022年の米国経済成長率見通しは3.2%に減速すると考えている(2021年の米国経済成長率見通しは5.4%)。
米国のインフレ率については、供給ボトルネックの問題が継続すると考えられ、2022年1-3月期は高い水準で推移すると見込んでいる。
その後2022年は、コモディティのベース効果が薄れ、供給サイドの問題が緩和すると見込まれることから、インフレ率は落ち着くと考えている。
米連邦準備制度理事会(FRB)は、2022年半ばに量的緩和を終了する方向に向かっており、2022年12月には0.25%の利上げを実施し、2023年内にはさらに1%の利上げを実施すると考えている。
【ユーロ圏】
2022年のユーロ圏経済成長率は減速が見込まれるが、家計の貯蓄率は正常な水準まで低下し、欧州復興基金などの効果が表面化し始めることにより経済活動が下支えられると見込まれることから、4.6%と高水準で維持されると考えている。
インフレ率見通しについては、2021年は2.4%、2022年には3.5%に上昇すると見込んでいる。欧州中央銀行(ECB)は、ハト派姿勢を維持することが見込まれ、パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)を現時点においては、2022年1-3月期に終了する予定だが、新型コロナウイルス感染拡大以前から実施されていた量的金融緩和政策については維持すると考える。
【英国】
英国の経済成長率見通しは、経済再開による下支え効果が薄れることから、2022年は5.2%に減速すると考える(2021年の英国経済成長率見通しは6.9%)。
家計支出は引き続き高水準で維持されているが、インフレ率の上昇が購買力を低下させると考える。2022年のインフレ率は2.5%、2023年については、主にエネルギー価格の上昇から3.8%に上昇すると考える。
また、堅調な労働市場を背景に、イングランド銀行(BOE)は2021年内および2022年1-3月期に利上げを実施する可能性があると見込んでいる。
より低いインフレ率と財政政策の引き締めにより、一旦利上げの動きを休止し、2023年後半に利上げを再開すると考える。
【日本】
経済再開や産業セクターの供給ボトルネックが解消に向かうに伴い、2022年の日本の経済成長率見通しは3.3%に上昇すると考えている。
2022年のインフレ率については、0.9%に上昇を見込んでいるが、日本銀行はイールド・カーブ・コントロールを維持すると考えている。
【エマージング諸国】
新型コロナウイルスワクチンの普及がエマージング諸国市場の支援材料とはなるものの、より高いインフレ率や金利が重しとなり、2022年のエマージング諸国経済成長率は4.5%に減速すると考えている(2021年のエマージング諸国経済成長率見通しは6.5%)。
中国は、他の大部分のエマージング諸国経済より回復が早く、中国経済はすでに減速し始めている。2022年半ば頃までには経済成長率の安定化を企図して、中国政府はより緩和的な政策を実施すると考えているが、不動産セクターから生じるダウンサイドリスクについて懸念している。
今後想定される他のシナリオ
基本シナリオ以外で今後想定される景気シナリオについて、「原油価格ショック」、「炭素税の導入」、「供給サイドによるインフレ」など、総括してスタグフレーションのリスクに傾斜している。
最も可能性の高いリスクシナリオとしては、「供給サイドによるインフレ」、次いでデフレーションシナリオの「中国経済のハードランディング」としている。
世界の実質GDP成長率見通し
シュローダー・エコノミクス・チームによる見通し(基本シナリオ)
関連情報:https://www.schroders.com/ja-jp/jp/asset-management/
構成/DIME編集部