『不束者』はビジネスシーンでも使える便利な言葉なので、覚えておくと役立ちます。言葉の意味と合わせて、類語や由来についても紹介します。使えるシチュエーションや正しい使い方、例文も確認して実際に使ってみましょう。
「不束者」の意味
何となく分かっていても、『不束者』の意味をきちんと説明できない人もいるのではないでしょうか?まずは、意味・類語・由来を確認しましょう。
無作法な人や未熟者など
不束者は、『無作法な人』や『未熟者』という意味です。『気が利かない人』や『行き届かない人』という意味合いでも使われます。具体的には、自分のことをへりくだったり、謙遜したりして言うときに使います。
例えば、新しい部署に異動したときの自己紹介で使われることも珍しくありません。「知識や経験が不足していて至らない点があるかもしれませんが」というニュアンスで「不束者ですが…」というフレーズが用いられます。
言い換えのできる「不束者」の類語
使いやすい類語の一つが、『未熟者』です。経験が浅く必要なスキルを習得できていない人という意味になります。『半人前』もスキル不足の人を表現する言葉なので、言い換えが可能です。
ビジネスシーンなどでは、『若輩者』に言い換えて使えます。経験が浅い人という意味だけでなく、十分な経験や知識を持ち合わせていない人が謙遜して言うときにも用いられます。
無作法な人という意味の『不届き者』にも言い換え可能です。ただし、『法やしきたりに反することをした者』というネガティブなニュアンスもあるため、使うときには注意しましょう。
フレーズで使うときは、「至らない点が多々ありますが」「至らない点があるかと思いますが」のように言い換えられます。
「不束者」の由来
平安時代に使用されていた『太束(ふとつか)』という言葉が由来です。本来の意味は『短くて太い柱』ですが、『柱のように太くて丈夫な人』を指す言葉として用いられるようになりました。
ポジティブなニュアンスで用いられていた表現ですが、時代の流れとともに変化していきました。『細い人が美しい』という美意識が浸透し、『不束』という字になるとともに『美しくない』『不格好』『下品』というネガティブなニュアンスに変化したのです。
やがて現在のように、謙遜するときに用いられる表現として定着しました。
「不束者」の使い方
『不束者』は、どのような場面で使うのでしょうか?よく使われる場面を2つ紹介するので、使い方を確認しましょう。
結婚の挨拶で
婚約者の両親に結婚の報告をするときの定番フレーズとして使われています。テレビドラマなどで、「不束者ですが、末永くよろしくお願いいたします」や「不束者の娘ですが、何卒よろしくお願いいたします」という台詞を耳にしたことがある人もいるのではないでしょうか。
また、女性側が男性側に言う言葉として認識している人もいるかもしれません。かつて、結婚することは男性側の家に入るという考えが主流だったことから、女性側の発言という印象が強くなったのかもしれません。しかし、実際には男女問わず使える語句です。
子どもや後輩を紹介
自分の子どもや後輩を紹介する場面で使われることも少なくありません。例えば、学校や習い事の先生に対して、「不束者の息子ですが、厳しくご指導いただければ幸いです」のように身内をへりくだるときに使えます。
後輩や部下を紹介する場面でも使えますが、中には不快に感じる人もいるかもしれません。使う相手との関係性や距離感を考慮して使うことが大切です。また、謙遜するときに使う言葉のため、取引先や目上の人には使わないようにしましょう。
相手から「不束者ですが」と挨拶されたときは、自分もへりくだった表現で返すのが基本です。「私の方こそ至らない点が多いかと思いますが」のように別の言い回しを使って返しましょう。
ビジネスで「不束者」を使うポイント
不束者は、ビジネスシーンでもよく使われる言葉です。使い方や例文を紹介するので、実際に使う際の参考にしましょう。
目上の人への挨拶で使う
不束者は、目上の人に挨拶をしたり、自己紹介をしたりするときに使います。例えば、目上の取引先の人に挨拶するときに、「この度、営業部に配属になりました〇〇です。不束者ですが、何卒よろしくお願いいたします」のように使います。
目上の人に教えを乞うなど、指導してもらう場面で使うのもおすすめです。人に何かを頼むときは、低姿勢の方が快く引き受けてくれるでしょう。「不束者ですが、ご教授いただけますと幸いです」とすると、礼儀正しい印象になります。
ビジネスメールで使える例文
ビジネスメールで使える例文をいくつか紹介します。さまざまなシーンで違和感なく使用できるので、状況に合わせてアレンジして使ってみましょう。
- プロジェクトリーダーを任されました〇〇です。プロジェクトの成功を目指して誠心誠意尽くさせていただきます。不束者ですが、どうぞご指導のほどよろしくお願いいたします
- 昨年は、大変お世話になりました。本年も期待に応えられるように尽力いたします。不束者ですが、引き続きご指導ご鞭撻のほどお願い申し上げます
- 不束者ですが、何かお役に立てることがあれば、いつでもお声掛けください
構成/編集部