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日本一小さな双発プロペラ旅客機、通称〝アイランダー〟に乗るために必要な「儀式」

2021.12.05

空港という場所はバスターミナルや駅よりも特別感が強いですよね。国内線に乗るにしても、チェックインとセキュリティチェックは欠かせないし、荷物が多ければ預ける手続きも必要です。

そして搭乗口に辿りつけば、巨大なジェット機が静かに乗客を待っている……。というのが相場なんですが、今回はちょっとだけ昔の、特別な旅客機のお話をしましょう。

沖縄の離島へ

それは2009年1月、東京から沖縄の粟国(あぐに)島に行った時のことです。

知らない方のために説明しますと、粟国島は沖縄本島(那覇市)の北西約60㎞にあり、ひとつの島全体が粟国村になっています。

当時の粟国村役場(現在は新庁舎建築中)

アクセスは船と飛行機が選べました。ただ、離島の多くがそうであるように、所要時間に大きな差が出ます。粟国島の場合、船なら那覇泊港から約2時間。飛行機だと那覇空港から約30分。

もちろん速く着く方が運賃も高いですが、時間の節約と那覇空港で乗り継げることが決め手となり、飛行機を選択したわけです。

那覇空港で再度の手続きが必要?

羽田から那覇への便は日本航空(JAL)を選びました。当時、那覇~粟国便は同グループの琉球エアコミューター(RAC)が運航していたため、羽田で手続きすれば粟国まで発券されると思っていたからです。

ところが、発券されたのは那覇まで。「粟国への便は、那覇で改めて乗り継ぎ手続きしてください」とのことで、まずは羽田から那覇まで約3時間。機材は国際線仕様のボーイング767-200だったので、クラスJを指定していた私を待っていたのは、ビジネスクラス(スカイラックス)の座席。3時間弱の長旅をゆったり楽しむことができました。

体重測定が必須

快適な飛行で定刻に那覇空港に到着。粟国行きの便はバスラウンジからの出発だったので、そちらに向かい搭乗口にいるスタッフに声をかけると、簡単な確認のあと、優しくこう言われたのです。

「お手数ですが、手荷物を持ったままこちらにお乗り下さい」

そこにあったのは体重計でした……。

何でそんなことするかといいますと、機材がブリテン・ノーマンBN-2、通称アイランダーという双発プロペラ機だったからです。

当時の搭乗券

これは日本一小さな旅客機と言われ、座席は操縦席を含め2×5列しかありません。つまり、機体バランスを保つため乗客全員の「手荷物込み体重」を確認する必要があり、搭乗直前までどの席になるかわかりません。

けれど、機長の隣の席、1Bに座れる可能性があることもわかります。

乗る順番も決められている

搭乗時刻になりました。カウンターで搭乗券見せると、乗客名簿と見比べ2Aにマジックで印が付けられました。小さなバスでゆっくりと空港内を移動して行きます。乗客は私を含め6名。

搭乗は順番があります。アイランダーは左に2か所、右に1か所のドアがあり、左前のドアは1列目専用。右のドアは2列目と3列目。左後ろは4列目と5列目用。2Aの私は右側に行くよう指示され、最初に3列目、次に2列目の客の順で乗り込みます。

座席はかなり窮屈です。先ほどまでビジネスクラスのシートだったので、なおさら格差を感じます。正直、ここまで乗ってきたバスの方が広かったかもしれません。

機長のお仕事を間近に拝見

2Aの座席は機長の真後ろです。目の前50cmくらいのところに機長の後頭部がある感じです。当然のことながらCAさんなどいません。

まぁ、居ても通路がないので、何もできないでしょうが……と思っていたら、おもむろに機長が振り向いて、「本日のご搭乗ありがとうございます」とご挨拶。私の目の前ですから、思わず、会釈しちゃいました。

しかも、挨拶が終わると「はい、コレ後ろに回してくださーい」とキャンディの入った籠を手渡されました。なんだか楽しくなってきます。

副操縦士はいませんから、離陸時のチェックリストも機長がひとりでやっています。滑走路に入るとブイイーンと加速し、ふわりと離陸。

1Bは空席だったので、アナログ計器がよく見えた

その後は高度1500フィート(約450m)、スピード110~120ノット(約200~220㎞/h)で巡行。風のせいでしょうか、時折木の葉のように揺れる感覚もありましたが、ほぼ安定した飛行で、実質15分くらいで粟国空港に到着です。

粟国空港に到着

機長が語るアイランダーの思い出

私が乗ったアイランダーの機体番号はJA5324でした。これはRACで2009年8月まで使用された後、第一航空に引き継がれ、2017年まで沖縄の離島を飛んでいました。

第一航空のアイランダー(JA5325)。こちらもRACから引き継がれた

ところで、操縦していた機長はアイランダーにどのような思い出があるのでしょう。第一航空の機長経験者に聞いてみました。

・乗客が隣の1Bに座った時の注意点は?
 計器や操縦装置などに触れないよう、切にお願いしていました。

・アイランダーの操縦は難しかった?
 操縦しやすく、癖も無く、安定した機体でした。

・アイランダーならではの懐かしい思い出は?
 島民のお客様とは、よく世間話などさせていただき、楽しく仕事をしていました。

最後の受け答えなどは、地元のタクシー的な感じでほんわかしますね。

なお、現在日本の空を飛んでいるアイランダーは、新日本航空がチャーター便で使用している1機のみとのことです。

後方から見た第一航空のアイランダー(八尾空港にて)

現在の機材

現在、那覇~粟国便は第一航空がバイキング社のDHC-6-400、通称ツインオッターで運航しています。こちらは乗客定員19名の双発プロペラ機で、アイランダー同様、短い滑走路でも離着陸可能な短距離離着陸機です。

客席から操縦席は垣間見えるものの、さすがに乗客が立ち入ることはできません。グラスコックピット化されているのも時代の流れを感じますね。

取材協力:琉球エアコミューター(日本航空)/第一航空

取材・文/西内義雄
医療・保健ジャーナリスト。専門は病気の予防などの保健分野。東京大学医療政策人材養成講座/東京大学公共政策大学院医療政策・教育ユニット、医療政策実践コミュニティ修了生。高知県観光特使。飛行機マニアでもある。JGC&SFC会員

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