モデルナは、新型コロナウイルスの変異株オミクロン(B.1.1.529)の出現を受け、懸念される変異株への新たな対応策を発表した。
モデルナ、新型コロナウイルスの変異株オミクロン(B.1.1.529)への対応を発表
オミクロン変異株には、感染力を高めるとされるデルタ株にみられる突然変異と、免疫回避を促進するとされるベータおよびデルタ株にみられる突然変異が含まれている。
この突然変異の組み合わせは、自然免疫およびワクチン誘発免疫の衰退を加速する重大リスクの可能性を示唆している。認可済ワクチンの追加接種は、低下した免疫力を高めるために現在とり得る唯一の対応策だ。
モデルナ新型コロナワクチン(mRNA-1273)は、50 µgの用量レベルで数多くの人々の追加接種免疫として認可されている。モデルナでは、オミクロン変異株に対する現在のワクチンの有効性を確認する試験を大至急実施しており、今後数週間以内にその結果が出る予定だ。
2021年初以来モデルナは、懸念される変異株の出現に先んじて対応するための包括的戦略を推進してきた。この戦略には、現在承認されている50 µgのモデルナ新型コロナワクチンの追加接種が、オミクロン変異株によって低下した免疫力を高めるには不十分であることが判明した場合を想定した次の3つのレベルの対応が含まれる。
第一に、モデルナではすでに、健康な成人を対象にモデルナ新型コロナワクチンの高用量ブースター(100 µg)の試験を実施しており、高用量ブースターの安全性と免疫原性の研究に参加した306人の被験者への投与を完了した。
この高用量ブースターは最近米国の国立衛生研究所(NIH)でも研究されており、総じてこれまでの新型コロナ株に対して最高の中和力価をもたらした。モデルナは、高用量接種を終えた人間の血清で迅速に中和検査を行い、100 µgの接種がオミクロンに対して優れた効果を示すか否かの検証を進めている。
第二に、モデルナは、オミクロン変異株にみられるような突然変異を予測するために設計された2つの多価ブースター候補をすでに臨床研究している。
最初の候補(mRNA-1273.211)には、ベータ変異株にみられたのと同じオミクロン変異株に存在するいくつかの変異が含まれている。
mRNA-1273.211の潜在的に極めて重要な安全性および免疫原性を研究する50 µg(N = 300)および100 µg(N = 584)の接種を完了した。
2番目の多価候補(mRNA-1273.213)には、ベータおよびデルタ株にも存在したオミクロン株が持つ変異の多くが含まれている。
モデルナは100µg(N = 584)の用量レベルで投与を完了し、約584人の参加者で50 µgの用量レベルも試験する予定だ。完了した進行中の多価ブースター研究から血清テストを迅速に増やし、これらの多価候補がオミクロンに対して優れた中和効果を示すかどうかを判断する。
第三に、モデルナはオミクロンに特化したブースター候補(mRNA-1273.529)の研究を加速。この候補は、重大な懸念のある変異株のサブセットに対して変異株特有のブースター候補研究を前進させるという会社の戦略の一部で、2021年中すでに、ベータ株およびデルタ株向けのブースターを開発した。
モデルナは、60~90日のうちに新しい候補の臨床試験を開始する能力を何度も証明してきた。
モデルナの最高経営責任者(CEO)であるステファン・バンセル(Stéphane Bancel)は次のように述べている。
「当初より、パンデミックを克服するにはウイルスの進化に積極的に取り組むことが不可欠であると述べてきました。オミクロン株の変異が懸念される中、この変異株に対処するための戦略を実行に移すために数日間可能な限り迅速に動いています。
並行して3つの防衛策を進めています。すでに、mRNA-1273の高用量ブースター(100 µg)の評価を終え、オミクロン株に出現したような変異を予防する2つの多価ブースター候補の臨床研究を進め、その結果は今後数週間内で出ます。また、オミクロン株向けブースター候補(mRNA-1273.529)の開発を急いでいます」
構成/ino.