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年齢の若い者が偉業を成し遂げたときに、誰しも一度は「弱冠〇歳での快挙」といった表現を見聞きしたことがあるだろう。弱冠は現在、年齢が若いことも意味するが、元々は「男子20歳」を指すということをご存じだろうか。
本記事では、弱冠の意味と由来、使い方、読み方が同じで間違われやすい若干との違いについて解説する。また、不惑や還暦など特定の年齢の別称も紹介するため、併せてチェックしてほしい。
弱冠とは?読み方や意味、語源をチェック
はじめに「弱冠(じゃっかん)」の意味を由来とともに解説する。また、同じ読みである「若干」との違いについても確認しよう。
古代中国の制度に由来する「男子20歳」の異称
弱冠とは、数え年で20歳の男子のこと、また成年に達することをいう。20歳の男子を弱冠と呼ぶようになったのは、古代中国の制度に由来し、儒教の経典の一つである『礼記(らいき)』曲礼上の一節には「二十曰弱。冠。(二十を弱と曰う。冠す。)」と記されている。二十(20歳)を弱と言い、元服して冠をかぶる歳であったことから、20歳の男子を指して弱冠と呼ぶようになったようだ。
これが転じて、20歳の男子の異称だけでなく、年が若いことも意味するようになる。なお、若い人を指すことから「若冠」という表記を目にすることがあるが、誤りのため正しい表記を覚えておこう。
若干との違い
弱冠と同じ読みである若干。はっきりとはしないもの、それほど多くはないある程度の数量や、わずかであること、ちょっとした分量を表す。若いという字が使われているため、弱冠と混同してしまうこともあるかもしれない。しかし、若干には年齢が若いという意味は含まれていないため、対象となるものが年齢なのか数量・程度なのかによって使い分けられる。
弱冠を使えるのは何歳まで?女性にも使える?
次に、「弱冠」の使い方について、適切な使用シーンや例文を確認しよう。
「弱冠」の正しい使い方は?
弱冠は男子20歳の異称であるものの、近年、女性に対しても使われることが増えた。しかし、本来の意味とは異なるため、女性に対して使うのは適切ではないという考えが根強い。
また「年が若い」の意味が広く解釈され、「年齢の若さに比べて、才能や能力が豊かで立派だ」という意味合いで使われることも多く、国語辞典によって10代後半から30代前半の用例を掲載している。マスコミ業界では、20歳前後(18歳~22歳ぐらい)から20代までという基準を設けているところもあるようだ。
20歳以外の若者に対して弱冠を使うことは誤用とは言い切れないものの、もし弱冠を使うことに抵抗がある場合や、使っても良いか判断が難しい場合には、「〇歳という若さ」と言い換えるのが良いだろう。
「弱冠」を使った例文
「弱冠」は、若い年齢で偉業を成し遂げたことを称賛する意味合いで使われるケースが多い。
【例文】
「その若手起業家は弱冠20歳で自らの会社を設立し、業界で注目を集めている」
「弱冠30歳で博士号を取得し、研究者としての道を歩み始めた」
「彼女は弱冠16歳でプロのピアニストとしてデビューし、世界中から称賛を浴びた」
弱冠の類語と特定の年齢の別称
弱冠と同じように若い人を指す言葉と特定の年齢の呼び方を紹介する。『論語』に由来する呼び方、賀寿という長寿を祝う日本特有の風習での呼び方をそれぞれ覚えよう。
弱冠の類語
弱冠と似た意味を持つ言葉は複数ある。そのうちの一つが「若年(じゃくねん)」で、年が若いことや若い人を指す言葉。中高年者から見て青壮年期にあたる人たちの呼び名でもあり、若年層や若年性〇〇などと使われる。
「弱齢/若齢(じゃくれい)」も年齢が若いことを意味する。若年の改まった表現とされ、話し言葉よりも書き言葉として用いられることが多い。人について若齢者と使われるほか、若齢地、若齢ラットなど人以外にも使われている。
『論語』為政第二
『論語』の中でも「子曰、吾十有五而志于學」で始まる章は、孔子が人生を振り返ったものとして広く知られている。
・志学(しがく):15歳「吾十有五にして学に志す(15歳で学問を志した)」
・而立(じりつ):30歳「三十にして立つ(30歳になると学問を確立し、独り立ちした)」
・不惑(ふわく):40歳「四十にして惑わず(40歳になると、迷うことがなくなった)」
・知命(ちめい):50歳「五十にして天命を知る(50歳になると、天命を理解した)」
・耳順(じじゅん):60歳「六十にして耳順う(反対意見でも素直に聞けるようになった)」
・従心(じゅうしん):70歳「七十にして心の欲する所に従って、矩を踰えず(心の思うままに行動しても、道理を外れるということはなくなった)」
賀寿(がじゅ)
賀寿とは長寿のお祝いのことで、奈良時代から行なわれてきた日本特有の風習だ。弱冠と同じく数え年で行なわれていたが、現在では満年齢で祝うことが多くなっている。
・還暦(かんれき):60歳。60年で生まれた干支に還るため。
・古稀(こき):70歳。中国の詩人・杜甫が詠った「人生七十古来稀なり」に由来する。
・喜寿(きじゅ):77歳。喜の草書体が「七十七」と読めるため。
・傘寿(さんじゅ):80歳。傘の略字「仐」が「八十」と読めるため。
・米寿(べいじゅ):88歳。米の字を分解すると「八十八」となるため。
・卒寿(そつじゅ):90歳。卒の通用字「卆」が「九十」と読めるため。
・白寿(はくじゅ):99歳。百から一を取ると「白」になるため。
また、2002年に日本百貨店協会は、新しい賀寿として「緑寿(ろくじゅ):65歳、数え年66歳」を提唱している。
文/oki