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好きが高じて京都に移住したマンガ家に聞いたディープな穴場観光スポット

2021.12.01

長びくコロナ禍に痛打された、京都の観光。

さすがに紅葉シーズンは、他県の訪客も増え、この調子で疫病退散・観光復活を願いたいところ。

ところで、これからの時期に京都の旅行先としてすすめたいのが、「穴場」。

歴史ある古都だけあって、実は面白い所がわんさとあるのだ。こうした所は、地元民は意外と知らず、旅慣れた外部の人に「発見」されることが多い。そんなシークレットスポットは、観光客で密にならず、京都リピーターでも気軽に楽しめることうけあい。

そこで今回は、旅行経験が豊富で、京都好きが高じて先般移住してきた漫画家のまえだなをこさんに、知られざる穴場を教えていただいた。

京都ネタの著書もあるまえださん

リーズナブルで質の高いホテル多し

― 京都に移転してくる前に、物件探しで泊まり歩いていましたね。何か「これは」と思う宿泊先はありましたか?

「バジェットな宿の中ではSAKURA TERRACE THE ATELIERがお気に入りです。個室はベッドと洗面所のみでトイレは共同ですが、大浴場があり、ラウンジが広くおしゃれで、自分で挽いた豆から珈琲を入れられたり、ハーブティーも揃ってます。余分を省いて、一点豪華主義っていう考えがLCC的で好きです。

すでに京都市内に部屋を借りて住んでますが、ここは銭湯付きの泊まれるコワーキングスペースとして利用したいかなと思います。作業して、疲れたら大浴場にダイブです。

あと、京都府は年末まで京都府民を対象にした『きょうと魅力再発見プロジェクト』でホテル等の割引をやっていますが、それを使って普段は泊らないちょっといいホテルに泊まったりしています。『HOTEL ARU KYOTO』は大正浪漫をテーマにしたホテルなので、気分はハイカラお嬢様です」

SAKURA TERRACE THE ATELIERのラウンジ

京都のホテルといえば、「高い、いつも予約でいっぱい」というイメージがあるが、実はそれは一面的な話。視点をちょっとずらせば、リーズナブルでクオリティも十分な宿はいくらでもあるようだ。

バラエティーに富む食文化が堪能できる

― 京都の食は、とかく敷居が高いイメージがありますが、一方でB級グルメも充実。そんな飲食にからんで、印象的なお店やメニューを教えてください。

「夜は高いお店でも、ランチはお得に食べられるので節約派にはうれしいです。品数も多く見が目に綺麗で、栄養バランスもいいおばんざい定食をよく食べます。料理が来ると、たくさんの小皿ひとつひとつの内容を説明してくれるので、そこまでが儀式なのかなと思ってます。

最近よく行くお店は、『季節の台所 空まめ』(毎日食べたい健康ごはん)、『京の惣菜 あだち』(ボリュームたっぷり満足)、『食堂・弁当・酒 エソラ』(この品数で880円とはお得)、『門前小僧』(550円で一汁四菜の定食は最安では)、『秀SHU食堂』(美味しい家庭料理)です。

それと、散歩が好きで、歩けばすぐ和菓子屋に当たるので、和菓子で散歩中の消費カロリーを補給しています。

特に今宮神社の門前で売られているあぶり餅は、白味噌が上品で甘じょっぱくて美味しい!

平安時代からあるので、紫式部がお忍びで掘建小屋に牛車で乗り付けてテイクアウトしてたかもしれないなと妄想しました。

あぶり餅をテイクアウトする紫式部(妄想)

よく飲食店では芸能人のサインが飾ってありますが、『栗餅所 澤屋(あわもちどころ さわや)』では、千利休のサインが、というかお礼の手紙が飾ってありました。教科書に出てきたような人物がカジュアルにちょいちょい出てくるので、京都に住んでるんだなって実感します。

京都は和菓子だけじゃなく、洋菓子もレベルが高いです。ポルトガル菓子の『Castella do Paulo(カステラ・ド・パウロ )』によく行きますが、ポルトガルの各修道院のお菓子のもつ物語が面白く、物語ごと食べている感じです。

私にとって京都は、異文化すぎてもはや異国ですが、さらに時を超えたり場所を超えたりしながら旅行をしているみたいです」

京都は民家も看板も面白い

― 京都といえば、文化的な側面で、今まで住まわれていた関東と違うところが多いと思います。穴場的な視点で何かお気づきの点などあれば。

「その辺の民家です。関東では塀があって庭があって、四角い家が並んでいるという新興住宅地エリアに住んでいましたが、京都は家がくっついていて塀も庭もない。

他人の家の二階の下を通って玄関たどり着くというアクロバティックな作りの家を見ると、土地の所有権はどうなってるのだろうと思いますが、元祖マンション的発想なのかなと。あと、昔は長屋だった家が切り離された断面を見ると、市井の人々の歴史の地層だなと感慨深いです。

増改築によってできた「地層」

それと、京都の景観条例で、他地域では原色の看板がシックな色になっているのですが、京都ローカライズされた看板を見つけるのは、町中が間違い探しのようで楽しいです。中でも気に入っているのは、出光の看板です。もともと由来はギリシャ神話の太陽神アポロの横顔ですが、元の赤よりむしろ、この茶色のほうが古代ギリシャ感がでているのではと思います」

出光の京都ローカライズ看板

「いけず」も重層的で奥が深い京都文法

― 数年前に『京都ぎらい』という本がベストセラーになりました。自分(鈴木)は京都に越してきて2年になりますが、これに書かれているような、京都人特有の嫌な面というのは見たことはありません。でも、ユニークな面はあるかもしれませんね。何か、「京都人はここが違う」みたいなエピソードがあるでしょうか。

「とある商店街の珈琲屋さんに行ったときの話です。

『京都人って、一言さんお断りとかいけずとか聞いてたんですが、むしろフレンドリーだなと思います』と珈琲屋さんに話しかけました。

すると珈琲屋さんはこう言いました。

『碁盤の住人らは、碁盤の目の中だけが京都で、それ以外は京都やないって思ってはります。私らは碁盤の目の外からきて、この店始めた時もえらいいじめられましたもん。ここの商店街は住んではる人も多いから、全部10時で閉店なんですけど、そないなこと知らんと10時過ぎまで焙煎しとったら、なんや音が響いてたようでして、次の日にお隣さんから『えらい遅うまでがんばってはりますなぁ』って言われ震えあがりましたわ。私も馴染もうって、こちらからよう気いつこうて商店街の中のいろんなもの買いに行きましたけど、いまだによそ者扱いですわ。最近、商店街で空き物件が出たときかて、友だちのおいしいパン屋さんに、『二号店出店したらどう?』って言いましたけど、碁盤の目の中は、怖くて無理やと言われましたわ」

と聞いて、「そうなんですか…京都人による京都人の印象を聞けて大変興味深かったです。あれ、お忙しいのにこんなに長いことおしゃべりさせてもらってお時間大丈夫ですか」と言ったとたん、スーーーと珈琲屋さんは奥に消えてしまわれた。

違うんです、今の京都文法じゃないのに…

…ということがありました。

私は通りかかりのお客さんとして楽しく過ごしてますが、奥に入り込んだらまた違うのかもしれません。

さらに、これに後日談があります。このエピソードを左京区の酒屋さんに京都語をネイティブチェックしてもらいました。

「いやいやいや、これが、いけずなんですわ! 洛中の人にこんな意地悪された~って言うこの珈琲屋さんがまさにいけずです!」

言われて初めて気付きました。まさか、いけずがそこまで重層的になってるとは…。まさにいけずさえも碁盤の目です。

私は、京都文法を理解していないうちは、言葉通りに受け取って火傷してしまいそうです。いえ、関東圏から来た私は、ストレートなコミニケーションで京都人を火だるまにしてしまいそうです…。いや、私は北区なので、out of碁盤の目。もはや京都民じゃないのかもしれません…。

でも、もしかしたら、京都文法は先祖代々住み継いでいて隣人もシャッフルされることがなく、家屋の物理的距離も近いので、ご近所トラブルを起こさないために生まれた賢い暮らしの知恵なのではとも思ってます」

ふつうの観光記事を読むだけでは、まずわからない京都の「裏」魅力。いかがだったろうか。今度京都に来られる際は、こうした別の視点で観光してみると、味わいある思い出になるだろう。

まえだなをこさん プロフィール

イラストレーター・漫画家として多方面で活躍するほか、Kindle版の電子書籍にも注力。著書に『完全版 世界で一番寒い街に行ってきた ベルホヤンスク旅行記』(講談社)があるほか、電子書籍として『旅のらくが記ヨーロッパ: ピカソ美術館めぐり』、『じわじわ京都: 名所に全くいかない旅』など10冊を超えるラインナップがある。現在、新たな京都紹介本を鋭意執筆中。
Amazonの著者ページはこちら
公式サイト:https://www.nawoko.com/
Twitter:@nawokoma

文/鈴木拓也(フリーライター兼ボードゲーム制作者)

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