住宅は人生でもっとも高価な買い物と言われ、長期のローンを組んで購入する人が大半だ。住宅ローンを利用して住宅を購入した場合、一定の条件を満たすことで「住宅ローン控除」が適用されることをご存じだろうか。
本記事では、住宅ローン控除の概要や控除を受けるための条件、申請方法についてわかりやすく解説する。同制度の今後の動向についてもぜひ参考にしてほしい。
住宅ローン控除とは
そもそも、住宅ローン控除とはどのような制度なのだろうか。はじめに、具体的な住宅ローン控除の概要と控除を受けるための条件、改正ポイントについて見ていこう。
住宅ローン控除の概要
「住宅ローン減税」とも呼ばれる住宅ローン控除の正式名称は、「住宅借入金等特別控除」。住宅ローンを利用してマイホームを新築・購入・増改築した場合、一定の条件を満たせば、年末時点での住宅ローン残高の1%相当(最大40万円/中古物件の場合は20万円)が、10年間にわたり所得税から控除される制度だ。住宅を購入する際の経済的負担を軽減する目的で実施されている。
所得税の額が住宅ローン控除額より少ない場合は、所得税から控除できなかった部分を住民税から控除する。ただし、住民税から控除できる額は1年ごとに上限があり、課税総所得金額の7.0%か13万6,500円のいずれか小さい方の金額となる。
住宅ローンには、夫婦や親子2人で借りられる「連帯債務型」や「ペアローン」もあり、2人とも条件を満たせば、住宅ローン控除をそれぞれ利用することも可能だ。
住宅ローン控除を受けるための条件
続いて、住宅ローン控除を受けるための主な条件を紹介する。
1.ローンの返済期間が10年以上
2. 取得した住宅の床面積が50㎡以上(床面積の半分以上を自らの居住用として使うこと)
3.その年の合計所得金額が3,000万円以下
4.住宅が引き渡されてから6か月以内に、住宅ローン控除を受ける本人が住む
増改築・リフォームの場合は、1~4に加えて工事費が100万円以上であることも必要だ。
住宅ローン控除の改正ポイント
住宅ローンの年末残高の1%が控除される期間は、消費税率引き上げ(2019年10月)に合わせて3年延長された。消費税率10%が適用される住宅を取得した場合、契約締結日(注文住宅は2021年9月末まで/分譲住宅・中古住宅は2021年11月まで)と居住開始日(2021年1月1日~2022年12月31日 )の条件を満たした場合は、控除期間が10年から13年に延びる。
また、住宅ローン控除を受けるには、取得する住宅の床面積が50㎡以上必要だが、合計所得金額が1,000万円以下の場合、2021年度は40㎡以上に緩和される。
住宅ローン控除申請方法
住宅ローン控除を受けるためには、いくつか手続きを踏む必要がある。ここからは、具体的な申請方法について見ていこう。
住宅ローン控除申請時期
住宅ローン控除を受けるには、入居した翌年に確定申告をしなければならない。給与所得者は、購入した住宅に入居した年の翌年1月4日~3月15日までの間、毎年確定申告を行っている人なら、2月16日~3月15日の一般申告時に併せて行う。申請に必要な書類も多いため、なるべく早い内から余裕をもって準備をしておこう。
先述の通り、給与所得者は2年目以降、確定申告をしなくても年末調整のみで住宅ローン控除を受けることが可能だ。個人事業主や年収が2,000万円以上の給与所得者など、年末調整の対象ではない場合には、確定申告が必要となる。
住宅ローン控除に必要な書類
確定申告の手続きには、以下の書類が必要となる。
・住宅取得資金に係る借入金の年末残高証明書:住宅ローンを借り入れた金融機関から郵送される
・確定申告書と住宅借入金等特別控除額の計算明細書:税務署へもらいにいくか、国税庁のHPからダウンロードする
・源泉徴収票(給与所得者の場合):勤務先からもらう
・土地、建物の登記事項証明書:最寄りの法務局出張所で取得する
・不動産売買契約書(住宅購入の場合)/工事請負契約書(リフォーム等をした場合)
・マイナンバーが記載されている書類
その他、認定長期優良住宅や一定の耐震基準を満たす中古マンション等を取得した場合は、それを証明する書類のコピーが必要。
具体的な手続き内容
必要書類が揃ったら、自身の住んでいる地域を管轄する税務署に持って行く。そこで「住宅借入金等特別控除額の計算明細書」を使って控除額を算出し、出た結果を「確定申告書」に記入する。2点の書類へ記入が済んだら、他の必要書類とともに税務署へ提出して完了。この手続きは、郵送やインターネットでも行えるため、自分に適した方法を選ぶと良いだろう。
知っておきたい豆知識
ここからは、住宅ローン控除に関する豆知識を紹介する。住宅ローン控除額の算出方法についても、ぜひチェックしてほしい。
住宅ローン控除額のシミュレーション
住宅ローン控除額は「住宅ローン年末残高×控除率1%」の計算式で算出可能。3,000万円を借り入れた場合は、30万円が控除可能額だ。控除期間が13年の場合は、11~13年目は別の計算方法となる。「各年末のローン残高×1%」と「建物の取得額(税抜)×2%÷3」のいずれか小さい方の金額が控除される。エクセルなどを利用すると控除可能額を確認しやすいだろう。
今後の住宅ローン控除について
住宅ローン控除は、現在見直しが行われており、控除率を現在の1%から0.7%に引き下げる案が出ている。兼ねてより、実際に負担する利息を住宅ローン控除額が上回る現象が起きているからだ。また、控除期間を15年に延長する案も検討中のようだ。例年通りならば、2022年度の住宅ローン控除内容は、2021年12月にも発表される見込み。
文/oki