「イクメン」という言葉が浸透し、男性が育児に積極参加することが推奨される昨今。実際のところ、将来的に育休を取得したいと考える男性はどの程度いるのだろうか?
そんな「男性育休」に関する意識調査がこのほど、パーソルキャリア株式会社により、20~59歳の学生以外の男性555名を対象にして実施された。
第2子誕生時のほうが、1カ月以上の育休取得を取得する人が多い傾向に
子どものいる、学生以外の20代~50代男性に、育休取得の有無を尋ねたところ、15.4%が「取得したことがある」、84.6%が「取得したことがない」と回答した。【グラフ①】
育休取得期間は、第1子誕生時は1週間以内が29.8%、2~3週間が27.9%、1カ月以上が42.2%であったのに対し、第2子誕生時は1週間以内が31.3%、2~3週間が15.8%、1カ月以上が52.8%だった。【グラフ②】第2子誕生時のほうが1カ月以上の育休取得が増えているのは、子どもを2人見ることの大変さや、第1子誕生時に十分な期間育休を取得できなかったことへの想いなどの表れではないだろうか。
20代前半までの若い世代のほうがそれ以降の世代と比べて、将来育休取得を希望する人が多い
将来子どもができた場合に育休を取得したいか聞いたところ、「取得したい」と回答したZ世代(20歳~24歳)は84.6%、ミレニアル世代(25歳~39歳)は80.1%、それ以上(40歳~59歳)は69.6%という結果になった。【グラフ③】
取得希望期間を尋ねたところ、Z世代は1週間以内が12.2%、2~3週間以内が24.2%、1カ月以上が63.6%。ミレニアル世代は1週間以内が9.0%、2~3週間以内が30.8%、1カ月以上が60.2%で、それ以上の世代は1週間以内が4.3%、2~3週間以内が21.4%、1カ月以上が74.3%だった。【グラフ④】
それ以上の世代で1カ月以上が最も多いのは、比較的長期の休みが取りやすい役職者である可能性が高いことや、周囲の子育て・育児経験からその大変さを痛感している可能性があると考えられる。一方で、どの世代も半数以上が1カ月以上と回答しており、これからは男性が1カ月以上育休を取得することができる社会の実現が求められていると想定される。
男性が育児休暇を取得するという考えがまだ根付いていなく、体制も整い切れていない
子どものいる学生以外の20代~50代男性に、育休を取得してよかったことを尋ねたところ、1位は「育児をできた/分担できた」(39.5%)、2位は「家事をできた/分担できた」(37.9%)、3位は「子どもへの愛情が深まった」(31.8%)だった。【表①】
一方で、取得してよくなかったこと、困ったことで最も多く挙がったのは「収入が減った」(25.8%)、次いで「上司/部下/同僚など、勤務先に迷惑をかけた」(20.2%)、そして「休暇取得前の業務の引き継ぎが大変だった」(18.9%)だった。【表②】
子どものいる学生以外の20代~50代男性で育休を取得しなかった人にその理由を尋ねたところ、最も多かった回答は「男性が育児休暇を取得するという考えがなかった」(26.1%)、次いで「当時は男性の育児休業制度がなかった」(23.8%)、「当時の業務状況では休暇取得が難しかった」(20.0%)という結果になった。【表③】
男性育休の義務化を求める人は約4割
学生以外の20代~50代の男性に、男性の育児休業制度に対する気持ちを尋ねたところ、42.6%が義務化するべき、39.3%が義務化ではなく推奨とするべき、18.1%が義務化も推奨も必要はないと回答した。【グラフ⑤】
「義務化すべき」と回答した男性は半数以下であり、義務化が推奨を若干上回っている。これは男性が、「育休は取りにくい。だから義務化すべき」と感じている心理を写し出しているのではないだろうか。法律の改正と会社の制度整備をベースに、子どもができたら男性が育休を取るのは当たり前という環境作りが求められていると想定される。
■解説
「仕事か家庭か」の二者択一だった時代を経て、昨今では「仕事も家庭を含むプライベートも」大切にしたいという人々の想いがより一層強くなってきています。新型コロナウイルスという世界的パンデミックの勃発により、仕事とプライベートのボーダレス化を経験し、その想いはさらに強まったのではないでしょうか。
こうした時代の流れ、そして変化を受けてか、「男性が育児休暇を取得するという考えがなかった」とこれまでは取得する人が限られていた、取得しても数日が圧倒的に多かった男性育休において、若い世代の男性、特にZ世代とミレニアル世代は、80%以上が将来の育休取得を希望していることが本調査で分かりました。さらに、Z世代、ミレニアル世代、それ以上の全世代において、60%以上が将来1カ月以上の育休取得を希望していることも明らかになりました。これからの日本の社会を担う若い層の男性は、まとまった期間育休取得できる社会を望んでいるのです。
来る2022年4月の育児・介護休業法の改正は、男性育休取得推進にむけた第1歩に過ぎません。誰もが当たり前に育休を取得できる環境の整備、そして性別、役職に関係なく働く人々の意識改革に企業が中心となり、社会全体で取り組んでいく必要があります。子どもができたら性別に関係なく当たり前に育休を取得する。そんな社会が実現できたあかつきには、育児や家事の経験から得た新たな発見や気づき、視点が、日本の社会にも新しいイノベーションを巻き起こすのではないでしょうか。
■解説者プロフィール
パーソルキャリア株式会社 執行役員・転職メディア事業部 事業部長 喜多 恭子(きだ きょうこ)氏
派遣・アウトソーシング事業で、法人営業として企業の採用支援、人事コンサルティング等を経験した後、人材紹介事業へ。
2019年10月、執行役員・転職メディア事業部事業部長に就任。2020年6月、doda編集長就任。さまざまな事業を通じて、多種多様な“はたらく”や転職活動に悩む人々、社員と接する。2021年9月、パーソルグループのジェンダーダイバーシティ委員長に就任。社外・社内の “はたらく”に悩む人にとって、安心して頼れる存在として、多様な人々が自分らしいはたらき方を実現できる世の中を目指す。
<調査概要>
調査期間:2021年10月9日~11日
調査対象:20~59歳 学生以外の男性 555名
調査方法:インターネットによるアンケート回答方式
*2020年労働力調査結果に基づき、ウェイトバック集計を実施
出典元:パーソルキャリア株式会社
https://www.persol-career.co.jp/
構成/こじへい