
冬至の代表的な行事『柚子風呂』には、縁起担ぎや言葉遊びの意味があります。また、柚子特有の香りや成分によって健康促進や美肌効果も期待できるでしょう。冬至に柚子風呂に入る意味・期待できる効果・柚子風呂の入り方・注意点を詳しく解説します。
冬至に柚子をお風呂に入れるのはなぜ?
鮮やかな柚子の黄色が目を楽しませる『柚子風呂』は、日本では冬の伝統行事として長く親しまれています。幼いころ、浮かべた柚子をつかんでは香りを楽しんだ経験がある人も多いのではないでしょうか。
冬至に行う柚子風呂ですが、そもそも冬至とはいつなのでしょうか。柚子風呂に入る理由も併せて理解することで、年に一度の行事をより楽しむことができるはずです。
冬至とはいつ?
冬至とは、中国の暦である『二十四節気』の一つです。二十四節気とは、一年を春・夏・秋・冬の4つの季節に分け、さらにそれぞれを6つに分けて考えます。例えば、4つに分けたうちの『冬』は、さらに『立冬』『小雪』『大雪』『冬至』『小寒』『大寒』と分けられます。
『冬至』は冬を6つに分けたうちの一つであり、旧暦では11月中、新暦では12月22日ごろを指します。年に一度のこの日は、一年の中で最も太陽の出ている時間が短い日、つまり一年の中で一番夜が長い日です。
この時期、北半球に当たる日本は夜が最も長くなりますが、南半球ではその逆となり、一年の中で最も昼の時間が長くなります。これは、地球が約23.4度傾いた状態で太陽の周りを回っている(公転している)ためです。冬至に当たる冬は地球の傾きが太陽とは逆方向に向いているため、日照時間が短く寒さが厳しくなります。
なぜ冬至には柚子風呂なのか
柚子風呂の始まりは、銭湯の文化ができあがった江戸時代までさかのぼります。一年の中で一番昼の時間が短く夜が長い冬至は、江戸時代の日本では『危険な日』として認識されていました。厄払いするための禊(みそぎ)として、この時期に旬を迎える柚子を湯船に浮かべ、人々は運を呼び込もうと考えたのです。
一年の中で最も昼の時間が短いということは、翌日からは徐々に日が長く強くなっていくことを意味します。そのため冬至は『太陽が生まれ変わる日』ともいわれました。
また、『融通(ゆうずう)が利く』『湯治(とうじ)』との語呂合わせの意味もあるといわれています。
柚子は実をつけるまでに長い歳月がかかります。冬至に入る柚子風呂には、「長年にわたる苦労が実りますように」という人々の願いが込められているのです。
柚子風呂で期待できる効果

(出典) photo-ac.com
古来の人々の願いが込められた柚子風呂ですが、健康や美容的観点からもさまざまな効果が期待できます。
年に一度の柚子風呂で、体も気持ちもリフレッシュしてみましょう。
リラックス効果
柚子特有の爽やかでやさしい柑橘系の香りは、さまざまな場面で活用されています。ハンドクリームやアロマオイルなど、柚子の香りを好んで選ぶという人も多いのではないでしょうか。
柚子に含まれる香り成分には、気分をすっきりさせストレスを和らげる効果があるといわれています。気持ちが落ち着くことで体の機能調節も期待できるため、心と体を整えたい人におすすめです。
何かとストレスのたまりやすい生活の中、知らず知らずのうちに心や体のバランスが乱れてしまうこともあるでしょう。湯船に浸かることで感じられる解放感や心地良さは、心身をリラックスさせてくれます。柚子を浮かべることでいつものお風呂も華々しくなり、香りだけでなく見た目にも楽しむことができます。
血行を促進して体を温める
柚子に含まれる成分は、血行を促進し体を温める効果も期待できます。
血液は、生命維持に欠かせない酸素や栄養素を全身に運搬するほか、体温を調整する役割も担っています。血流が悪いと毛細血管が縮み、血液の流れも滞ってしまうのです。血行を促進することで毛細血管が広がり、血液は末端まで流れやすくなります。その結果冷えを解消し、体を温める効果が期待できるのです。
冬至の時期は気温も下がり体も冷えやすくなります。柚子風呂に入り、ゆっくりと体を温めてあげましょう。また、血行が悪くなることで起こる、しもやけの改善にも効果が期待できます。
美肌効果にも期待が
柚子の果皮や果汁には、多くの栄養素が含まれています。その一つがビタミンCです。ビタミンCは肌の水分量を調整し、乾燥を予防する効果があるといわれています。
また、柚子の皮には紫外線からのダメージを軽減させるヘスペリジンが含まれているため、肌を刺激から守る・ハリの低下を防ぐなどの効果も期待できるでしょう。
柚子の種にはペクチン、皮にはリモネンが含まれています。ペクチンやリモネンは、保湿力を高め肌をしっとりさせる効果があるといわれている成分です。冬至の時期は、乾燥で肌も荒れやすい人が多いでしょう。伝統的な行事である柚子風呂は、女性にとってうれしい要素が詰まっているのです。
柚子風呂のやり方は?

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柚子風呂は多くの効能があります。そのため、正しい方法で入浴することが大切です。
基本は柚子をそのままお風呂に
基本的な柚子風呂の楽しみ方は、柚子を丸ごと湯船に浮かべる方法です。手間がかからないだけでなく見た目にも華々しいため、視覚的にも楽しむことができます。刺激成分が外に出にくいため、敏感肌の人にもおすすめです。
柚子を好みの数(目安として3~5個)用意し、香りを高めるため、ようじで数カ所皮を刺し穴を開けます。皮を削いだり、切れ込みを入れたりしても良いでしょう。そうすることで、香りだけでなく柚子の成分も出やすくなります。湯船に浮かべる前に熱湯をかけ、数分間蒸らしても良いでしょう。
以上の方法は柚子風呂の効能を高める一方、敏感肌の人には刺激が強い場合もあります。入る人に合わせて、皮の削ぎ具合・切れ込みの入れ具合などを調整しましょう。
柚子を切ったり搾ったりしても
柚子の成分をより生かしたいという場合は、柚子を半分に切ったり輪切りにしたりしてみましょう。切ることで成分が出やすくなり、少ない量でも香りが広がります。
柚子は種が多いため、必ず取り除いてから湯船に入れましょう。そのまま入れると種が浮かんでしまい掃除も大変です。切ると果肉も崩れやすくなるため、ガーゼ袋や水切りネットなどに入れてから搾ったり浮かべたりすると良いでしょう。
柚子自体は見えにくくなってしまいますが、お風呂上がりに袋を取り出せば良いだけなので後始末も簡単です。排水溝を詰まらせる心配もなくなります。
10~15分浸かるのがおすすめ
見た目も楽しい柚子風呂は、つい長湯してしまいがちです。しかしあまりに長く浸かってしまうと、もともと持っている保湿成分が流れ出てしまい、乾燥肌の原因になってしまいます。
お湯の温度は38~40℃のぬるめに設定し、10~15分ほど浸かるのがおすすめです。ぬるめの温度により、リラックス効果を高めることができます。また、10分浸かりシャワーで体を洗い流してから再び5分浸かる反復浴も良いでしょう。体に付いた柚子の成分を一度洗い流すことで、刺激を抑えることができます。
柚子には体の汚れを落とすピーリング効果も期待できるといわれています。体を洗う前に湯船に浸かることで、肌にかかる負担を軽減することができるでしょう。
柚子風呂の注意点

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体に負担をかけず柚子風呂を楽しむためには注意点もあります。入浴方法を守って楽しみましょう。
刺激を感じたらすぐに上がる
柚子を多めに入れれば入れるほど、香りは強くなり浴槽内の成分も増えます。そのため何個も浮かべたり、果汁を搾り過ぎたりしてしまう人も少なくありません。
柚子にはさまざまな効果がありますが、やり過ぎてしまうと肌が受ける刺激も強くなり逆効果です。入浴中に刺激を感じた場合は、我慢せずすぐに湯船から上がりましょう。炎症を起こす恐れもあるため、シャワーでしっかりと体を洗い流してください。
敏感肌・乾燥肌・肌の弱い子どもはとくに注意が必要です。はじめは1~2個だけ浮かべるなど、柚子の数にも気を付けましょう。皮に切れ目を入れると成分は出やすくなりますが、その分刺激を強く感じる場合もあります。切れ目の数を少なくするなどの工夫をしながら楽しみましょう。
朝に入るのは避ける
柑橘系の精油には、日焼けを招きやすい特徴があるといわれています。そのため、柚子風呂に入ったあとに紫外線を浴びると、シミや炎症などを引き起こす原因になってしまうこともあるのです。肌トラブルを避けるため、柚子風呂は夜に入りましょう。
シミやシワの原因になってしまう可能性もあるため、何らかの事情により朝に入った場合は、すぐに太陽の光に当たるのは避けた方が良いでしょう。肌に良いとされる成分も、摂り過ぎたり使い方を間違えたりすると逆に負荷がかかってしまうため、過度な量の使用は避けましょう。
柚子風呂は年に一度の伝統的な日本の行事です。古来の人々に思いをはせながら、柚子風呂で心地良い時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。