コロナ禍で変化した生活様式で、動画配信サービスから多数のヒット作が出るなど「おうちエンタメ」は大きな注目を集めた。そんな中でテレビの見逃し番組をスマホやパソコンでも楽しめる『TVer』が人気を集め、テレビ局民放各社が放送とネットの同時配信をスタートするなど大きな動きを見せている。
これまでパソコンやスマホ向けにテレビチューナーを発売してきたデジタル機器メーカーのピクセラは、オンライン発表会を開催して、業界初となるテレビ番組のクラウド録画に対応したワイヤレステレビチューナー『Xit AirBox』を12月3日より発売することを発表。さらに次世代型テレビチューナー『Xit Base』を応援購入サイト「Makuake(マクアケ)」で注文受付することも合わせて発表した。
オンライン発表会に登壇した4名。右からFlextech/末木悠登さん、ピクセラ/藤岡毅さん、popIn/程涛さん、ピクセラ/杉浦方紀さん。
テレビ番組をクラウドストレージに録画、外出先でも自由に視聴
ピクセラは2012年に同社初のワイヤレステレビチューナーを発売し、2014年には自宅だけでなく海外を含む外出先などインターネットができる場所ならテレビが楽しめる製品を発売。約10年を経て『Xit AirBox』と『Xit Base』はクラウドサービスと連携することで、これまで以上に気軽にテレビ番組を楽しむことができるようになる。『Xit Air Box』は「いつでもどこでもテレビをワイヤレスで」をキーワードに開発され、テレビ視聴だけでなく外付けハードディスクを用意しなくてもテレビ番組をクラウドストレージに録画可能だ。『Xit Base』は次世代のテレビチューナーとして開発され、モニターに接続するだけでテレビやコンテンツなどのさまざまなニーズに応えることができる製品。ともに地上デジタル放送、BS、110度CSに対応し、各種デバイスで自宅やネットワークがつながる外出先なら放送中の番組や録画番組を自由に視聴でき、録画番組の再生位置を本体が記憶するのでデバイスをまたいで番組視聴の続きを見ることもできる。録画先としてクラウドストレージ以外にもUSB接続の外付けハードディスクにも対応し、最大8TBまで接続・認識可能だ。
今回の発表会で発売元のピクセラ/代表取締役副社長の藤岡毅さんは次のように語った。
「プロジェクトの立ち上げから約2年かかり、ようやくお披露目できました。立ち上げ当時にプロジェクトチームに課したミッションは2つです。ピクセラのこれからの基礎になるような製品になること。今後のピクセラのホームAV事業を支える技術を詰め込んだ製品を作ること。その2点から『Xit Base』と名付けました。ピクセラらしいチャレンジングな製品開発を行ない、業界初の新機能を実装しました。それがテレビ録画データのクラウドへの保存です。これまで著作権保護への配慮とクラウドストレージのコストという2つの大きなハードルがありました。音楽や写真をクラウドに保存できる時代に、クラウドストレージに録画番組を保存することは簡単なことに感じるかも知れませんが、テレビの録画データは音楽や写真と比較にならないほど大きいです。それを何百時間も保存するためのストレージを用意するには莫大なコストがかかってしまいます。高コストになればユーザーに払っていただく料金も高くなってしまう。それは気軽に使ってもらうためのテレビチューナーとしてふさわしくありません。今回は革新的な価値に共感してくださったFlextech(フレックステック)さんのお知恵とお力をお借りすることでコストの壁を乗り越えることができました」
『Xit AirBox』と『Xit Base』の本体。コンパクトかつシンプルなデザインなので、部屋に置いても邪魔になりにくいのも特徴。ピクセラ/ソフトウェア開発部門技術長の杉浦方紀さんは、オンライン発表会で『Xit Base』について次のように説明した。
「働き方、家族の在り方、SNSの普及、動画サイトの拡充により、人々とテレビの関わり方は大きく変わりつつあります。「テレビは持たないけど、年末年始や災害時などにリアルタイムでテレビ視聴したい時がある」、「自宅内外でテレビが見たい」、「録画番組も動画のように好きなシーンだけチェックしたい」、「たくさん録画したいけどハードディスクの買い足しや整理は面倒くさい」。『Xit Base』は、そんないろいろな声に応えてテレビ番組を存分に楽しむための新時代のテレビチューナーとして誕生しました。地デジ、BS、110度CSのチューナーを3機搭載して、同時に2番組を録画しながら別の番組を視聴できます。接続したテレビの大画面で楽しめるだけでなく、さまざまな機器に対応しており、自宅に設置してWi-Fiなどインターネットがつながる場所なら放送中の番組や録画番組を自由に楽しめます。3番組以上を同時録画したい人は『Xit AirBox』を追加するだけで、予約時間が重なっても自動的に振り分けて同時録画できます。『Xit AirBox』を6台追加すれば最大8番組が同時録画可能になり、煩雑になりがちな録画番組の管理はすべて『Xit Base』で一元管理できて番組も探しやすいです」
テレビ視聴を手軽に利用するためのアプリ『Xit wireless』も直感的な操作感覚で使いやすい。番組選択画面では放送中の番組をサムネイルで表示し、視聴ランキングで視聴者数の多い話題の番組がチェックできる。スマホやタブレットでは、テレビの視聴画面と同時にWebブラウザも表示できるので、テレビ番組を視聴しながらインターネットも楽しめる。
クラウド録画に関しては2種類のクラウドサービスを利用できるが、個人向けのクラウドストレージや企業とコラボレーションしてソリューションを提供しているFlextechと提携することでコストパフォーマンスの高いサービスとして実現。Flextech代表取締役社長の末木悠登さんもイベントに登壇した。
「当社で実施したアンケートでは、回答した人の8割以上がスマホの容量が足りずに困った経験があります。『TeraBox』は無料で1TBの容量を提供し、ストリーミング再生で記録した動画をいつでもさまざまなデバイスで見返すことができ、シェア機能で簡単に共有することもできます。他にもさまざまな機能がありますが、安全面も重要なポイントだと考えております。お預かりしたデータは日本国内のデータセンターで厳重に保管し、セキュリティ面でも安心して利用できます。今回の提携で行なうクラウド録画は業界初のサービスです。『PIXELA CLOUD』や『TeraBox』に保存することでテレビに限らず、さまざまなデバイスでどこでも視聴することが可能になります。その過程で『TeraBox』単体としても使いやすいサービスにしていきます」(末木さん)
クラウドサービスを利用するためのサービスとプランの一覧
*『PIXELA CLOUD』と『TeraBox』のサービス間で録画データの引継はできません。
『TeraBox』ページ
オンライン発表会の最後には、popIn代表取締役の程涛さんとピクセラの藤岡さんの対談も行なわれた。popInは、東大発のベンチャー企業で、天井に設置するシーリングライトにプロジェクターを内蔵して、さまざまなコンテンツを大画面で楽しめる『popIn Aladdin』を発売。『Xit AirBox』も『popIn Aladdin』に対応している。現在のテレビ番組を取り巻く環境については二人ともポジティブな印象を語った。
「テレビ離れというよりもテレビの状況は拡大していると思います。昨今のコロナ禍の変化でおうち時間が増えたことにより、テレビへの関心はかなり高まりました。それに伴ってテレビをどこでも自由に見たいという需要は高まったと感じています」(藤岡さん)
「popInのデータでいうとピクセラさんの『Xit AirBox』は、購入者の50パーセントが利用していて、全体の20パーセントが毎日使っています。とてもテレビの需要が高いのかなと思います。製品は売り切れている状況が半年ぐらい続いていて、入荷待ちの予約者が1500人ぐらい登録しています」(程さん)
『TVer』での見逃し配信や民放の放送とネット同時配信も始まって、こういった動きも追い風になっている。
「このことは非常に大きいと思います。いままでテレビ番組はテレビで見るものでデバイスが限定されていたと思います。視聴者数や視聴者層の視聴スタイルが大きく変わるので、テレビとネットのいいところ取りをしたコンテンツが出てくるのではないかなと今から楽しみにしています」(藤岡さん)。
「テレビという物理的なものが『TVer』によってスマホで閲覧できるようになれば習慣化しやすくなるんじゃないかな。テレビ離れではなく、よりテレビに近づく行為が一般的に生まれてくるのでは。私も普段は忙しくてテレビを見る時間が少ないけど、より見られるようになるんじゃないかな」(程さん)
「テレビの楽しみ方を大きく拡張できることが『Xit AirBox』と『Xit Base』の一番の魅力なので、自分の好きなタイミングで好きな場所で好きな人と思う存分テレビを楽しんでもらいたい。今後もソフトとハードの開発力でユーザーがあっと驚くエンタメが作れればと考えています。コンテンツが多様化して視聴スタイルも多様化している。最先端のテクノロジーを用いてユーザーとコンテンツをシームレスにつないで、それぞれのコンテンツにあった最適な視聴体験をユーザーに提供することを目指していきたいです」(藤岡さん)。
テレビ番組をクラウド録画すれば、今まで以上に手軽かつ自由にさまざまなデバイスで視聴できる。動画配信サービスでは期間限定の配信や著作権の問題で完全に番組を配信できていないなど不自由な面もある。そういったことも『Xit AirBox』や『Xit Base』なら対応可能だ。クラウドなら録画番組のデータ量に対する敷居も低くなり、海外を含む外出先からスマホなどで簡単に視聴・録画できるデバイスならではの新しい視聴体験になりそうだ。
『Xit AirBox(XIT-AIR120CW)』
2021年8月に販売した『XIT-AIR110W』の後継機で、地上デジタル、BS、110度CSデジタル放送に対応したチューナーを搭載し、クラウド録画に対応したワイヤレステレビチューナー。自宅の無線LANルーターなどのインターネット環境に接続すれば、家庭内の無線LANがつながる場所でテレビ番組が視聴できる。クラウド録画に対応しているので、ハードディスクがなくてもテレビ番組を録画可能で、USB接続のハードディスクをつなげばハードディスクレコーダーとしても使える。無線LANや4G/LTE、5Gなどのネットワーク環境があれば、外出先から視聴、録画、再生、番組予約が可能だ。対応機種は、Windows、Mac、Android、iPhone/iPad、Fireタブレット、『popIn Aladdin(ポップイン アラジン)』。
価格はオープン価格でメーカー希望小売価格は1万8800円(税込み)。
サイズ:約35㎜×115㎜×123㎜(突起部除く)、重量約190g。
チューナーは視聴専用×1と録画用×1を搭載し、対応ハードディスク容量は最大8TB。インターフェイスはアンテナ入力(F型コネクタ)×1、有線LAN(10BASE-T/100BASE-TX)×1、電源(DC入力)×1、USB-TypeA×1。
『Xit Base(XIT-BAS1000T-MK)』
液晶テレビなどのモニターにHDMIケーブルで接続し、レコーダーとして利用するだけでなく、業界初となるクラウド録画に対応した次世代テレビチューナー。外付けハードディスクがなくてもテレビ番組をクラウドストレージに録画可能。地上デジタル放送、BS、110度CSデジタル放送のチューナーを3基搭載し、 お好みのテレビ番組を同時に2番組録画しながら別の番組をみることができる。外付けハードディスクは最大8TBまで対応。無線LANや4G/LTE、5Gなどのネットワーク環境があれば、好きな番組を好きな時間に自宅内や海外を含めた外出先からリモートで番組視聴、録画、番組再生、番組予約が可能。専用アプリの『Riremo(リレモ)』を使えば、スマホで撮影した写真や動画などをアップロードして管理でき、テレビの大画面で見たり離れた場所にいる家族や友人とシェアできる。スマホを使ったライブ配信にも対応し、運動会などのイベントをスマホから『Xit Base』でライブ中継が可能だ。
対応機種はWindows、Mac、Android、iPhone/iPad、Fireタブレット。
価格はオープン価格でメーカー希望小売価格は2万9800円(税込み)。
サイズは縦置き時は約74㎜×160㎜×178㎜、横置き時は約170㎜×160㎜×48㎜(突起物除く)、重量約420g。
インターフェイスはアンテナ入力×2(地上デジタル×1、BS・デジタル×1)、有線LAN×1(10BASE-T/100BASE-TX/1000BASE-T)、電源×1(DC入力)、USB2.0×1(Type A)、HDMI出力×1。無線は赤外線受信×1、Bluetooth4.2+LE、無線LAN IEEE02.11 a/b/g/n/ac。HDR対応(HDR-10、HLG)。
取材・文/久村竜二