コロナ禍で、おうち時間が増えたことにより、日本国内でもそうであるように、ゲームプレイやアニメ視聴が世界的に高まっているといわれる。日本のゲーム・アニメは世界的にも評価されているが、世界での人気はどのように変化したのだろうか。
海外における最近のゲームやゲーム関連製品の売上や、日本アニメの人気の傾向を探ってみた。
海外人気が分かる「Pokémon GO」5周年記念映像
世界的に人気の日本のゲームといえば、ポケットモンスターが筆頭に挙げられる。
米国ナイアンティック社と株式会社ポケモンによって共同開発され、2016年に発売されたスマートフォン向け位置情報ゲームアプリ「Pokémon GO(ポケモン・ゴー)」は、150以上の国と地域で展開され、世界的に爆発的にヒットした。現時点でのダウンロード数は10億を超えている。
コロナ禍でも変わらずプレイされていたが、自粛を余儀なくされたことで、プレイヤーに影響が出た。そこで、プレイヤーが外で歩き回るときの感染リスクを減らすために、「ポケストップ」や「ジム」にアクセスできる距離を、従来の半径40メートルから半径80メートルへと2倍に伸ばすなど対策が取られた。
今年で5周年を迎えたことを受け、記念映像として「Adventures Go on!」が、今年9月にYouTube上で公開された。そこでは世界中の人々がPokémon GOにどっぷりハマっている様子が分かる。
『Pokémon GO』5周年記念映像「Adventures Go on!」
動画では、富士山でモンスターの一つ「ミュウ」を捕まえる人や、ローマのコロッセオでバトルをする人、コミュニティを作り、みんなでこぞって屋外に飛び出す人々などが登場。「人とつながれたことで、自分の人生が変わった」というメッセージもあり、Pokémon GOの影響力の強さが分かる。
eBayに聞く!越境ECで世界で売れてるゲーム関連のモノ
日本のゲーム人気は、ポケモンだけに留まらない。ここ最近、日本のゲームはどのようなものが海外で受け入れられているのかを探るべく、日本から海外へEC出品できる越境ECの売上傾向を調べてみた。
今回は、世界的なオンライン・マーケットプレイスである「eBay(イーベイ)」日本セラーの「越境EC」を支援するイーベイ・ジャパン株式会社に聞いた。カテゴリーマネージメント部、部長の中里 力氏によると、ゲームに関連して、最も目立っているのが、ポケモンや「遊戯王」などのトレーディングカードの爆発的な売上増だそうだ。
「前年同期比で大きく成長したカテゴリーでも、2021年度第2四半期(4-6月)のトレーディングカードの売上は、3期連続で1位。+655%と高い水準で成長しています。これから発表する第3四半期(7-9月)では+237%と、また伸びました」(中里氏)
イーベイ・ジャパン株式会社 カテゴリーマネージメント部 部長 中里 力氏
2021年度第2四半期の日本からの「越境EC」取引に関するデータのうち、売れ筋商品のランキングでは、5月に発売されたポケモンカードの新商品「イーブイヒーローズ」が1位となった。
●2021年度第2四半期 売れ筋商品ランキング
中里氏は、トレーディングカードの人気の背景について次のように話す。
「トレーディングカードの人気の背景は、コレクターが非常に多いことがあります。購入目的は大きく二つに分かれ、一つが自分で遊ぶ人、もう一つが、投資目的で買う人です。ポケモンカードの中には、世界でも数枚しかないカードなどは、1枚3億円で出品されたものもあります。数万円から数千万円の価値が出てきており、もはや株買うように、トレーディングカードを買う投資目的の人が増えてきています。
アメリカでは、コロナ禍で給付金が出るなどして、プチ投資家に余裕が出たためか、トレーディングカードに投資する人が増えたと考えられています。日本の越境ECで買うのは、日本でしか手に入らない希少性のあるものを狙っているのだと思われます。
今年はポケモンが25周年で限定品などが出て、特に話題になっていますが、来年は『遊戯王』が原作25周年を迎えるので、来年もトレーディングカードが伸びるのではないでしょうか」(中里氏)
●ビデオゲームの人気動向
トレーディングカードを買う人は、ビデオゲームも買う傾向があるという。日本のビデオゲームの売れ行きは、コロナ禍でどう変化したのか。
「コロナ禍の影響によって自宅にいる時間が増えたことを背景に、ビデオゲームの取引は増えています。第3四半期の売上は前年比+55%成長していて、好調に伸びています」(中里氏)
世界では、日本のゲームはどんなものが人気なのだろうか?
「ebayでは、新品と中古品の販売がされていますが、現在、新品の中で人気なのが、遊戯王のNintendo Switchのゲームソフトで、トレーディングカードがついているものです。遊戯王はアメリカでは非常に人気で、よく売れています」(中里氏)
「中古では、ファミコンのレトロゲームが人気で、一点モノが売れています。例えばPlayStationのゲームソフト『NEOGEO メタルスラッグ』などは数十万円ほど、ファミコンのゲームソフト『パンチアウト!!』は10万円ほどで販売されており、これも売れています」(中里氏)
ビデオゲームソフトは、コロナ禍でさらに人気が出ているそうで、例えば、日本でも定番人気のファイナルファンタジー、スーパーマリオ、ポケモン、ゼルダの伝説、パックマン、どうぶつの森などは、アメリカに限らず売れているそうだ。
世界で人気の日本のアニメは?
日本のアニメも、世界的に人気を博している。直近の人気を知るべく、世界最大級の日本アニメ・マンガのコミュニティ&データベース「MyAnimeList」に聞いてみた。
MyAnimeListは、月間利用者数1,800万人、月間ページビュー数2億7,000万PV、世界240の国と地域のユーザーが利用するサイト(※数値は2021年4月時点)だ。海外の日本アニメファン御用達の貴重な情報源となっている。
現在のメインユーザー層は、米国を中心とした英語圏の20~30代の男性利用者。国別割合は、米国が30%くらいを占めており、その他はインドネシア、フィリピン、インド、イギリスなどが続く。
そのMyAnimeListで投票されている「生まれてから見たアニメの中で、一番好きな日本アニメ」のうち、ランキング5位までが次の結果である。
●Top Anime by Popularity(2021年10月31日時点)
第1位 Death Note(デスノート)
第2位 Shingeki no Kyojin(進撃の巨人)
第3位 Fullmetal Alchemist: Brotherhood(鋼の錬金術師)
第4位 Sword Art Online(ソードアート・オンライン)
第5位 One Punch Man(ワンパンマン)
出典:MyAnimeList「Top Anime by Popularity」
上位3位には、デスノート、進撃の巨人、鋼の錬金術師と、日本でも大ヒットしたアニメが並ぶ。4位には、つい先日、10月30日に公開された「劇場版 ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 星なき夜のアリア」が話題のソードアート・オンライン、5位には、Webサイト上で連載された漫画作品「ワンパンマン」がランクイン。おおむね、日本と変わらない名だたるアニメがそろうが、「なぜ今、これが人気なのか?」と不思議に思う作品もある。
そうした謎も含めて、運営元である株式会社MyAnimeListの管理部部長 樋口由美子氏にインタビューを行った。
コロナ禍でMyAnimeListのユーザーの動向はどのように変化したのだろうか。
「コロナ禍では、純粋にユーザーの母数が増えました。従来は、アニメが好きな人以外は、たまたま検索結果でMyAnimeListにたどり着いた人が訪れることが多かったようですが、自宅で過ごす時間が増え、ネットフリックスなどにあるアニメタイトルのクチコミを見るために、検索などで見つけて訪れる人が増えたようです。
日本にいると、アニメの情報はテレビやネットから自然と入ってきますが、海外では探しにいかないと日本のアニメの情報を得ることはできません。特にコロナ禍でネットフリックスやフルーなどの大手ストリーミングメディアがアニメカテゴリに力を入れ始め、カタログが増えてきたため、どのアニメが面白いのか、情報を得るためにアクセスが増えたのだと思います」(樋口氏)
先に紹介した「Top Anime by Popularity」のランキング結果に、動きはあったのだろうか?
「多少、入れ替わりましたが、大きな変化はありませんでした。いずれも、上位のアニメは、『いいアニメ』であると言えると思いますが、そういったアニメは世界中で国問わず、また、時期問わず、必ず評価されるのだなと感じています。しかし、国によって配信されるタイミングやタッチポイントが変わるので、その差によって、ヒットするまでの時間は違うのだと思います。
火がつくまでの初期の段階では、国ごとにタッチポイントの差が大きく関係していると思います。日本ではテレビもストリーミングメディアもありますが、海外では、ほとんどがストリーミングメディアでの視聴です。そのため、大手ストリーミングメディアで配信されているアニメはアクセスがしやすいため、火がつきやすいです。そうでなければ、それほど広がらず、クチコミなどでゆっくりと広がっていきです。また、原作の知名度が、その国でどのくらいあるかも関係してきます」(樋口氏)
アニメについては、コロナ禍で視聴が増えたことから、人気が高まっているのは間違いないようだ。また、ヒットするかどうかは、大手ストリーミングメディアで配信されているといったアクセスのしやすさが大きい。日本で評価されているような“いいアニメ”は、海外でも変わらず評価されるということが分かった。
コロナ禍で、世界的にさらに注目を集めている日本のゲーム&アニメ。今後も、日本の作品が世界に広がっていくのが楽しみだ。
【取材協力】
「Pokémon GO」公式サイト
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MyAnimeList
取材・文/石原亜香利