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後継者の不在率は中小企業で6割、特に高いのはIT関連

2021.11.21

東京商工リサーチ、2021年「後継者不在率」調査

東京商工リサーチが2021年「後継者不在率」を調査し公開した。

中小企業での後継者問題が深刻さを増しているが、2021年の「後継者不在率」は58.62%で前年(57.53%)より1.09ポイント上昇した。2020年から猛威を振るう新型コロナウイルスは、10月に入り急速に新規感染数が落ち着いた。

感染防止に向けた取り組みが定着するが、多くの企業はビジネスモデルや労務管理の改革を迫られている。コロナ関連支援で後継者問題は先送りされた格好だが、変化への対応に後れを取った企業は今後、事業継続の厳しい判断を迫られる可能性も高まっている。

代表者の年齢別で後継者不在率をみると、60代が39.2%(前年比1.1ポイント減)、70代が28.2%(同0.9ポイント減)、80歳以上が22.6%(同0.9ポイント減)だった。

60代では後継者がいない企業は約4割に達し、代表者が高齢の企業で後継者不在が多い実態が浮き彫りになった。後継者「有り」の企業でも、「同族継承」が66.7%を占め親族以外の承継が浸透していない。親族以外への承継の遅れが、後継者不在率を押し上げる一因にもなっている。
※ 本調査は、東京商工リサーチの企業データベース(約400万社)のうち、経営者と直接面談し、2019年以降の後継者に関する情報が蓄積されているデータから17万4,395社を抽出、分析した。「後継者不在率」は営業活動を行い、事業実態が確認できた企業のうち、後継者が決まっていない企業の割合を示す。

産業別 トップは情報通信業の76.8%

「後継者不在」を産業別でみると、10産業すべてで50.0%を上回った。不在率の最高は、情報通信業の76.8%(前年75.6%)だった。ソフトウェア開発などIT関連業種が含まれ、業歴が浅く代表者の年齢も比較的若いことが背景にある。また、サービス業他は63.7%(同63.3%)、小売業は61.1%(同60.7%)で、この3産業は不在率が6割を超えた。

一方、最低は農・林・漁・鉱業の50.0%(前年50.2%)。以下、製造業の52.1%(同50.7%)、運輸業54.6%(同53.7%)、金融・保険業54.8%(同53.5%)の順。

「同族継承」が約7割

後継者「有り」の7万2,169社では、息子、娘などの「同族継承」の予定が4万8,148社(構成比66.7%)と約7割を占めた。次いで、従業員へ承継する「内部昇進」が1万2,171社(同16.8%)、社外の人材に承継する「外部招聘」が1万1,465社(同15.8%)で、いずれも20%に届かなかった。

「後継者不在」企業 「検討中」が50.5%

後継者不在の10万2,226社に、中長期的な承継希望先を尋ねた。最多は、「未定・検討中」の5万1,721社(構成比50.5%)で、半数を占めた。事業承継の方針が明確でない、あるいは計画が立たない企業が多い実態を表している。

次いで「設立・交代して浅い、または若年者にて未定」の4万3,604社(同42.6%)だった。前年は39.3%で、3.3ポイント上昇した。

一方、「廃業・解散・整理(予定含む)にて不要」は646社(構成比0.6%)だった。

代表年齢 80歳以上の22.6%が後継者不在

代表者の年齢別では、不在率の最高は30歳未満の95.8%だった。創業や事業承継から日が浅く、後継者を選定する必要がなく不在率が高い。50代までは後継者「不在」が「有り」を上回るが、60代以降で逆転する。

80歳以上の不在率は22.6%にのぼる。一般に数年かかるとされる事業承継の準備期間を加味すると、対応を迫られている企業は多い。事業承継の遅れる要因の一つに、代表が高齢の企業ほど業績が低迷し、成長性も乏しいことが背景にある。税制支援と同時に、事業再構築への支援も必要性が高まっている。

業種別 不在率ワースト(高い)はIT関連

業種別(母数20以上)でみると、不在率の最高(ワースト)はインターネット附随サービス業の91.5%で、唯一9割を超えた。

上位10業種をみると、インターネット通販を含む無店舗小売業や通信業、情報サービス業などが並ぶ。代表者の年齢が比較的若いことが影響している。

無店舗小売業は前年76.4%で5位だったが、2021年は2位へ順位を上げた。不在率が低いのは、宗教の25.0%を筆頭に、協同組織金融業の28.9%、協同組合の31.7%、銀行業の34.9%、鉄道業の36.4%と続く。金融や社会インフラを担う業種が目立った。

都道府県別 地域によって大きな開き

後継者不在率の最高は、神奈川県の74.1%(前年73.6%)。続いて、東京都の71.1%(同69.8%)で、2都県が70%を超えた。企業が多く設立される大都市ほど、後継者の不在率が高く、新規起業の勢いが背景にある。最低は、長崎県の24.4%(同21.9%)だった。

2021年の「後継者不在率」は前年より1.09ポイント上昇し、58.6%となった。創業や事業承継から日が浅く、代表が比較的若い企業が不在率を押し上げた。その一方、コロナ禍の給付金、補助金、実質無利子・無担保融資などの支援策が判断を先送りさせた可能性もある。

ただ、後継者不在の代表者の年齢は、70代が28.2%、80歳以上は22.6%で、事業承継に差し掛かりながらも後継者が決まらない高齢経営者の企業が多い実態も浮き彫りにしている。

後継者「有り」の企業では「同族継承」が66.7%を占め、親族以外への承継が浸透しにくい環境がうかがえる。経営者として同族継承にこだわる心情は理解できるが、内部昇格でも社内文化や価値観を共有する後継者は組織として受け入れられやすい状況を考慮すべきだろう。

東京商工リサーチが2020年度(4月1日~3月31日)の官報公告などで破産会社の代表者を追跡調査したところ、代表者の68.2%が破産開始決定を受けていた。金融機関が経営者保証を求めることが、後継者不在率を高める要因の一つになっていないか検証が必要だ。

コロナ禍でビジネス環境が激変し、事業再構築を含むビジネスモデルの変革を迫られている。代表者が高齢で後継者が不在では、ポストコロナに向けた大胆な決断がしにくい。

金融機関も経営者保証などのハイリスクを避けるため、投資に必要な融資に慎重になりがちだ。コロナ禍の事業承継は、こうした過去の常識、商慣習の再考も迫っている。

関連情報:https://www.tsr-net.co.jp/

構成/DIME編集部

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