人気バンドのフロントマンとして活躍する傍ら、作家として芥川賞の候補に名を連ねるなど、多彩な才能を持つ尾崎氏。そんな彼が、ラジオにかける思いとは?
TOKYO FM/JFN『クリープハイプ 尾崎世界観 声にしがみついて』
毎週木曜日21:30〜21:55/他各局
尾崎世界観(愛称・代弁くん)が、リスナーの喜怒哀楽を代弁。自身がつけた番組タイトルには、「リスナーからのメッセージ(=声)と僕が話す声、お互いがお互いのそれにしがみついていけたら」という思いが込められる。
[リスナー層]20〜30代が中心
「声だけが頼りのメディアだからこそ、言葉のニュアンスを、音楽のように受け取ってほしい」
音楽にとどまらない表現をラジオでも──
尾崎世界観さん
1984年、東京生まれ。「クリープハイプ」のボーカル&ギターとして、2012年にメジャーシーンに。人気ロックバンドとして名を馳せる一方、2016年には初小説『祐介』で作家デビュー。最新小説『母影』は、第164回芥川賞の候補作に。ラジオMCとしても、J-WAVE、TBSラジオ、文化放送など、各局から引っ張りだこ。
──まずは、ご自身のラジオとの出会いから聞かせていただけますか?
尾崎 中学生の頃です。テレビの見すぎで成績が落ちてしまって、親に「もうテレビは見るな!」と怒られてから、ラジオならバレないだろうと思って聴き始めました。テレビよりも〝自分だけのもの〟という感じがして、「これは良い発見をした!」とうれしかったですね。
──ご自身の番組を持つようになった今、ラジオはどんな存在ですか?
尾崎 この番組では、「バックヤードタイム」という言葉を使っているのですが、何でも話し合えるアルバイト先の休憩室とスタジオが〝地続き〟になっているイメージです。それが心地よいんです。表舞台で活躍する人の裏側を共有できるのもラジオの楽しさだと思っていて、自分の番組でも、そんな〝バックヤード感〟が伝えられれば良いですね。
──バックヤードでの会話に聞き耳を立てているような?
尾崎 はい。聴いた人にしかわからないニュアンスや、声から伝わるものを自分で確かめてほしい。例えば、リスナーからのメールに、呆れながらも愛おしさを込めて「バカだなぁ」と言ったとして、声で受け取れば、そこに内包された気持ちが伝わりますよね? そんなふうに、言葉を音としても受け取ってほしいです。
──リスナーとのやりとりで大切にしていることは何でしょうか?
尾崎 まずはリスナーに頼ることですね。メッセージが来なければ番組が成立しないので、「あなたの声を聞かせてください」と素直にお願いします。SNSで気軽にメッセージを送ることができる時代に、わざわざラジオを通してそれを届けるって、ちょっと〝変な行為〟だし、だからこそ特別なことだと思うんです。いつも必ず収録の1時間以上前に入ってすべてのメッセージに目を通します。あと、なるべく音楽の話はしないようにしています。バンドを知らない人にも伝えたいので〝ファンだからわかる言語〟は使いたくないんです。
──ラジオは、音楽活動や執筆活動とは表現の仕方を切り分けているということでしょうか?
尾崎 自然と分かれてしまうという感じです。音楽だったらライブをすればお客さんの反応がダイレクトに返ってくるけれど、本はその真逆。ラジオは、受け手との距離感でいうと音楽に近い。でも、ラジオで話すことですべてがつながっていくという感覚もあります。苛立ちや後悔など、仕事で積み重なったマイナスを、ラジオで話すことでゼロに回復させるような……。ラジオでよく腹が立ったことを話していたら、ある時からリスナーが、全然関係ないメッセージの最後に「ところで尾崎さんは、最近腹が立ったことはありますか?」と、フリを仕込んでくれるようになって(笑)。だからある意味、共犯者ですね。その関係性もラジオならではでおもしろい。
──リスナーに対して、結構はっきり意見を言いますよね?
尾崎 安全な言葉ばかり並べても、つまらないと思っています。収録ものって、ちょっと〝死体感〟があると思っているんです。タイムラグもあるし、後追いもできるから、思わぬタイミングで意図していないところに届いてしまうこともある。今はその反応も楽しめるようになりましたね。リスナーに対しては、伝えたいことがあればあるほど、空回りで理想と離れて、「いなきゃもっとうまくしゃべれるのに。でも、いてくれなきゃ困る」、そんな矛盾を抱えながら話しています。それでも、音楽でも小説でも成し得ないこの表現方法が、僕には必要です。
「ラジオで話すことで、すべての表現方法がつながる」
最新アルバム『夜にしがみついて、朝で溶かして』は、2021年12月8日発売。http://creephyp.com
友達もできず、母親の働くマッサージ店の片隅で息を潜める少女。その視点で描かれるカーテン越しの世界とは……。芥川賞候補となった話題の『母影』(新潮社)。
●番組プロデューサーが話す〝ここがツボ!〟
尾崎世界観が〝代弁くん〟となって、あなたの想いを声でつなぎとめます!鬱憤を、叫びを、愚行を、恋話を、メッセージに託して送ってください。ラッキーな人には代弁くん声帯ステッカー(回覧禁止)が届くかも……!?
取材・文/坂本祥子
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