コロナ禍で、一気に導入が進んだ非接触の顔認証や虹彩認証システム。近年、その機能も進化している上に、勤怠用途の導入も進んでいる。
そこで今回は、勤怠用途にも使える顔認証システムや虹彩認証システムがどこまで進んでいるのか、3つのサービスから見ていこう。
AI顔認証システム「FaceMe」×「ジョブカン勤怠管理」
台湾発のAI と顔認証技術のパイオニア、サイバーリンク社が手がける顔認証SDKの一つである「FaceMe(フェイスミー)」が、日本のDONUTSが提供するクラウド勤怠管理システム「ジョブカン勤怠管理」とのサービス連携を先日発表した。
FaceMeをジョブカン勤怠管理に組み込み、iPad上で動作する顔認証対応の非接触出退勤管理ソリューションを提供。本格提供は、2022年1月を予定している。
これにより、非接触の認証方法である顔認証による勤怠管理が実現し、重要性が増すスマートオフィスの実現にもつなげる。
●FaceMeの特長
FaceMeは、0.2秒以下と高速な認識速度と、本人識別率 99.7%と高い認識精度を持ち、角度のついた顔でも認識する広い認識範囲を実現するリアルタイムAI顔認識エンジンだ。
・ウォークスルー認証
FaceMeの特長として、対象者が歩きながらでも認証が可能となる「ウォークスルー認証」を実現するところがある。
なぜウォークスルーで認証ができるのか。サイバーリンクのセールスデパートメント バイスプレジデント萩原英知氏は、次のように話す。
「顔を認証するにあたって対象者が歩いているということは、静止してカメラを向いて認証する一般的な認証と、下記2つの点で困難性が高いです」
1.カメラに対して正面を向いていないので、カメラに対して角度がついた顔を認証する必要がある
2.顔を検知できるのはカメラの撮影範囲を移動する数秒間しかないため、ストレスなくウォークスルー認証するためには高速で認証する必要がある。
「この点、FaceMeは、認証精度は当然のことながら、どれくらい顔が傾いていても認証できるかの『認証角度』、対象者を認識してから認証するまでの速度である『認証速度』において世界最高クラスの性能を持ちます。特に認証角度は他社よりも対応範囲が広く、ウォークスルー認証を可能にしております」
・iPadでも高速動作を実現
また、FaceMeは顔認証システムの導入に高額な専用端末を必要としない。産業用PCやワークステーションなどの高性能デバイスだけでなく、マシンスペックが高いとはいえない市販のタブレットやスマートフォン、組み込み向けIoTデバイス等でも、十分実用可能な性能を発揮するよう作られているからだ。
●勤怠管理×顔認証の可能性
FaceMeをジョブカン勤怠管理と連携させることにより、オフィスでの勤怠用途の利用が進むと思われる。勤怠におけるFaceMeのメリットや可能性について、萩原氏は次のように述べる。
「最も効果的なのは、非接触にて勤怠管理が行えることです。ICカードなどの場合は、紛失や忘れた際の対応が煩雑になり、その他の認証手段では接触が必要になるケースがあります。
また、従来の打刻方法では“なりすまし防止”を行うことが困難であり、正確に正しい管理を行う上で、顔認証は最も適しております。今回の連携においても、弊社FaceMeのなりすまし防止をサポートしております。
その他の便利な機能としては、別のソリューションになりますが、認証とともにドアロックが解除されるドアアクセスコントロールなども連動させることが可能です」
虹彩認証システム「イリアス」×「ICタイムリコーダー」
今年10月、クリテックジャパンの虹彩認証システム「イリアス」とオープントーンのクラウド型勤怠管理システム「ICタイムリコーダー」が連携し、合わせて同端末の提供をスタートした。
これにより、マスクをしたまま目の生体認証で出退勤や休憩の打刻が可能となる。
●虹彩認証システムの特長
虹彩認証システムは2歳から変わらないといわれる目の虹彩を利用した本人認証端末。これにより、「安全なオフィス」への環境作りを次のように改善できるという。
・完全非接触での出退勤が可能。
・マスクをしたまま認証ができる。
・帽子、ヘルメット、ゴーグル、防塵服等を着用して出入りする施設でも出退勤が可能。
また、虹彩認証は誤認証率が「1兆分の1」と非常に低く、生体による認証となるため、打刻カードの貸し借りや写真を利用するなどのなりすまし防止が特徴的だ。
●勤怠管理×虹彩認証の可能性
ICタイムリコーダーに虹彩認証を搭載することにより、勤怠管理にどのような良い変化が期待できるだろうか。オープントーンのセールス&サポートマネージャー塚田隆氏に聞いた。
「従来の勤怠管理は、タイムカードやICカードによるものや、生体認証でも指紋や静脈認証など接触をともなうものが中心でした。非接触のものでも顔認証だとマスクをしたままの認証がむずかしいものもあります。その点、虹彩認証はマスクをしたままでも問題はありません。
また今回、オフィス内の多くの人の手が触れる箇所を重点的に非接触化し、テレワークがむずかしい環境でも安心して働けるオフィス環境へ変更されることを期待してリリースしております」
現在は、介護福祉施設、工場、FC系飲食店などから問い合わせがあり、いずれもマスクや防塵、ゴーグルなどをしたまま非接触で出退勤を行いたいというニーズがあるという。虹彩認証は、マスク時代には注目の勤怠認証といえそうだ。
シーイーシー 二要素認証PCセキュリティシステム「SmartSESAME PCログオン」の顔認証機能
株式会社シーイーシーは、同社の既存サービスである二要素認証PCセキュリティシステム「SmartSESAME PCログオン(スマートセサミ ピーシーログオン)」(以下、PCログオン)に顔認証機能を追加し、2021年10月28日より提供開始した。
PCログオン最新版では高い認識精度の顔認証エンジンを搭載し、PCのさらなるセキュリティ強化と利便性向上を支援する。
●「PCログオン」の顔認証の特長
PCログオンは、370以上の官公庁・自治体と金融機関やメーカー、商社など幅広い民間企業への導入実績を持つSmartSESAMEシリーズの二要素認証PCセキュリティシステムで、顔認証の前段階で画像処理するAIテクノロジーの採用により、マスクの着用有無、不適切着用(鼻マスク、口出し)などの検出を高精度で認識できる。
・高い認識精度となりすまし防止
本人認識率99.73%、マスク着用時も98.5%と高い認識精度を実現。顔写真使用やマスク着用時のなりすまし防止にも対応する。
また、鼻マスク、口出しなどのマスクの不適切着用検出も認識するという。この不適切着用の検出ができるようにした背景を、シーイーシーの事業推進本部企画部、佐々木直子氏は次のように話す。
「顔認証は顔検出、そして特徴点抽出を行い、抽出された顔の特徴点から独自認証方式で顔認証による個人特定を行っています。マスク着用の有無、大きさ、形状などによって認証に必要な特徴点が変わってくるため、それぞれに応じた認証処理を行っています。つまり、マスク有無など様々な条件に合わせて検出精度を上げることで、最終的にマスク着用時の認証精度も上がります。
それによって、コロナ禍でマスク装着が必要にもかかわらず、認証時にマスク外す手間や、外すことによる感染リスクの低減につながります」
・PC内蔵Webカメラに対応
PCログオンは、PC内蔵のWebカメラおよび外付けのWebカメラが利用できるため、認証用のリーダーを用意する必要がなく、低コストで顔認証を導入できる。
・顔認証でスムーズな打刻、勤怠管理が可能に
顔認証でスムーズな打刻を実現。さらに勤怠システムと連携し、ログオン・ログオフ履歴を就業時間のログとして利用できる。
さらに進化を遂げるオフィス等の勤怠管理×認証システム。非接触の感染予防に役立つほか、毎日の打刻がより手軽になり、かつ、不正の防止レベルも上がっている。今後の進化にも期待したい。
【参考】
サイバーリンク「FaceMe」
オープントーン「ICタイムリコーダー」
シーイーシー「SmartSESAME PCログオン」
取材・文/石原亜香利