トヨタの超小型EV、C⁺pod(シーポッド)に試乗した。C⁺podは環境に優しい2人乗りのパーソナルモビリティEVとして誕生。2019年の東京モーターショーで初公開され、2020年12月から法人ユーザーや自治体向けに限定販売を開始。そしていよいよ2022年中に一般販売される予定になっている。また、EV向け電力プランとして、中部電力カミライズ、関西電力、東京電力エナジーパートナーと連携し、サービスが提供、展開されることになっているほか、観光情報とのセットで、TOYOTA SHAREを活用し、利用者の観光、周遊を促進するEVカーシェアなども順次、進めていくという。
さて、実車に公道で試乗することができたC⁺podだが、RRレイアウトで2人乗りのボディサイズは全長2490×全幅1290×全高1550mm。ホイールベース1780mmと、軽自動車よりずっとコンパクト。全高が1550mmであるということは、立体駐車場に入庫することも可能で、ナンバープレートは黄色い軽自動車規格となる。
コンパクトなリチウムイオン電池とモーターを組み合わせたモーターの定格出力は2.6Kw、最高出力9.2Kw、最大トルク5.6N・m。WLTCモード クラス1の一充電航続距離は、ご近所走行には十分な150kmとされている(エアコンなどを使えば100km程度か?)。なお、WLTCモードのクラス1とは、超小型モビリティのような最高速度が制限された電気自動車について、車両に適した走行モードを規定し、測定されている。そして最高速度は60km/hまでに規定され、高速道路は走行できない。
充電はAC200V/100Vの普通充電で行う。自宅ではそのままで充電でき、外出先ではトヨタのEV/PHV充電サポートに加入することで、全国のトヨタ販売店役4200基、全国の普通充電スポット約10800基での充電が可能になる。さらに停電、災害時に役立つAC100V/1500Wコンセントと外部給電機能を標準装備。外部給電用のコンセントとして、最大約10時間程度の電力が外部に供給可能だという。
エクステリアデザインはモダンで親しみやすいシンプルなデザインでまとめられている。キャビンをブラックアウトするとともに、LEDヘッドランプ、LEDリヤコンビランプによって凝縮感あるEVデザインとしている。
また、外板を樹脂製として軽量化を図っているのも特徴だ。タイヤサイズは155/70R13、サスペンションはF)ストラット、R)トーションビーム。ブレーキはF)ディスク、R)ドラム式だが、倍力装置は付かない。また、パワーステアリングも未装備となる。
運転席に着座すれば、意外にフツーである。手動式のサイドウインドーは肩に近くに迫ってはいるものの、前後方向に窮屈感はない。開発陣の一人に隣に乗ってもらったのだが、助手席との間の距離は全幅からも分かるように限られているが、肩が触れ合うようなことも、筆者(身長172cm、65kg)と開発者の体形ではなかった。
C⁺podを走らせるには、キーを回してモーターを起動し、ボタン式のセレクターで前進、後退を行う。シンプルが命だから、NレンジはあってもPレンジは、ない。止めるときはNレンジに入れて、サイドブレーキを引くことになる。
横浜の街中を走った印象は、硬めの乗り心地もあって、電動カートに近いと感じた。EVだからアクセル操作に対してリニアに加速が始まるのだが、車両重量690~670kg(グレードによる)の軽さはほとんど感じられず、やや重々しい加速になる。とはいえ、家から近所のスーパーマーケットまで走り、観光地で景色を楽しみながら流すような使い方なら、必要十分かつ安全!?でもある加速性能の持ち主とも言い替えられる。軽自動車よりコンパクトなボディサイズと最小回転半径3.9mの小回り性の良さもあって、狭い道の走行やすれ違い、狭い駐車スペースに止めるのも楽々そのもの。それはそれでC⁺podの才能の一つではないだろうか。
ノンパワーのステアリングは車重の軽さと13インチタイヤによって、走り出せばそれほど重いとは感じなかったものの、倍力装置なしのブレーキペダルは、一般的な自動車と比べ、かなり重い踏力を必要とする。もし、免許返納直前の足腰が弱ったシニア層が使うのであれば、ペダル操作力の負担低減のために、軽自動車並みの軽いタッチでブレーキを踏めるようにしてもらいたいと思えた。
走行中の静粛性を、普通車のEVのように期待してはいけない。また、近年、性能や快適度が飛躍的に向上した軽自動車のような車内の静かさも、ない。エンジン音のないEVならではのヒュイーンという車両接近通報装置の音やロードノイズの騒々しさを、走っている間じゅう、味わうことになるからだ。それが嫌なら、近い将来発売されるであろう、電動軽自動車(日産と三菱が有力で4人乗りのHVだ)を待ったほうがいいとも言える。
C⁺podの価格は現時点で165万円~で、もし高速道路も走れ、快適度で大きくリードする、給電機能まで備えた電動軽自動車(HV)が仮に200万円程度で買えるとすれば、C⁺podを一般ユーザーの愛車とするには、けっこう微妙なポジションにいるとも言えそうだ。電動軽自動車(HV)が250万円なんていうことになれば、話は別だが・・・。
トヨタC⁺pod
https://toyota.jp/personalmobility/
文・写真/青山尚暉