固定電話から携帯電話、そしてスマートフォンと、情報通信端末は目覚ましい進化を遂げている。友人との連絡や音楽・映画の視聴、買い物の支払いなど、生活をスマホに頼り切っている人は多いだろう。
次世代のスマホはどのように進化するのか? 情報通信総合研究所(ICR)の主任研究員である中村邦明氏に聞くと、驚きの答えが返ってきた。
スマホの機能は進化してきたが、板状の長方形というスタイルはほぼ変わっていない。現在、折りたたみ型/巻物型などフレキシブルディスプレイや、グラス型をはじめウェアラブル端末の開発が進んでいる。そのうえで、さらに先の可能性のひとつとして「スマホを持たない時代が来る」と中村氏はいう。
ポイントは機能の分散化。電話、メール、写真や動画の撮影、音楽や動画の視聴、ゲーム、キャッシュレス決済と、あらゆる機能を集約して、スマホは進化してきた。「何でも1台でできる」からこそ便利であり、そこにスマホの価値がある。
しかし、将来的には機能を集中させる必要がなくなり、さまざまな機器に分散していくと予測するのだ。
そう考える根拠は、ネットワークの革新だ。「5Gが実装されたばかりなのに、すでに6Gの構想が進んでいる。通信の進化が速まってきている」と中村氏。
複雑な処理をスマホではなくクラウド上のコンピューターが担当し、強靭でスピーディなネットワークでスマホと通信できるようになる。
スマホは高度なコンピューターではなくなるので、多くのハードウェアを手放せる。長方形の板であったり、一台ですべてをこなす必要もない。例えば電話の場合、相手との通信や音声データの処理はクラウド側で行うので、手元にはヘッドセットだけあればよい。
特に、スマホの体積の多くを占めるバッテリーが必要なくなるのは大きい。端末のスタイルは自由になり、ウェアラブル端末の進化も期待できる。
さらに、中村氏は街全体がスマホ化する可能性を指摘する。
あちこちにクラウドと通信可能なディスプレイがあれば、スマホを持たなくても、自分のアプリを利用できるようになる。道に目的地へのナビが表示されたり、カフェのテーブルでリモート会議したり。プロジェクターやセンサーで、壁や空間にタッチパネルを作り出す技術がうまれれば、さらに可能性は広がる。
未来のヒントは、アマゾンが米国を中心に運営するレジなしコンビニ「Amazon Go」にみえるという。顧客が棚から商品をとると、店舗のカメラやセンサーが動きを感知する。顧客はそのまま商品を持って店を出るだけ。会計をしなくても、何を買ったかが判別され、自動的に決済も行われる。現在のところ、入店時にスマホでQRコードを示す仕組みだが、顔認証や虹彩認証で個人を特定できれば端末は必要ない。
今の私たちにとって、スマホなしの生活は考えられない。しかし、新しい生活はすぐそこまで迫っている。
取材・文/ソルバ!
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