「妻に言いたいことがあるけれど、そのまま言うと喧嘩になる」「何度もよくないと言っているのに妻が聞く耳を持たない」など、夫の立場として、妻に言いにくいことを伝えることついて、何らかの悩みを抱えてはいないだろうか。
今回は、妻に直してほしいところをうまく伝える方法について、ビジネス、教育、子育てまで、人間関係を改善する具体例が書かれた『アドラー心理学×幸福学でつかむ! 幸せに生きる方法』の著者の一人であるメンタルコーチの平本あきお氏に聞いた。
妻に言いにくいことを伝えるには?
コロナ禍で夫婦が長い時間、家にいることが多くなり、お互いの悪いところが目につきやすくなったという声も聞かれる。ことを荒立てずに、直してほしいことを指摘して直してもらうには、相手にどう伝えればいいか。
妻に対する伝え方のよくある夫の悩みとして、「文句をそのまま言うと喧嘩になる」「何度もよくないと言っているのに妻が聞く耳を持たない」などがある。
アドラー心理学などをもとに開発したオリジナルメソッドより、平本氏に教えてもらった。
【取材協力】
平本あきお氏
株式会社平本式 代表
カウンセリング・コーチング・瞑想のプロ。米国アドラー大学院修士号取得。東京大学大学院教育学研究科修士号取得(臨床心理)。世界中の心理療法を統合し、包括的で再現性のあるオリジナルメソッドを30年以上かけて開発。組織変革、社会変革のための『人生変革メソッド』を伝え続ける。
https://hiramotoshiki.jp/
「まずイメージして知って欲しいのは、夫と妻の関係を椅子で表したとき、恋愛中や新婚の頃は、お互い向き合っているということ。相手の良いところがたくさん見えていて、悪いことは見えてこない状態です。そして何年か経って、苦難や喜びも分かち合い、子どもの将来を考えたりするようになると、その椅子の向きは、横並びで同じ方向を向くように未来を見ているのが理想です。このイメージを持った上で、次の3ステップで夫婦一緒に実践しましょう」
Step1 リスペクト
・2人で楽しむこと(好き・価値観が同じところ)を洗い出す。
・それぞれ別々に楽しむこと(好き・価値観が違うところ)を洗い出す。
・それぞれお互いにリスペクトするところを洗い出す。
Step2 違いを認める
・物事の価値観(何が悪くて何か良いのかの判断基準)の違いを洗い出し、認め合う。
例えば、部屋が汚れているという基準、洗い物の手順、子どもに叱る基準など。本来、嫌いで付き合っているわけではなく、大切な存在のはずなので、同じところと違うところを認め合い、違いにもリスペクトする。
Step3 役割分担
・どこまでが妻の担当で、どこからが夫の担当なのかを決める。
「役割を決めたとしても、疲れたり、何か事情があって役割をまっとうできていないときがあります。その場合は、Step1を思い出し、リスペクトし合える関係になりたいと伝えます。そして『この役割だったと思うけど、どうしたの?』と事情を聞きます。理由が特になければ『決めたことをやってくれたら嬉しい』と自分が感じていることを伝えます。なにか理由があれば、一緒に解決したり、役割の範囲を変えたりするなど、前向きに話し合います。
今、目の前に気になることを責め合いだすと、お互いミサイルの応酬になり、終わりがなくなります。目的論で『将来どうなったらいいか。どんな関係にしたいか』を前提に考えて発言する、もしくは、子どもがいれば『子どもにとってこんな親でありたい』という話をするのも有効です」
妻が家事や育児を手抜きする…どう言えば良い?
妻が家事や育児を手抜きするのに困っているといった場合、前向きに家事や育児してもらえるようになる声かけ方法はあるのだろうか。
「まずは、一人一人、価値観や基準が違うということを知ることが大切です。夫からは手抜きしているように見えても、妻としては完璧にやれていると思うことがあります。これは、手抜きではなく、基準が違うだけ。その基準をどうしても自分基準に満たしたい場合は、自分でやればよいことです。
その上で、少しでもやれていること、ちょっとでもできているところに対して感謝を伝え続けることが大切です。それが自分にとって当たり前なことでも、前述のStep3で決めた役割の範囲であってもです」
例)
「子どもの送り迎えをしてくれてありがとう」
「洗い物してくれてありがとう」
「雨が降ってきたとき、洗濯物をとりこんでくれてありがとう」
「人間は結局、承認欲求があるので、やっていることを認められたいのです。役割で決めたことであっても、やって当たり前だと思われるならやりたくなくなり、どうしたら手抜きできるだろうと考え始めます。妻がコソっとやったことでも、『料理の味こだわってるね』とか『隅まで掃除してくれたんだね』と言うと、それを続けようと思うものです」
妻に対して、言いにくいことが生じたなら、まずは3Stepを行い、夫婦の関係を高めることがポイント。その上で、夫自身の考え方を改めること。このような夫婦、そして夫になることができれば、理想的な関係といえそうだ。
【参考】
平本あきお・前野 隆司著「アドラー心理学×幸福学でつかむ! 幸せに生きる方法」(ワニブックス)
取材・文/石原亜香利