ヘドラ50周年展!
…と言われても、ヘドラってなに?あ、このドロドロした怪獣、見たことあるような…、
というDIME読者もいらっしゃると思う。
というわけで、まずヘドラの説明をすると、
『ゴジラ』シリーズ第11作として1971年に公開された『ゴジラ対ヘドラ』に登場する対戦怪獣が、噂のヘドラである。
『ゴジラ対ヘドラ』は当時の大きな社会問題となっていた「公害」をテーマにしており、「公害怪獣」の異名を持つヘドラは、ヘドロや汚染された排煙を媒体に巨大化していく怪獣として描かれている。
昨年から今年にかけては、この『ゴジラ対ヘドラ』の50thアニバーサリーであり、ヘドラファンも引くほど様々な新商品や催しがドロップされてきた。
いや、でもゴジラならわかるけど、そのヘドラの50周年を、なぜそんなに祝うのだ…?
お答えしよう。
ヘドラは、(一部で)熱狂的な人気を誇るカルトスターなのだ。
まず『ゴジラ対ヘドラ』は、ゴジラシリーズでも屈指の異色作としてカルト的支持を集めている作品だ。
前述の公害問題を扱ったセンセーショナルな社会性もあることながら、1970年代初頭のサイケデリック、アングラの流行をモロに受けた“どサイケ”な作風は唯一無二。
監督の坂野義光氏は、この一作だけを撮って劇映画作家としては引退状態となったのだが、
一説には、この作品のゴジラの描き方が異色すぎて、次回作への登板を取り消され追放された…、なんて噂もあるほどだ。
(興味のある方は、坂野さんの著書『ゴジラを飛ばした男 85歳の映像クリエイター』をぜひ)
さらに、ヘドラという怪獣自体のキャラクター造形もまた、世界中のファンを魅了してやまない。
このドロドロとした定形を拒否する身体と、そこに光るキュートでつぶらな瞳が時代を超えたポピュラリティーを獲得している。(ちなみに縦型の眼は、女性器をモデルにしているぞ)
このヘドラという立体キャンバスを自分の好きな色で塗りたいぜ…、という熱いイマジネーションを迸らせるクリエイターは後を絶たず、
ド派手な原色に、クリア、レインボー、メタリック…、ソフビのカラーバリエーションに関してはゴジラを追い抜いてしまうんじゃないかというくらい、ものすごい数が存在する。
ヘドラソフビに関しては、怒髪天の増子直純さんや俳優の永山瑛太さんが熱烈なファンとして知られ、オリジナルカラーのソフビを作るまでに至っている。
かく言う自分も『ゴジラ対ヘドラ』の大ファンで、劇中曲「かえせ!太陽を」をライブでカバー演奏したり、『ゴジラ対ヘドラ』を100人以上でオンライン同時視聴したりしている。
そんな、世界中の熱い偏愛を一身に集めてしまったヘドラの周年を締めくくるイベントが、こちらのヘドラ展なわけだが、
ヘドラもここまで来たか…、という感慨がある。
というのも、こちらのヘドラのイベント、いわゆる特撮ファン向けの展示イベントでは無い。
今年、配信で発表された新作映像『ゴジラVSヘドラ』でも活躍した『ゴジラ ファイナルウォーズ』(2004)版のヘドラのスーツ、ミニチュア展示こそあるが、そこに中山晃子さんによる映像投影がブレンドされており、加えてキム・ソンへさん、伊藤桂司さんら様々なアーティストによるヘドラソフビを題材とした作品群など、どちらかというとポップアイコンとしてのヘドラの姿を乱反射するような構成となっている。
今年もゴジラ関連のイベントは色々とあったが、基本的には特撮のファンへ向けたプロップやスーツの展示に重きを置いたものがほとんどだ。
それに対し、このヘドラ展は、特撮的なクラスタの外部からヘドラを描くという構造になっている。
経験上、こうしたサブカルチャー的な題材と、アートの融合のバランス感というのは、もっとも難しく繊細なところだと考えている。
ヘドラとポップアートのこの空間における結合度が成功しているかは、見る方の感性に委ねるべきところだが、
重要なのは、この「拡がり」の部分がヘドラという題材で行われたということだろう。
あの、特撮の世界でもカルトであったヘドラが…、である。
僕の想いはただ一つ、
出世したな~~、ヘドラ!!という感慨で、富士の麓でゴーゴーを踊りたい気持ちでいっぱいである。
「ヘドラ50周年展」開催概要
・会期:2021年11月12日(金)~11月23日(火・祝)
・会場:渋谷PARCO B1F GALLERY X(東京都渋谷区宇田川町15−1)
・営業時間:11:00~20:00 ※入場は閉場時間の30分前まで ※最終日は18:00閉場
・WEB:https://art.parco.jp/galleryx/detail/?id=800
・入場料:500円(税込)※混雑状況により事前予約や整理券配布となる場合がございます。
・主催:パルコ
・協力:東宝
※感染症対策や天災等の諸事情により入場者数の制限、営業時間の変更および休業となる可能性がございます。
※イベント内容は予告なく変更となる場合がございます。
文/タカハシヒョウリ
ミュージシャン、文筆家、作家。特撮ファン。
ロックバンド「オワリカラ」ボーカルギター。
サブカルチャーへの造詣と偏愛的な語り口から、執筆や番組出演多数。
近年は円谷プロ公式メディアでも連載。
クリエイティブチーム「操演と機電」を結成し、10月には『ウルトラ怪獣もののけ絵巻展』を開催。
編集/福アニー