着色は一切なし。伝統工芸技術「木象嵌」で作られた生き物たち
「木象嵌(もくぞうがん)」とは、天然木の質感や色をそのままに絵や図形を表現する伝統装飾技法です。
象(かたどる)・嵌(はめこむ)が語源といわれ、その名の通り下絵に沿ってかたどった木材をはめ込んでいくことで作品が完成します。
さて、今回ご紹介するのは、そんな木象嵌の技法を応用し作られた立体作品。まるで生きているようだと話題になった、他にはない木彫刻をご覧ください。
「立体木象嵌」
繊細な触覚や脚、美しい羽の模様のひとつひとつまで生き生きと表現されているこちらの彫刻。
一切色をつけることなく、種類の異なる木を組み合わせながら、全て天然の色と木目で作られたものだというので驚きです。
そのクオリティといったら、近くで見ても本当に木なのか疑いたくなるほど。今にも飛び立ちそうに見えますね。
自然の木が持つ色合いの奥深さ、彫刻の精巧さにもため息が出ますが、さらに秀逸なのはこの質感。
カブトムシであれば独特のツヤ感や固さ、蝶々であれば羽の鱗粉まで感じさせるという、職人のこだわりが伝わってくるようです。
生き物の生態や情景を切り取る
生き物の息吹を感じる彫刻の作者は、福田 亨(@TF_crafts)さん。学生時代から工芸を学び、20歳の頃に木象嵌を立体化した「立体木象嵌」を考案し、現在も制作を続けられているアーティストです。
福田さんの作品は展示会やSNSなどを通じて公開されていて、ツイッターの投稿には「すごく綺麗」「本物のよう」と思わず目を奪われてしまった人たちのコメントが数多く寄せられています。
見る人の心を掴み、独自の世界観を築かれている福田さんに、木象嵌の技法を使った作品のルーツについて伺ってみました。
「元々、絵を描く事が好きでした。学校で木工の勉強を学ぶなかで、ふと木には色んな色味があるなと思い、『木で絵は描けないのか』と思い立ちました。」
そして、図柄を切り出して嵌(は)め合わせることで絵のような作品を作ったところ、それがたまたま木象嵌と呼ばれるものだと知ったのだそう。その後は木象嵌の楽しさの虜になり、今もこれからも、長く楽しんでいく技法となったのだと語ってくれました。
※画像は全て福田さんのツイッターより引用
■福田 亨(@TF_crafts)さん
伝統装飾技法の木象嵌を、立体彫刻へ応用した「立体木象嵌」考案。着色は一切せず、木の持つ天然の色味や木目の質感を大切にしています。
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文/黒岩ヨシコ
編集/inox.