【Before】新卒入社で順風満帆に仕事をしつつも、組織での主体性が発揮できない環境にギャップを感じ、経済的な豊かさを求めた。
【After】節約生活で投資資金を捻出し高配当株、成長株投資で資産を拡大しFIREを実現。農業や社会貢献活動をしつつ、趣味の山登りを楽しむ日々に。
元大手サラリーマン
穂高唯希さん
会社員よりも自由度の高い人生にしたかった
三菱系企業に就職した矢先にFIREを決意した穂高さんは、それまでの道のりを事細かに綴ったブログが人気を博し、またたく間に有名人になった。今ドキの若者が羨望の眼差しを向けるのは、やはり30歳にしてFIREを達成したことに加え、社会貢献への意欲が高く、自由な生き方を楽しんでいるからだろう。
「別にサラリーマンが嫌というわけではありませんでしたが、私のフィールドはここじゃないと思いました。より主体的に自分の好きなことをするには、経済的な自立が必要と考えただけです」
と、まるでエリート会社員のように冷静な振る舞いを見せる。とはいえ、学生時代は朝から晩までオンラインゲームに興じたり、FX取引で何度も大損したりと、人間的な面も併せ持つ。
FIREを決意した穂高さんの生活は、ストイックな節約の日々だった。ストレスまみれにならなかったのだろうか。
「その時の私にとって、投資は趣味でしたね。連続増配株を探しては投資を続け、配当金が出たら再投資を行なうの繰り返しで、資産作りに専念していました」
会社員として成果を上げながら迎えた2019年、30歳という節目で会社を退職した。大手企業でのサラリーマンという安定ポジションを手放した動機をこう明かす。
「学生時代に海外のいろいろなところへ留学し、人間の生き方の多様性を目の当たりにしました。その中で、〝明日は我が身に何が起こるかわからない〟という恐怖を感じたため、特定の企業でしか通用しないスキルを身に着けるのではなく、いろんなところで自由に生きていける手段とバックグラウンドが欲しくなったんです。
FIRE後は趣味の山登りをしたり、北海道で農業の仕事をしたり、除雪作業をしたりしましたね。自由度が高く、自分のスキルを高めながら社会貢献もできる生き方をしています」
30歳で若くしてFIREしたことばかりが取り上げられているが、「私もいろいろ失敗しました。だめだったら成功するまで何度も行動することが大切でしょう」と語る。
FIREまでの過程を楽しむことも成功した要因かもしれない。
【Q】投資に回すお金を作るのにどの程度の節約が必要でしょうか? ストイックな生活には自信がありません。
【A】できればストイックにいきたいところですが(笑)。ストレスを感じない範囲で、そして目標達成に必要だと自分で納得できる範囲での節約が一案です。
【Q】家族や会社の同僚など身近な人にFIREしたいと相談しましたか? またその時の反応はどうでしたか?
【A】仲の良い同僚や家族には話しました。初めは実現性に懐疑的でしたが、徐々に応援してくれました。
『本気でFIREをめざす人のための資産形成入門』
著/穂高唯希
実務教育出版 1540円
FIREまでの道のりを綴ったブログ「三菱サラリーマンが株式投資でセミリタイア目指してみた」の著者が、投資手法と哲学を詰め込んだ1冊。FIRE入門書として評価が高い。
取材・文/久我吉史
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