老後資金が不安だからと少しでも長く働こうとする人が増えているご時世に、「早期退職して自由になる」という生き方が注目を集めている。どのように資産を形成したのか。家族の理解は得られたのか。
質素でもいいから働かずに人生を楽しみたい
FIREとは「Financial Independence and Retire Early(経済的自立と早期退職)」の略称だ。働いて得た収入を少しでも多く投資に回し、不労所得が得られるだけの資産を作り〝自由な生活〟を目指す。
資産形成後は会社でのしがらみから解放され、趣味に時間を費やす人もいれば、地方や外国に移住して気ままに過ごす人もいる。中には会社を離れつつも自分のペースで仕事を続けることで、社会とのつながりを保つケースもある。
だが、いまや「人生100年時代」。老後への不安が尽きない中で「会社員」という安定のポジションを手放すことは、世の流れに逆行する価値観のようにも思える。FIREの流行を読み解くには、これを熱狂的に支持している20〜30代の「Z世代」の考え方を理解するのが近道だろう。
この世代は物心ついた時から経済が低迷しており、就職活動中や就職直後に2008年のリーマンショック、2020年のコロナショックといった未曾有の経済危機を経験している。上の世代に比べて貯蓄や収入が少なく、生活費がいつ底をついてしまうのかという不安にいつも苛(さいな)まれてきた。それに加え、社会に出た時にはすでに終身雇用制度が崩壊していた。
そのため、「会社に縛られるよりも、自分で資産を殖(ふ)やして好きに生きるほうが〝コスパ〟がいい」と考える人が中心となって、FIREを支持しているのだ。40代以上の人でも「若い時にできなかった活動や社会貢献がしたい」「自分の仕事のせいで、子供の遊びや教育に携われていない」と考え、FIREを目指す人も多い。
FIREには「4%ルール」という考え方がある。これは、資産額の4%以内に生活費を抑えれば、資産を減らさずに、かつ不労所得で生活できるという考え方だ。
この数字は、FIREブームの火付け役となった米国の金融商品の実績年利が根拠になっている。実は、今回取材した3人のFIRE経験者たちも、投資比率や投資対象は異なるものの、いずれも米国への投資を行なってFIREを成し遂げている。だが、投資のスタンスはもちろん、年齢や家族構成、FIRE後の生活の仕方も3者3様だ。あなたの〝理想のライフスタイル〟に近いのは誰だろうか。
セミFIRE
海外経験豊富な元サラリーマン
アキラさん
中小企業のサラリーマンとして叩き上げの日々を経験。ひょんなことから海外赴任も経験し、英語が身に付いた。会社員を続けたくない一心で実直に積立投資を続けFIREを達成、海外移住を実現した。
セミFIRE
元大手サラリーマン
穂高唯希さん
学生時代の海外留学経験で生き方の多様性を実感したのが礎。三菱系企業に新卒で入社したもののすぐにFIREを決意。会社での仕事は楽しんでいたが、FIRE後の多様な生き方を目指し30歳を契機に退職した。
完全FIRE
元敏腕金融マン
エルさん
大手金融機関の最前線に長年携わってきた生粋の金融マン。自身でも20代の頃から様々な投資を経験し、米国株が最良な投資先だとわかり投資を継続。2019年に資産1億円を達成して円満退職。
『DIME MONEY本当に儲かる米国株の買い方』電子書店で好評発売中
DIME12月号の特集は「行列店に学ぶヒットの方程式」「FIREで幸せを手に入れる方法」
DIME12月号の特別付録は、キャンプ、登山、アウトドア、DIY、自動車の修理、防災グッズなど、いろんな場所で使える便利な「4WAYポータブルランタン」です。付録とは思えないほどのクオリティーで、4WAYという名称の通り、様々な使い方ができるほか、お洒落な迷彩柄のデザインが特徴。
取材・文/久我吉史