世界的にSDGsの実現への機運が高まる中、個人が比較的、生活の中で実践しやすいのが、「食」に関する分野だ。
現在、パナソニックセンター東京にあるクリエイティブミュージアム「AkeruE(アケルエ)」のカフェでは、2021年12月26日(日)まで、SDGsをテーマにしたメニューが提供されている。そのメニューの開発に協力した「The Burn」料理長の米澤文雄シェフに、メニューの概要や作り方をインタビュー。家庭でのSDGsに貢献する調理方法も聞いた。
冷凍食材を業務用コンベクションオーブンで美味しく、環境に優しいメニューに
パナソニックは、「パナソニック環境ビジョン2050」として、2050年までに、カーボンニュートラルのその先を目指す宣言をしている。
その一環として、2021年10月5日より、食に関する新たなプロジェクトをスタートした。パナソニックセンター東京と同社のキッチン空間事業部が共同で実施するもので、SDGsの実現に向け、「The Burn」料理長の米澤文雄シェフと共同開発した冷凍食材を活用したオリジナルレシピを、パナソニックの業務用コンベクションオーブンを使用して解凍・リベイクして提供するものだ。
本プロジェクトを通して、フードロス問題への解決策や飲食店のオペレーション効率化策を探っていく。
●フードロス削減・外食業界の人手不足に貢献
今回、期間限定で提供されるメニューは、パナソニックの業務用コンベクションオーブンNE-SCV2を使用する。特長は、コンベクション、グリル、マイクロウェーブ機能を組み合わせ、調理済みの冷凍・冷蔵食材をスピーディに加熱できること。よく使用する加熱パターンを登録すれば、ナンバーを押すだけで簡単に加熱ができる。
今回のメニューは冷凍食材のみを使用し、冷凍状態から一気に食材を焼き上げるため、賞味期限切れや客数予測による事前解凍での廃棄ロスを極限まで減らすことができるという。
また、すでに冷凍された数種類食材をお皿に載せて簡単操作で焼き上げるだけという、調理オペレーションの効率化にもつながる可能性もあり、外食業界の人手不足問題のソリューションとしての期待も込められている。
●クリエイティブミュージアムのカフェで期間限定提供
メニューは、パナソニックセンター東京「AkeruE」2階にあるカフェ「E」にて、3か月間、トライアルとして期間限定で提供される。
AkeruEは、2021年4月3日にリニューアルオープンした「ひらめきをカタチにするミュージアム」。SDGsやSTEAM教育をテーマとした探求学習、創造的な学びを、創作工房、科学館、美術館の三つのエリアで提供する。2021年10月5日にカフェが開設され、「食」の要素が加わった。AkeruEに訪れたときの休憩スポットとして利用できる。
米澤シェフにインタビュー!提供中なのはどんなメニュー?
今回、提供されているのは、ピザ2つとドリア1つ。「シンプルマルゲリータピザ」「キノコとコーンのヴィーガンピザ」「エビミートドリア」だ。この3メニューについて共同開発に協力した米澤シェフにインタビューを行った。
――今回、なぜこの3つのメニューを選ばれたのですか?
【取材協力】
米澤 文雄(よねざわ ふみお)氏
イタリアンの草分け的存在である「イル・ボッカローネ(恵比寿)」で経験を積んだ後、2002年に単身ニューヨークへ。人気の日本食レストランなどで働いた後、同年ミシュラン三ツ星レストラン「ジャン・ジョルジュ」に。その類稀なる感性がスターシェフのジャン・ジョルジュの目に留まり、絶大な信頼を受けわずか3年で、日本人初のスー・シェフに抜擢される。2013年3月に行われたアメリカ大使館主催のシェフ・コンペティション「テイスト・オブ・アメリカ」日本大会優勝、北アジア大会でも準優勝を果たす。ジャン・ジョルジュの日本初進出を機に、レストランのシェフ・ド・キュイジーヌ(料理長)に就任。現在は新店舗「The Burn(ザ・バーン)」をオープン。
「ピザは、幅広い年代のお客様に親しみやすいメニューです。中でもマルゲリータは、素材がシンプルで、好まれるお客様が多いと考えました。また、お客様の選択肢を増やすという意味で、ヴィーガンの方向けのメニューは加えたかったので、きのこを使い、ピザクラストもヴィーガン用に焼いていただいて、キノコのヴィーガンピザを作りました。お食事としてはもちろん、スナックとして気軽に召し上がってもいただけます。
また、しっかり召し上がりたいお客様向けに、ドリアをご用意しました。実は考案したメニューの中にはヴィーガンのドリアもあります。今後、オペレーションが落ち着いたら、販売していきたいと考えています」
――それぞれどんなメニューですか? SDGsとの関係も教えてください。
「すべてのメニューに共通することとして、食材はほぼ、冷凍の食材を使っています。ピザ用フォカッチャ、ソース類、トッピング、ごはん、チーズ。(セミドライトマトと仕上げのオリーブオイルは除く。)ですので、これだけのメニューを作っても、食材のロスやゴミが出ません。
また、パナソニックのオーブンNE-SCV2をそれぞれのメニューに合わせてプログラミングすることにより、加熱による理想的な仕上がりを実現し、また誰にでも作れる簡単な調理が可能になりました。NE-SCV2は業務用であるため、パワーがあり、短時間で調理できたのは驚きでした」
1.「シンプルマルゲリータピザ」900円(税込)
「厚めに焼いたフォカッチャ生地に、私のレシピで作ったトマトソースとベシャメルソース(ホワイトソース)を使います。ベシャメルソースは、まろやかに味わっていただくために加えています。セミドライトマトは、オスミックトマトを使用。有機の土を使った糖度の高いプチトマトです」
2.「キノコとコーンのヴィーガンピザ」900円(税込)
「ヴィーガン用に乳を抜いた生地に、トマトソースを使用。オリーブオイルで炒めたキノコとコーン、ヴィーガンチーズで仕上げています」
3.「エビミートドリア」1,000円(税込)
「オリーブオイルで軽く炒め、冷凍保存したごはんに、ミートソースとベシャメルソース、ボイルして冷凍保存したエビ、チーズをかけて焼きます」
――これらのメニューは、家庭で作れますか?
「シンプルマルゲリータピザは、例えば、食パンを使って、ご自身で作って冷凍させたトマトソース、フレッシュトマトやチーズを焼くことにより、実現できます。
エビミートドリアは、余った白いご飯をオリーブオイルで軽く炒めて、パラパラと解せる形で冷凍します。また、ミートソースやトマトソースなど、ご自身の気に入ったソースも冷凍しておきます。エビもボイルして小さくカットして冷凍。余った食材をカットして冷凍した食材が使えます。
それらを解凍して耐熱皿に入れて、オーブンで焼くことで簡単に作ることができます」
――家庭でSDGsを配慮して料理する場合、どんな工夫が考えられるでしょうか?
「多めにミートソースやトマトソースを作って冷凍させておくことで、ご家庭でも食材を無駄にすることを避けることができます。例えば、何か作ったときの素材の残りを、次回に使いやすいように工夫して冷凍することで、賞味期限が切れて捨ててしまうことを避けることができます。
例えば肉じゃがの残りを冷凍して、後日、コロッケにしたり、いろいろな料理の残りを冷凍しておき、それらを合わせてカレーに仕立てたり。冷凍以外でも、野菜のへたを使ってスープを取ることもできますね」
ヴィーガンドーナツの提供も
AkeruEのカフェ「E」では、常設メニューとして「ヴィーガンドーナツ」の提供もされている(価格は税込400円)。これもSDGsに関係するメニューだという。カフェ担当者にこだわりを聞いた。
「現在、AkeruEのカフェ『E』で提供している商品はすべてにおいて、子どもたちに『食』から学んでいただけるという思いを持って選定させていただいています。例えば、クラフトコーラはフェアトレードによって仕入れられてものであったり、コーヒー豆も地産地消をうたったものを利用していたりします。
その中で、このドーナツはヴィーガンフードのものを選定することにより、食文化の多様性を子どもたちに気づいてもらうきっかけにしようという思いで提供しています」
この秋冬に、家族でのおでかけ先としても利用できるAkeruE。出かけた際に、食にまつわるSDGsへの貢献を意識して、メニューを味わってみるのも良さそうだ。
パナソニック 業務用コンベクションオーブン×SDGsメニューの提供トライアル概要
期間:2021年10月5日(火曜日)~12月26日(日曜日)10:00~18:00
オーダー時間:ドリンク 10:00~17:00/フード 11:00~15:00
提供場所:パナソニックセンター東京 AkeruE 2階「E」※飲食スペースあり
「AkeruE」
取材・文/石原亜香利