YouTubeを中心とした動画サイトでは、ゲーム配信(ゲーム実況)動画が人気を集めています。
さまざまな配信者が参加しているゲーム配信動画ですが、著作権について問題はないのか、気になったことがある方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、ゲーム配信は著作権侵害に該当しないのか、現状行われているゲーム配信は問題ないのかという点について解説します。
1. ゲームにも著作権が認められる
音楽・書籍・映画などと同様に、ある程度作りこまれたゲームについては、著作権が発生するケースがほとんどです。
1-1. 著作権の発生要件
著作権が発生する「著作物」は、法律上以下のように定義されています。
一 著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
(著作権法2条1項1号)
上記の定義のうちでポイントとなるのは、「創作的に表現したもの」という部分です。
すなわち、著作権による保護を受けるためには、保護に値するだけの創意工夫の下に製作された表現物であると認められる必要があります。
この点、デザインなどが凝っていない単純なゲームはともかく、ゲーム実況の対象となるような作りこまれたゲームであれば、著作権の対象となる可能性が高いと考えられます。
1-2. ゲーム配信には著作権者の許諾が必要
著作権者には、著作物を利用する各種の独占的な権利が与えられます。
これは、著作物から得られる収益を保護することによって、著作者の創作意欲を増進させ、文化的な発展に寄与することを目的としています。
著作権者に認められている権利の中で、ゲーム配信と密接に関連しているものは、以下の2つです。
①上映権(著作権法22条の2)
著作物を公に上映する権利をいいます。
②公衆送信権(著作権法23条1項)
インターネットなどを通じて、著作物を公に配信する権利をいいます。
これらの権利は本来、著作権者が専有しているものです。
ゲーム配信は、公に向けてゲーム画面を上映・配信するものですので、著作権者の許諾を得なければ行うことができません。
2. ハード別のゲーム配信に関する許諾状況
ゲーム配信がYouTubeなどで人気を集めている昨今では、著作権者(メーカー)側にとっても、ゲーム配信は宣伝ツールとして非常に有効に機能しています。
そのためゲームメーカー各社は、ユーザーに対して包括的にゲーム配信を許諾しているケースが多い状況です。
ハード別に、ゲーム配信に関する許諾の状況を見ていきましょう。
2-1. 任天堂
任天堂は、ガイドラインを遵守することを条件として、ゲーム配信を包括的に許諾しています。
参考:ネットワークサービスにおける任天堂の著作物の利用に関するガイドライン|任天堂
個人によるゲーム配信の場合は非営利が原則となりますが、任天堂が指定した以下のシステムによる場合に限り、収益化も認められています(2021年11月現在)。
・Facebookの「Facebook Game Streamer」および「Facebook Level Up Program」
・ニコニコ動画/生放送の「クリエイター奨励プログラム」および「ニコニコチャンネル」
・OPENREC.tvの「OPENREC Creators Program」
・Twitchの「Twitchアフィリエイトプログラム」および「Twitchパートナープログラム」
・Twitterの「Amplify Publisher Program」
・YouTubeの「YouTubeパートナープログラム」
・TwitCasting の「ツイキャス・マネタイズ」内の「ライブ収益」
・Mirrativの「ギフト」
2-2. PlayStation®
PlayStation®タイトルを販売しているソニー・インタラクティブエンタテインメント社は、ゲームが対応している機能を使い、対応しているオンラインサービス・ウェブサイト等へアップロードすることを包括的に許諾しています。
具体的には、PlayStation®のシェア機能を活用してのゲーム配信が認められています。
シェア機能はYouTubeなどの動画サイトに対応しており、対応サイトのシステムによる場合であれば、収益化も可能です。
反対に、ゲーム配信が認められていないタイトルについては、シェア機能の利用が不可となっています。
2-3. 各種オンラインゲーム・スマホアプリ
各ゲーム会社が個別にリリースしているオンラインゲーム・スマホアプリについては、ゲーム配信の可否は、ゲーム会社の方針によって異なります。
対戦型のオンラインゲームなどでは、高い技術によるプレイや派手なプレイによる船団効果が高いことから、配信を積極的に推奨する傾向にあるようです。
たとえば、人気の高いApex Legends™やフォートナイトなどは、原則として配信が包括的に許諾されています。
参考:EAコンテンツの利用許可の申請方法|Electronics Arts, Inc.
参考:EPIC GAMES – コンテンツガイドライン|Epic Games, Inc.
その一方で、宣伝効果などに対する考え方の違いから、著作権の保護による利益を重視して、ユーザーによる配信を原則不可としているゲームも存在します。
いずれにしても、
①ゲームごとに著作権者の許諾の有無を確認する
②ゲーム配信が許諾されている場合でも、著作権者が定めるガイドラインを遵守する
というステップが必要になりますので、ゲーム配信を始める際には、上記の点について必ず確認・留意するようにしてください。
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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