上司などからパワハラの被害を受けている、社内で不正行為を発見した……
こうした状況を改善するために、従業員が内部から通報などの行動をとることは非常に有効です。
しかし、会社からの報復を恐れて、なかなか具体的な行動をとることができない方もいらっしゃるかと思います。
そこで今回は、上司や同僚などにバレないように、パワハラや社内の不正を通報したい場合の対処法を解説します。
1. 社内でバレずに済む、パワハラ・社内の不正行為の通報先
パワハラの被害や社内での不正行為について、上司や人事担当者に相談すると、会社からの報復が怖いというケースもあろうかと思います。
以下の各窓口に連絡・通報を行えば、社内の人間にバレる心配は基本的にありません。
ご自身のご状況に合わせて、利用しやすい窓口に相談してみましょう。
1-1. 内部通報窓口
会社がコンプライアンス強化のために、社内での犯罪行為等についての内部通報窓口を設けているケースがあります。
内部通報窓口の担当者は、社内の人間である場合、外部の専門家などである場合の両方が存在します。
内部通報窓口には、通常の人事担当者などに比べて、強く公正・中立を維持することが求められます。
また、内部通報したことを理由として、会社が通報者を不利益に取り扱うことは違法です(公益通報者保護法5条)。
特に大企業に勤務している場合は、内部通報窓口が設けられているケースが多いので、一度連絡をとってみるとよいでしょう。
ただし、内部通報窓口の担当者が、経営層などと癒着していることが疑われる場合には、報復の懸念を払しょくできないかもしれません。
その場合は、次に挙げる外部機関への相談をお勧めいたします。
1-2. 監督官庁(厚生労働省、労働基準監督署など)
パワハラや会社の不正行為の規制を管轄しているのは、厚生労働省をはじめとする各省庁です。
厚生労働省や、その出先機関である労働基準監督署では、従業員からの内部通報を随時受け付けています。
参考:公益通報受付|厚生労働省
監督官庁は、通報の内容に応じて、会社への調査・行政指導・行政処分などが行います。
また、従業員自身の今後の対処法などについても、一般的なアドバイスを受けられるでしょう。
1-3. 外部の弁護士
従業員ご自身がパワハラなどの被害に遭っている場合には、外部の弁護士に相談することがお勧めです。
弁護士は、従業員を会社から守るため、代理人として具体的な行動をとってくれます。
パワハラに対するクレームに加えて、損害賠償請求や、退職に関する交渉・手続きについても、弁護士に任せることができます。
法律相談を無料で受け付けている弁護士も多いので、パワハラや会社の不正行為への対処に困ったら、一度弁護士に相談してみましょう。
2. パワハラ通報への報復が怖い場合の対処法
パワハラについては、上司などが加害者となるケースが多いため、通報した場合に職場で報復を受けるおそれが特に懸念されます。
継続的にパワハラ被害を受けていて精神的に辛いものの、報復も怖いのでどうしたらよいかわからない場合は、どのように対処すべきなのでしょうか。
2-1. 一度休職することが効果的
パワハラによって精神的なダメージを受けている状況からは、一刻も早く逃げることが大切です。
会社に配置転換などをお願いしても、すぐに対処してもらえない場合には、医師の診断書を会社に提出して休職することをお勧めいたします。
とにかく一度職場から離れて、気持ちを落ち着けてから、パワハラへの対処法を考えましょう。
2-2. 休職中にもらえる給付金
休職すると、会社からの給料は支払われなくなりますが、以下の保険から給付金を受け取ることができます。
①健康保険の傷病手当金
精神的な疾患の原因が業務外で発生した場合に受給できます。
休職4日目から、平均賃金の3分の2が支給されます。
参考:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会
②労災保険の休業補償給付
精神的な疾患が業務上の原因により発生した場合に受給できます。
休職4日目から、給付基礎日額の5分の4が支給されます。
パワハラが主たる原因となって精神的な疾患を発症した場合には、労災保険給付の対象です(健康保険の傷病手当金は受給できません)。
会社に伝えずとも、労働基準監督署の窓口で給付金を請求できます。
③ご自身で加入している保険の休業補償
休業時の収入を補償する保険にご自身で加入している場合には、保険金を受け取ることができます。
健康保険や労災保険の給付金と併せて受給することも可能です。
休職中の収入面で不安がある方は、上記の給付金について、各窓口に相談してみましょう。
給付金によって生活基盤を整えることができたら、パワハラへの対処法について、お近くの弁護士にご相談ください。
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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