普段の生活やビジネスシーンで、竹馬の友という言葉を使う機会はあまり多くありません。なじみが薄いため、意味を勘違いしていると話が通じなくなる恐れもあり、知識として正確に理解しておくことが大切です。竹馬の友の正しい意味や由来を紹介します。
竹馬の友ってどんな意味がある?
『竹馬の友(ちくばのとも)』は、友人との関係性を表す故事成語です。語源を知れば、大きく二つに分けられる意味についても深く理解できます。
子どもの頃からの友人のこと
『竹馬の友』とは、『幼少時から親しい間柄にある』ということを意味する言葉です。最後に『友』と付いているように、単なる顔見知りや名前を知っている程度の浅い間柄ではなく、基本的には昔から仲が良い関係を意味します。
旧友や幼なじみについて、第三者である誰かに紹介するシーンで「彼と私は家が近所だったこともあり、小さい頃はよく遊んでいました。いわば竹馬の友です」といった使い方が可能です。ビジネスシーンやプライベートを問わず、あらゆる場面で使えます。
竹馬を用いた言葉としては他にも『竹馬の好(よしみ)』もあります。『好』とは親しい間柄のことです。竹馬の好も、幼い頃から仲の良い関係が続いている友人のことを意味します。
そもそも「竹馬」ってなに?
竹馬の友の『竹馬』は、現在の竹馬(たけうま)とは異なり、かつて流行した『春駒』と呼ばれる遊具を指します。春駒とは、張り子や練り物、木材などで作った馬頭に竹の棒を指し、逆側の先端に車輪を取り付けた男児用の遊具です。
子供たちは馬頭を前方に出す形で棒の部分にまたがり、馬に乗っているような状態で走り回りながら遊んでいました。張り子自体が2世紀に中国から広まったといわれ、春駒自体の発祥も古代中国にまでさかのぼるとされます。
日本には一節では平安時代には既に伝来していたと言われ、江戸~明治時代に流行の全盛期を迎えていました。現在の日本では数カ所でしか作られておらず、現存する昔の春駒は希少な伝統工芸品として扱われています。
由来は晋朝の政治家エピソード
竹馬の友は、中国の史書『晋書』(648年完成)にあるエピソードを由来とする言葉です。
同書の中で、晋朝(265~420年)に活躍した政治家・軍人である『殷浩(いんこう)』についてまとめた『殷浩伝』の中で、同じ軍人である『桓温(かんおん)』が語った内容に登場します。
軍人としての功績が大きかった桓温は、自分と並び称されていた学者肌の殷浩の存在を不満に感じ、殷浩を失脚させます。2人は幼なじみの間柄でした。
桓温は民衆に対し「殷浩とは小さい頃によく竹馬で遊んだ。殷浩は、私が捨てた竹馬を拾って遊んでいた。彼が私より格下となるのは当然だろう」と語っています。殷浩を見下しながら自分のほうが上の立場であることを主張し、殷浩を失脚させたことを正当化しようとしていたのです。
良き好敵手を表すこともある
『晋書 殷浩伝』に残る言葉から、桓温は殷浩を好敵手視していたことが見てとれます。幼い頃から2人が切磋琢磨(せっさたくま)して競い合ってきたことを示すエピソードです。
このことから、竹馬の友は相手との良き好敵手関係を表す際にも用いられます。言葉が誕生した当初は、むしろ好敵手関係や上下関係を意味する故事成語でした。
時が経つにつれて好敵手のニュアンスは薄れていき、現在は『親しい幼なじみ』という意味合いが強くなっています。竹馬の友は、使い方次第でさまざまな感情を込められる言葉です。
竹馬の友の例文
竹馬の友の使い方を覚えるためには、例文をチェックするのが効果的です。文章内でどのように用いられているのかを確認しましょう。
竹馬の友の使い方例
竹馬の友には、『幼い頃からの友人』と『良好な好敵手関係』の二つの意味があります。親しい幼なじみを指すケースと、互いに切磋琢磨してきたケースの例文を見ていきましょう。
- 幼稚園時代からの親友である彼とは、大人になった今でも心から語り合える関係が続いている。まさに竹馬の友と言えるだろう
- 君とは昔からよく言い争いもしてきたが、僕にとっては竹馬の友だと思っている。これからもずっと仲良くしてほしい
- 小学校時代に同じサッカー部に入部した彼らが、2人ともついにプロ選手となった。仲良しの2人がサッカーで競い合ってきた関係は、竹馬の友と呼ぶにふさわしい
言い換え表現を紹介
竹馬の友に意味が似た表現を覚えておきましょう。広く知られた言葉から難しい言葉まで、さまざまな言い換え表現があります。
同じく中国の故事由来の「水魚の交わり」
竹馬の友の類語として、『水魚の交わり(すいぎょのまじわり)』が挙げられます。竹馬の友と同様、中国の正史のひとつ、『三国志』(280年ごろ成立)の一部『蜀志(蜀書)』に記載がある故事を由来とする故事成語です。
魚にとって水は不可欠な存在であることから、『切り離せない関係』や『とても親密な関係』を意味します。主従関係や夫婦関係を表すのによく用いられる言葉です。
『三国志』をベースとした歴史小説『三国志演義』を通じて日本でも人気が高い『諸葛亮(しょかつりょう)』を軍師に迎えた『劉備(りゅうび)』が、2人の親密ぶりをいぶかる古参武将に言った言葉が由来とされています。
竹馬の友が幼なじみの意味合いを含むのに対し、水魚の交わりは子供の頃から続く関係に限りません。関係が浅い人には使えない点にも注意が必要です。
旧友や幼なじみにも言い換え可能
小さな頃から仲が良い関係を示す言葉なら、竹馬の友との言い換えが可能です。代表的なものには、『旧友』『旧知の仲』『幼なじみ』『幼友達』などがあります。
硬い表現としては、『鳩車竹馬の友(きゅうしゃちくばのとも)』や『騎竹の交わり(きちくのまじわり)』も、竹馬の友の類語です。状況に応じて使い分けましょう。
若者の間では、『BFF』という言葉も流行しています。BFFとは『Best Friend Forever』の略語であり、永遠の親友を意味する言葉です。
構成/編集部